この研究は、マルタ、スペイン、ギリシャの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
パルス電場(PEF)処理は、果汁や野菜汁に短い高電圧のパルスを繰り返しかけて微生物を不活性化する技術で、果汁類の保存技術として期待されています。研究チームは、この処理がザクロ、トマト、ニンジンの3種類のジュースで微生物をどの程度減らすか、またジュースの品質に影響するかを調べました。
注目したのは2つの点です。1つは、同じ種類の微生物でも菌株によって処理への反応が異なるかどうか。もう1つは、処理対象となる飲料そのもの(研究では「食品マトリックス」と呼びます)の違いが効果を左右するかどうかです。
何を調べたか
実験では、電界強度20 kV/cmのパルス電場を3種類のジュースにかけました。対象とした微生物は、大腸菌の2株(K12とFAM 21843)と、酵母の一種であるサッカロマイセス・セレビシエの2株(AD1890と130.0014)です。
処理によって微生物が減っていく経過は、単純な一直線の減り方ではなく、段階によって減り方が変わる形をとることがあります。著者らは、こうした経過を表すため、基本的な減少モデルと二次多項式を組み合わせた数式モデルを使い、処理に投入したエネルギー量の指標(Wτ、単位kJ/kg)と微生物の減り方の関係を整理しました。あわせて、細胞が死なずに傷ついた状態で残る「亜致死損傷」の程度や、ジュースに含まれる抗酸化成分とその抗酸化活性も調べました。
主な結果
論文によると、微生物が減る最大速度は、投入エネルギー量Wτが大きくなるほど高くなりました。大腸菌の2株は、ザクロとニンジンのジュースで5桁(10万分の1)を超えて減少し、トマトジュースでは3.85桁を超える減少でした。
菌株の中では、酵母の130.0014株が、ザクロとトマトのジュースでエネルギー量が80 kJ/kgを超える条件のとき、最も高い最大減少速度を示したと報告されています。一方、エネルギー量が高い条件では、ザクロジュース中の大腸菌2株の間や、すべてのジュースにおける酵母2株の間の差は小さかったとされています。
大腸菌の亜致死損傷は、ジュースの種類にかかわらず少なく、その中ではザクロジュースで最も多く見られました。品質面では、いずれのジュースでも、処理による抗酸化成分やその抗酸化活性への統計的に有意な影響は認められませんでした。
研究が示すこと
著者らは、パルス電場処理による微生物の不活性化の効果は主に投入エネルギー量によって決まり、ジュースの種類によって一部違いが生じると結論づけています。そのうえで、品質を保ちながら微生物を減らす食品加工の選択肢として、パルス電場処理に可能性があるとしています。
著者:Fotios Lytras(Faculty of Health Sciences, Department of Food Sciences & Nutrition University of Malta Msida Malta)、Georgios Psakis(Faculty of Health Sciences, Department of Food Sciences & Nutrition University of Malta Msida Malta)、Matthew Xuereb(Faculty of Science, Metamaterials Unit University of Malta Msida Malta)、Frederick Lia(Faculty of Health Sciences, Department of Food Sciences & Nutrition University of Malta Msida Malta)、Ruben Gatt(Faculty of Science, Metamaterials Unit University of Malta Msida Malta)、Javier Raso(Food Technology, Facultad de Veterinaria, Instituto Agroalimentario de Aragón‐IA2 Universidad de Zaragoza‐CITA Zaragoza Spain)、Vasilis Valdramidis(Department of Chemistry National and Kapodistrian University of Athens Athens Greece)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fotios Lytras, Georgios Psakis, Matthew Xuereb, et al. Kinetic Modeling of Microbial Inactivation in Juices Treated With Pulsed Electric Fields ( PEF ): A Comparative Study on Microbial Heterogeneity and Food Matrix Effects. Food Science & Nutrition 2026-10-01. DOI: 10.1002/fsn3.72408. 原著ライセンス:CC BY.