著者の所属・活動拠点の国は、パキスタンです。

掲載誌:Medical Journal Of South Punjab

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肥満は、豊かな人々だけの問題ではありません。世界では1990年から2022年の間に成人の肥満の割合が2倍以上になり、多くの低・中所得国では、やせと肥満が同じ地域、ときには同じ家庭の中に並存しています。こうした状態は「栄養不良の二重負荷」と呼ばれます。パキスタンでもこのような栄養状態の変化が進んでいますが、研究チームによると、大都市近郊の公立病院を受診する経済的に余裕のない人々について、過剰な体重の実態を示す地域のデータは限られていました。

そこで研究チームは、パキスタン・パンジャブ州シェイクプーラ地区にあり、ラホール近郊の都市周辺部や農村部の住民を受け入れているフェローズワラ郡病院の外来で、低所得の20〜45歳の成人に肥満がどのくらいみられるかを調べました。あわせて、収入などの社会経済的な条件、食事、生活習慣のうち、どの要因が肥満と関連しているかを分析しました。

どのように調べたか

調査は2026年2月から6月にかけて、ある時点の状態を一度に調べる「横断研究」として行われました。対象は、外来を受診した患者または付き添いの人で、世帯の月収が3万7000パキスタン・ルピー未満の20〜45歳の成人です。妊娠中の人や、甲状腺の病気など体重に影響する病気がある人、体重に影響しうる薬を長く使っている人は除外されました。条件を満たす人を順番に登録し、最終的に150人が参加しました。

研究チームは、ウルドゥー語またはパンジャブ語による聞き取り式の質問票で、収入・学歴・職業のほか、ファストフードや揚げ物、甘い飲み物の頻度、朝食をとるかどうか、果物や野菜の摂取、運動や座っている時間、睡眠などを尋ねました。身長と体重は自己申告ではなく実際に測定し、体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったBMIを計算しました。世界保健機関(WHO)の基準に従い、BMI30以上を肥満、25以上30未満を過体重としています。統計解析では、複数の要因の影響を同時に考慮したうえで、それぞれの要因が肥満とどの程度関連するかを調べました。

主な結果

参加者の平均年齢は33.9歳で、58.7%が女性でした。肥満の人は全体の30.0%、過体重の人は34.7%で、合わせると約3分の2にあたる64.7%が標準より重い体重でした。肥満の割合は男性の19.4%に対し、女性では37.5%と高くなっていました。

収入との関係ははっきりしていました。世帯月収が2万ルピー未満の最も低い層では42.3%が肥満だったのに対し、今回の対象の中で最も収入が高い3万〜3万6999ルピーの層では16.2%でした。ほかの要因を考慮しても、最も低い収入層は肥満と関連していました。年齢が上がるほど肥満の割合は高く、40〜45歳では42.2%でした。職業別では専業主婦の割合が46.2%と最も高くなりました。学歴が低いほど肥満の割合が高い傾向もみられましたが、統計的にはっきりした差とはいえませんでした。

食事と生活習慣では、ファストフードや屋台の食べ物、揚げ物、甘い飲み物をよくとること、朝食を抜くこと、果物や野菜が少ないことが肥満のある人に多くみられました。運動不足、長時間座っていること、睡眠が短いことも同様でした。ほかの要因を考慮した分析で、肥満との関連が残ったのは、女性であること、40〜45歳であること、最も低い収入層であること、ファストフードや揚げ物をよく食べること、身体活動が少ないことでした。また、肥満のある人の約3分の2が、経済的な事情が食べ物選びに「とても」影響すると答えていました。毎日運動していない109人が挙げた理由は、時間がない(39.4%)、場所がない(24.8%)などでした。

この研究が示すこと

研究チームは、低い収入が過剰な体重を防いでいるわけではなく、今回の病院を受診した低所得の成人では、むしろ最も収入が少ない人々に肥満が多かったと述べています。その背景として、限られた予算の家庭が安くてエネルギーの多い食品に頼っている可能性を挙げています。ただし、この研究は一時点の調査であり、収入や食習慣が肥満を引き起こしたという因果関係を示したものではありません。朝食を抜く理由や、女性の食事や外出の機会に関わる事情なども、今回は直接調べられていません。また、病院での募集のため、もともと健康上の心配を抱える人が多く含まれていた可能性があると著者らは注意を促しています。

そのうえで著者らは、外来受診の機会に定期的にBMIを測り、簡単な栄養相談や、日常生活に歩くことを取り入れるといった実行しやすい運動の助言を行う必要性を示す結果だとまとめています。貧困と肥満は相反するものではなく、身近な医療の場で同時に向き合うべき課題であることを伝える研究といえます。

原著論文の著者・所属:Muhammad Ali Khawaja(THQ Hospital Ferozwala, Pakistan)、Farah Ahmad(Ziauddin University. Karachi, Pakistan)、Syed Hassan Danish(Ziauddin University. Karachi, Pakistan)、Muhammad Saddique Zishan(THQ Hospital Ferozewala, Pakistan)、Aqsa Manzoor(Combined Military Hospital. Multan, Pakistan)、Muhammad Ferhan Saeed(District Headquarter Hospital Lodhran, Pakistan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muhammad Ali Khawaja, Farah Ahmad, Syed Hassan Danish, et al. Socioeconomic determinants of obesity: investigating the link between poverty and excess weight. Medical Journal Of South Punjab 2026-09-30. DOI: 10.61581/mjsp.v7i03.392. 原著ライセンス:CC BY.