この研究は、韓国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Physiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

この研究は、大学および実業団に所属するエリート男子テコンドー選手を対象に、安静時の高血圧と「運動時高血圧」の有無によって、白血球のテロメア長と栄養摂取の特徴がどう異なるのかを調べたものです。

運動時高血圧とは、運動の負荷が高まったときに血圧が通常よりも大きく上昇する状態を指します。またテロメアは染色体の末端にある構造で、その長さは生物学的な老化の指標のひとつとして扱われます。著者らは、運動時高血圧とテロメア長のあいだに直接的な関連があると前提を置かずに、血圧の反応、生物学的老化の指標、栄養に関する指標の相互の関連を検討したと述べています。

何を、どのように調べたか

研究チームは、男子テコンドー選手108人を対象に、身体組成の測定と、ブルース法によるトレッドミルを用いた漸増運動負荷試験を行いました。漸増運動負荷試験とは、走行の速度と傾斜を段階的に上げていき、運動中の身体の反応を測る検査です。

安静時高血圧は収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上、運動時高血圧は運動のピーク時の収縮期血圧210mmHg以上または拡張期血圧105mmHg以上と定義されました。食事の摂取量は3日間の推定食事記録によって調べられ、栄養解析ソフトを用いて分析されています。白血球のテロメア長はリアルタイムPCRという手法で測定され、相対的な値(T/S比)として表されました。グループ間の比較にはウェルチのt検定が、関連の検討には相関分析や重回帰分析、ロジスティック回帰分析などが用いられています。

報告された主な結果

108人のうち23人(21.3%)が安静時高血圧の基準に、44人(40.7%)が運動時高血圧の基準に該当したと報告されています。運動時高血圧に該当した群は、安静時とピーク時の収縮期血圧がいずれも高く、運動による収縮期血圧の上昇幅も大きくなっていました。

一方で、テロメア長は運動時高血圧の有無で差がみられず(p=.554)、運動時高血圧の起こりやすさと独立した関連も示されませんでした(p=.177)。テロメア長と安静時収縮期血圧のあいだには、逆向きの関連が境界的な水準で認められています(ρ=−0.203、p=.050)。

複数の要因を同時に考慮した解析では、BMIがテロメア長と逆向きに関連し(B=−0.0070、p=.034)、運動時高血圧の起こりやすさとは同じ向きに関連していました(1標準偏差あたりのオッズ比3.80、p=.002)。これに対し、ビタミンCの摂取密度は運動時高血圧の起こりやすさと逆向きに関連していました(1標準偏差あたりのオッズ比0.30、p=.019)。また、食物繊維とビタミンCの摂取密度は、いずれもテロメア長と同じ向きの相関を示したと報告されています(ともにp=.012)。なお、これらはある一時点で集団を観察した横断的な分析であり、原因と結果の関係を示すものではありません。

この研究が示すこと

著者らは、この横断的な観察において運動時高血圧とテロメアの短縮が直接結びつくわけではなかったとしています。そのうえで、運動時高血圧に該当する選手の割合が高く、それが身体組成や抗酸化栄養素の摂取と強く関連していたことから、安静時だけでなく運動中の血圧を動的に把握することの必要性を指摘しています。

結論として著者らは、客観的な水分補給の管理や、ビタミンCや食物繊維に着目した栄養面の工夫を、エリート選手の包括的な心血管リスク管理の一部として検討する価値があるとしつつ、さらに前向きな検証が必要だと述べています。安静時の血圧だけでは見えにくい変化が運動中には現れうる、という視点を提示した研究といえます。

著者:Yun-A Shin(Department of Exercise & Prescription, Dankook University)、Jun-Hee Lee(Department of Sports Coaching, Kyunghee University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yun-A Shin, Jun-Hee Lee. Exercise-induced hypertension, leukocyte telomere length, and dietary antioxidant intake in elite male taekwondo athletes: an integrated analysis. Frontiers in Physiology 2026-09-11. DOI: 10.3389/fphys.2026.1934571. 原著ライセンス:CC BY.