この研究は、インドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Asian Journal of Agricultural Extension Economics & Sociology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ栽培者の姿を調べたのか
キノコ栽培は、栄養面での安定や収入の確保、農村の暮らしの手立てを多様にすることにつながる農業の一形態として広がりつつあります。著者らは、キノコ栽培を広めたり支援したりする取り組みを実効性のあるものにするには、実際に栽培している人たちがどのような背景を持ち、どのような条件のもとで営んでいるのかを把握することが欠かせない、と論文の中で述べています。
著者らによれば、インド・アッサム州ジョルハット県について、キノコ栽培者の社会経済的な横顔(年齢や学歴、職業、所有する土地などの姿)と、行政の普及サービスなどとの接点、そして栽培を続ける意思まで含めて地域に即して記述した資料は見当たりませんでした。そこでこの研究は、同県の栽培者の社会経済的背景と栽培の特徴を明らかにすることを目的として実施されました。
どのように調べたか
調査地はアッサム州ジョルハット県で、県内の4つの村から60人のキノコ栽培者が対象になりました。対象者は、すでに調査に協力した人から次の協力者を紹介してもらう「スノーボール・サンプリング」という方法で選ばれています。調査は2021年9月と10月に行われ、あらかじめ用意した質問項目に沿って一人ずつ面接し、回答を記録する形で情報が集められました。
集められた回答は分類・整理されたうえで、人数と割合を数え上げる記述統計の手法で分析されました。社会経済的な地位の評価には、この分野で広く使われる尺度を一部修正したものが用いられています。年齢、学歴、職業、土地の所有、マスメディアへの接触、普及員との接触、団体への加入、キノコ栽培の経験といった項目が、個人・社会経済・農業・制度という四つの側面から取り上げられました。
報告された主な結果
著者らの報告によると、回答者の年齢層は31〜41歳が41.67%と最も多く、31歳未満が31.66%、40歳を超える人が26.67%で、若年から中年層が中心でした。性別は男性が60.00%、女性が40.00%で、著者らは女性の参加も相当な割合を占めていると述べています。既婚者は66.66%、家族の形態は核家族が83.33%を占め、家族の人数も4人以下の小規模世帯が83.33%でした。学歴は高等学校修了段階が33.34%、大学卒業が23.34%などと分かれており、著者らはさまざまな学歴の人がキノコ栽培に携わっていると指摘しています。
職業については、回答者本人の80.00%が農業に従事し、世帯の主たる職業としても農業が50.00%、商業が43.33%を占めました。一方で土地の所有規模は小さく、88.34%が7.5ビガ未満の限界的な規模に該当しました。また83.34%は土地が父親の名義で登記されており、本人名義は16.66%にとどまりました。著者らは、土地が限られていることが、場所をとらず屋内でも営めるキノコ栽培のような形態に向かう背景になりうると述べています。
情報や制度との接点については、マスメディアへの接触が低い水準の人が65.00%と最も多く、普及員や各種の行政・関係機関の担当者とは「ときどき」接触するという回答が大半を占めました。何らかの団体に加入している人は86.67%でした。栽培の経験では、66.67%が2回以上キノコを生産した経験を持っていました。しかし、今後もキノコ生産を続ける意思があるかを尋ねると、続けたくないと答えた人が66.67%にのぼり、続けたいと答えたのは33.33%でした。著者らは、その背景として、資材の入手、販売、収穫後の取り扱い、設備の不足といった問題に加え、パンデミックの時期に直面したさまざまな困難を挙げています。
なお著者らは、この調査が4つの村の60人を非確率的な方法で選んだ記述的な研究であり、結果は調査対象者に即したものとして扱うべきで、調査地域を超えて一般化する際には注意が必要だと断っています。また、回答は本人の申告にもとづくため、記憶や答え方の違いの影響を受けうるとも記しています。
この調査が示すこと
著者らは結論として、キノコ栽培はアッサム州の農村世帯にとって、土地をあまり必要としない補助的な生計手段・収入源としての可能性を持つと述べています。同時にこの調査が浮かび上がらせたのは、経験を重ねただけでは営みが続かないという指摘でした。2回以上生産した人が3分の2を占めながら、同じく3分の2が継続に消極的だったという対比について、著者らは、過去の経験だけでは事業の継続には十分でなかったことを示すものだとしています。栽培する人の姿をこうして具体的に描き出すことは、支援をどこに向けるべきかを考えるための土台になります。
著者:Debasish Saikia(Department of Food Processing and Quality Management, Rupahi College, Nagaon, Assam, India)、Mayuri Bora(Department of Extension and Communication Management, College of Community Science, Assam Agricultural University, Jorhat–13, Assam, India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Debasish Saikia, Mayuri Bora. Socio-economic Profile and Farming Characteristics of Mushroom Growers in Jorhat District of Assam, India. Asian Journal of Agricultural Extension Economics & Sociology 2026-08-28. DOI: 10.9734/ajaees/2026/v44i83004. 原著ライセンス:CC BY.