スーパーで売られている白い卵の中に、ごくまれに殻を割ると黄身や白身に赤い血の斑点が混じっていることがあります。これは「血斑卵」と呼ばれ、産卵時に卵巣や卵管の血管が破れることで生じる自然な現象で、健康上の害はないとされていますが、消費者にとっては見た目の点で敬遠されがちです。台湾の国立中興大学と国立台中科技大学の研究者らによるこの研究は、卵を割らずに血斑の有無を判別する画像検査法を開発し、その精度を検証したものです。
光の吸収パターンから血斑を捉える
研究チームはまず、卵に光を透過させたときのスペクトル(波長ごとの光の強さの分布)を調べました。その結果、血斑がある卵では波長580nm付近の光が特徴的に吸収されることが確認されました。これは血液に含まれる成分がこの波長帯の光を吸収しやすい性質によるものと考えられます。この知見をもとに、580nmを「血液に反応しやすい波長」、630nmを比較のための「基準波長」として選び、この二つの波長で撮影した画像の明るさの比率を計算することで、血斑の有無を判定する手法が組み立てられました。判定にはロジスティック回帰という統計的な分類モデルが使われ、画像を用いる二波長フィルタ法と、透過スペクトルを直接測定する分光法の両方でモデルが作成されました。
人工的に血を加えた卵と市販の卵で検証
この手法の性能を確かめるため、研究チームは0.025mLおよび0.05mLの血液を人為的に注入した白色卵と、市販されている血斑入りの白色卵の両方をサンプルとして使用しました。人工的に条件を揃えたサンプルだけでなく、実際に流通している卵でも試験した点が特徴です。市販卵のサンプルに対して改めて学習し直した画像ベースの二波長フィルタ法では、全体の判定精度(正しく分類できた割合)が84.9%、感度(実際に血斑がある卵を正しく検出できた割合)が83.8%という結果が報告されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
著者らは、この手法が静的な実験室環境下での非破壊スクリーニング(卵を割らずに選別する検査)に応用できる可能性を示すものだとしています。ただし、これは実験室の条件下で得られた結果であり、実際の卵選別ラインのように卵が動いている状況や、より多様な卵のサンプルでどこまで通用するかは、この要旨の範囲では述べられていません。一つの研究として得られた知見であり、この手法がただちに実用化され広く使われることを確定的に示すものではない点には留意が必要です。
今回の研究は台湾の研究機関に所属する著者らによるもので、日本の食品産業や研究機関との関わりについては、提供された情報の中では言及されていません。卵の品質管理という身近なテーマに、光の波長を使った検査技術がどう応用されうるかを示す一例として、今後の技術の発展を見守りたい研究といえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Cheng-Han Li, Ming‐Kun Hsieh, Chi-Yu Chen, et al. Dual-wavelength filtering for the detection of blood-spotted eggs. 食品計測・評価学誌 (2026). DOI: 10.1007/s11694-026-04824-7. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.