著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
出荷前の仕上げ期の豚は体重が大きく増え、筋肉を盛んにつくる時期にあたり、飼料のタンパク質は成長と肉質に大きく関わります。一方で、豚が必要とする以上のタンパク質を与えると、余った窒素がふんや尿として排出され、環境負荷や飼料コストの増加につながります。研究チームは、仕上げ期の豚に適した飼料タンパク質量については見解がまだ一致していないと述べています。
研究チームが注目したのは、アミノ酸の一種であるアルギニンです。アルギニンは体内で多くの代謝や調節の働きを担い、豚の成長を助ける可能性が報告されています。ただし、飼料に直接加えると費用がかさみます。そこで著者らは、体内でのアルギニン合成を促すとされる化合物「N-カルバミルグルタミン酸(NCG)」に着目しました。仕上げ期の豚でのNCGの利用はまだ研究が少なく、適切な添加量や安全性の情報も限られているといいます。この研究の目的は、タンパク質量の異なる2種類の飼料について、NCGを加えた場合と加えない場合を比べ、成長、血液成分、栄養の消化、窒素の利用、肉質、ふんの細菌などへの影響を調べることでした。
どのように調べたか
実験には、体重約50キログラムの交雑種の仕上げ期の豚200頭が使われ、70日間飼育されました。豚は4つの飼料グループに分けられました。粗タンパク質13%の低タンパク質飼料と15%の高タンパク質飼料のそれぞれについて、NCGを0.1%加えたものと加えないものを用意しました。どの飼料も、主要な必須アミノ酸とエネルギーの量はそろえて設計されています。
研究チームは、体重の増え方や飼料の利用効率、試験終了時の血液成分、栄養の消化率、窒素の摂取と保持、ふんから出るアンモニアなどのガス、背中の脂肪の厚さと赤身の割合を調べました。さらに、と畜後の肉の色・保水性・加熱時の重量減少(クッキングロス)・ロース部分の断面積などの肉質、肉に含まれるアミノ酸、ふんに含まれる細菌の遺伝子を調べて腸内細菌の構成も分析しました。
主な結果
論文によると、体重の増え方、飼料摂取量、飼料の利用効率には、タンパク質量でもNCGの有無でも明確な違いは見られませんでした。栄養の消化率、窒素の保持率、ふんから出る有害ガス、背中の脂肪の厚さ、赤身の割合、枝肉の等級についても、グループ間で統計的に意味のある差は報告されていません。つまり、タンパク質を13%に下げても、この実験の範囲では成長や枝肉の量が損なわれなかったことになります。
一方で、飼料のタンパク質量による違いはいくつかの項目に表れました。NCGを加えないグループ同士で比べると、高タンパク質飼料の豚は低タンパク質飼料の豚よりも、血液中の尿素窒素(体内のタンパク質分解や窒素排出の目安)、総タンパク質、ブドウ糖、アルブミンの値が高くなりました。また、高タンパク質飼料では、飼料と窒素の摂取量や、肉に含まれるイソロイシン、ヒスチジン、リシン、アラニン、チロシンの量にも差が見られました。
NCGの添加による影響としては、血液中のクレアチニンの値のほか、肉質ではロースの断面積とクッキングロスに違いが報告されました。クッキングロスは、NCGを加えた低タンパク質飼料のグループのほうが、NCGを加えた高タンパク質飼料のグループより大きくなりました。腸内細菌については、NCGを加えたグループで細菌の多様性を示す指標の中央値が高い傾向があり、なかでもNCGを加えた高タンパク質飼料のグループで多様性が最も高く見られました。また、NCGを加えない高タンパク質飼料のグループは、ほかのグループとは異なる細菌の構成を示しました。
研究が示すこと
この研究では、成長や消化、窒素の保持といった多くの項目は、飼料のタンパク質量やNCGの有無で大きく変わりませんでした。一方で、血液成分や肉のアミノ酸などには主にタンパク質量が関わり、NCGはロースの断面積やクッキングロスといった肉質の一部、そして腸内細菌の多様性に影響していました。著者らは、タンパク質を13%に下げた飼料に0.1%のNCGを加えても成長は維持され、NCGはタンパク質を減らした条件を補う添加物として役立つ可能性があると結論づけています。飼料のタンパク質を減らしながら豚の成長と肉質を保つ方法を考えるうえで、一つの手がかりとなる報告です。
原著論文の著者・所属:Usman Kayode Kolawole(Department of Animal Biotechnology, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea; Smart Animal Bio Institute, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)、Kye Jin Lee(Department of Animal Biotechnology, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea; Smart Animal Bio Institute, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)、Youngjong Han(Department of Microbiology, College of Bio-Convergence, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)、Minjeong Kim(Department of Microbiology, College of Bio-Convergence, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)、Kyudong Han(Department of Microbiology, College of Bio-Convergence, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea; Departmentof Bioconvergence Engineering, Dankook University, Yonginsi 16890, Republic of Korea)、Dae-Kyung Kang(Department of Animal Biotechnology, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea; Smart Animal Bio Institute, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)、In Ho Kim(Department of Animal Biotechnology, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea; Smart Animal Bio Institute, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Usman Kayode Kolawole, Kye Jin Lee, Youngjong Han, et al. Effects of Dietary N-Carbamylglutamate Addition with Two Different Levels of Crude Protein (Low and High) on the Growth, Nitrogen Retention, Amino Acids in the Carcass, Blood Health, Gut Bacteria, and Meat Quality of Finishing Pigs. Animals 2026-08-10. DOI: 10.3390/ani16162484. 原著ライセンス:CC BY.