著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:JURNAL RISET RUMPUN ILMU HEWANI
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアの在来系肉牛「ペラナカン・オンゴール(PO)牛」は、インド原産のオンゴール牛と在来牛の交雑から生まれた品種で、熱帯の気候によく適応しています。一方で、その肉は硬いと受け止められがちで、消費者の評価や市場価値を下げる一因になっていると著者らは述べています。硬さの背景として論文が挙げるのは、筋肉を包む結合組織のたんぱく質であるコラーゲンが多く、しかもコラーゲン同士の結びつき(架橋)が成熟して安定していることです。
肉を柔らかくする方法には、たんぱく質を分解する酵素を使う方法と、高温・高圧で加熱する方法があります。パイナップルに含まれる酵素ブロメラインは筋肉のたんぱく質やコラーゲンを分解し、圧力鍋調理は硬いコラーゲンを水に溶けるゼラチンへ変えるとされます。しかし著者らによれば、PO牛肉で両者を直接比べ、組み合わせたときの効果まで調べた研究は限られていました。そこで研究チームは、ブロメラインの濃度と圧力鍋での加熱時間、さらに両者の組み合わせが、肉の柔らかさ・味・香り・色にどう影響するかを調べ、他の性質を損なわずに柔らかさを高める最も効率的な条件を探りました。
どのように調べたか
実験には、PO牛のもも肉を2センチ角に切ったものを使いました。地元品種の生のパイナップルを水を加えずにミキサーにかけてこした果汁を、粗いブロメライン源としています。この果汁を水で薄め、果汁の割合が5%、10%、15%となる3種類の液を用意しました。肉300グラムをそれぞれの液600ミリリットルに室温で30分間漬け込み、その後、湯に浸からないよう台にのせて圧力鍋で10分、20分、30分のいずれかの時間加熱しました。加熱時間は弁が最初に音を立てた時点から計っています。
こうして濃度3段階と加熱時間3段階を組み合わせた9通りの条件で肉を調理しました。ある程度訓練を受けた30人の評価者が、柔らかさ、味、香り、色をそれぞれ1〜5点で採点しました。研究チームは、二つの条件がそれぞれ単独で、あるいは組み合わさって評価に差を生んだかを統計的に検討しています。
主な結果
評価に統計的に意味のある差が出たのは、柔らかさだけでした。ブロメライン液の濃度別の平均点は、5%で3.09、10%で3.69、15%で3.68です。5%は他の二つより明らかに低かった一方、10%と15%の間に差はありませんでした。著者らはこの結果を、5%では分解が不十分で、15%に上げても酵素の働きがそれ以上は上乗せされない状態に達していたと解釈しています。
加熱時間別の柔らかさの平均点は、10分で3.28、20分で3.41、30分で3.77で、時間が長いほど高くなる傾向がありました。統計的にはっきり差が認められたのは10分と30分の間で、隣り合う時間同士の差は明確ではありませんでした。
味、香り、色については、濃度も加熱時間も、その組み合わせも評価に明確な差を生みませんでした。味の点数はどの条件でも2.39〜2.72の範囲にあり、論文では「あまりうま味がない」水準と位置づけられています。これについて著者らは、すべての試料を調味料なしで同じように調理したため、味の違いが小さかったと説明しています。香りは3.26〜3.40でほぼ一定で、15%の液で漬けてもパイナップルのにおいが目立つことはなかったと報告されています。
さらに、酵素の濃度と加熱時間の組み合わせによる相乗的な効果(交互作用)は、どの項目にも認められませんでした。著者らはこれを、酵素による分解と加熱による変化がそれぞれ独立に作用していることを示すものと解釈しています。
研究が示すこと
研究チームは、PO牛肉の柔らかさを高めるうえで最も効率的な組み合わせを、ブロメライン10%の液での漬け込みと30分間の圧力鍋調理だと結論づけました。この条件は、味・香り・色を損なわずに柔らかさを高められるとしています。15%に濃度を上げても柔らかさがさらに増すわけではなかったことが、10%を選んだ根拠です。
ただし、この研究の評価はすべて人の感覚による採点で、肉の硬さを機器で測ったものではありません。著者らもこの点を研究の限界として挙げています。そのうえで本研究は、硬いとされがちな在来牛の肉を、身近な果物の酵素と圧力鍋という二つの手段で、風味を変えずに柔らかく感じられるようにできる可能性を示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Adlan Baihaqy(Universitas Wijayakusuma Purwokerto)、Soegeng Herijanto(Universitas Wijayakusuma Purwokerto)、Fani Dwi Evadewi(Universitas Wijayakusuma Purwokerto)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Adlan Baihaqy, Soegeng Herijanto, Fani Dwi Evadewi Pengaruh Konsentrasi Enzim Bromelain Nanas dan Durasi Pressure Cooking terhadap Kualitas Organoleptik Daging Sapi Peranakan Ongole. JURNAL RISET RUMPUN ILMU HEWANI 2026-10-01. DOI: 10.55606/jurrih.v5i2.10394. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。