著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Current Developments in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

米国では、食生活に関わる慢性疾患、十分で栄養のある食べ物を安定して得られない「食料・栄養の不安定」、そして気候変動という、互いに関連し合う課題が同時に進んでいます。こうした中で注目されているのが「フード・イズ・メディシン(食は薬)」と呼ばれる取り組みです。これは医療機関と連携しながら、食べ物を活用して食生活に関わる慢性疾患の予防・管理・治療を目指すさまざまなプログラムを指します。

研究チームによると、こうしたプログラムが野菜や果物などの植物性食品を中心とした食事パターンや、その他の持続可能性に配慮した実践をどう後押しし、人の健康と地球環境の両方に役立てられるかについては、研究が不足していました。そこで著者らは、米国のフード・イズ・メディシンの専門家が、この取り組みや植物性食品中心の食事パターンをどう定義しているか、また持続可能な食の実践をプログラムに取り入れることの可能性と課題をどう見ているかを探りました。

調べた方法

研究チームは2024年7月から10月にかけて、全米で活動するフード・イズ・メディシンの専門家20人に、オンライン会議システムのZoomを使った聞き取りを行いました。質問の大枠を決めつつ、話の流れに応じて自由に掘り下げる「半構造化インタビュー」という方法です。参加者は、研究目的に合う人を意図的に選び、さらに参加者から別の適任者を紹介してもらう形で集められました。

集めた語りは、内容から共通するテーマを見いだす「テーマ分析」で整理されました。分析では、個人から地域社会、政策までの重なり合う層として人の行動への影響をとらえる「社会生態学モデル」という枠組みが手がかりとして用いられました。

主な結果

専門家の間では、フード・イズ・メディシンの定義や範囲について見方が分かれた一方、植物性食品中心の食事パターンが何から成り立つかについてはおおむね意見が一致していました。

専門家たちは、医師などが野菜や果物を「処方」する取り組みや、患者の病状に合わせた食事や食料品を提供するプログラムは、植物性食品中心の食事パターンと方向性が合っていると見ていました。ただし、プログラムごとに内容がそろっていない、つまり標準化が不足しているという課題も挙げられました。

また、持続可能性に配慮した実践を取り入れた試験的なプログラムも紹介されましたが、人の健康と地球環境の両方に利点があるという点をはっきり伝えるメッセージは欠けていたと語られました。プログラムに体系的に組み込める持続可能な実践としては、地元の生産者や、土壌などの環境の回復を重視する「環境再生型」の生産者を支えること、そして食品ロスを減らすことが挙げられました。

一方で課題としては、政治的な環境とかみ合わないことや、持続可能な食生活を支える環境づくりを妨げる政策・制度面の障壁が指摘されました。

研究が示す意味

著者らは、フード・イズ・メディシンの動きは食と医療に関わる人々の協力を促す有望な機会になる一方、課題を乗り越えるには分野の内外で連携した行動が必要だと結論づけています。人の健康と地球環境の双方に役立つ取り組みを、医療と結びついた食のプログラムの中でどう形にしていくか。この研究は、その出発点となる専門家の考え方と、立ちはだかる壁を描き出しています。

著者:Katherine Consavage Stanley(World Food Policy Center, Duke University, Durham, NC 27705)、Paige B. Harrigan(Department of Human Nutrition, Foods, and Exercise, Virginia Polytechnic Institute and State University (Virginia Tech), Blacksburg, VA 24061)、Bailey Houghtaling(Center for Nutrition & Health Impact, Omaha, NE 68022)、Elena Lidia Serrano(Department of Human Nutrition, Foods, and Exercise, Virginia Polytechnic Institute and State University (Virginia Tech), Blacksburg, VA 24061)、Adrienne Holz(School of Communication, Virginia Tech, Blacksburg, VA 24061)、Valisa Ellen Hedrick(Department of Human Nutrition, Foods, and Exercise, Virginia Polytechnic Institute and State University (Virginia Tech), Blacksburg, VA 24061)、Vivica Kraak(Department of Human Nutrition, Foods, and Exercise, Virginia Polytechnic Institute and State University (Virginia Tech), Blacksburg, VA 24061)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katherine Consavage Stanley, Paige B. Harrigan, Bailey Houghtaling, et al. Opportunities and Challenges for Promoting Sustainable Diets within “Food is Medicine” Programs in the United States: A Qualitative Research Study. Current Developments in Nutrition 2026-09-23. DOI: 10.1016/j.cdnut.2026.109541. 原著ライセンス:CC BY.