掲載誌:Supportive Care in Cancer

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を目的とした研究か

口やのどなど頭頸部にできた欠損を、体の別の部位から移した組織(皮弁)で再建する手術を受けた患者は、術後しばらく口から食事をとらない「絶飲食」の状態に置かれることが多くあります。そのため、鼻や腹部から通した管を使って胃や腸に栄養を直接送り込む「経腸栄養」が必要になります。

術後の回復を早める取り組みでは、手術から24時間以内に経腸栄養を始める「早期経腸栄養」が推奨されています。しかし著者らによれば、頭頸部の手術について、栄養を始めるまでの時間を検討した研究はこれまで限られていました。そこで研究チームは、実際の診療現場で栄養開始を早めることが可能かどうかを確かめる品質改善プロジェクトに取り組みました。

どのように調べたか

プロジェクトはロンドンの医療ネットワークで、「Plan-Do-Study-Act(計画・実行・評価・改善)サイクル」という、現場の手順を少しずつ変えながら効果を検証していく品質改善の手法に沿って進められました。

それまでの通常のやり方は、翌朝の回診で患者の状態を確認してから経腸栄養を始めるというものでした。これを手術当日など、より早い時点に前倒しできないかが検討されました。5人の指導医が早期経腸栄養を試すことに同意し、2人は従来どおりの方法を続けました。研究チームは絶食していた時間、摂取した栄養の量、合併症のデータを前向きに(あらかじめ決めた項目を、患者の経過に合わせて記録していく形で)集めました。

報告された主な結果

2025年5月から11月までに45人の患者が対象となり、早期経腸栄養の群が23人、従来どおりの群が22人でした。

論文によれば、早期群では手術前の絶食時間が中央値0.7日で、従来群の1.3日より有意に短く、栄養を開始するまでの時間も中央値4.3時間と、従来群の18.5時間より大幅に短くなりました。最初の24時間に投与された栄養剤の量は早期群が215ミリリットル、従来群は0ミリリットルで、エネルギーは322.5キロカロリー対0キロカロリー、たんぱく質は13.5グラム対0グラムでした。体重の減少も早期群が中央値1パーセントで、従来群の5.6パーセントより少なくなっていました。

一方で、合併症の重さを分類するクラビエン・ディンド分類で重度(グレード3以上)にあたる患者の割合は早期群35パーセント、従来群27パーセントで、統計的に意味のある差は認められませんでした。入院期間も13日と14.5日で、両群に有意な差はありませんでした。

この報告が示すこと

著者らは、このプロジェクトが実際の診療に近い自然な環境で早期経腸栄養が成り立つことを示す概念実証になると述べています。早期に栄養を始めた患者では絶食時間が短くなり、その一方で合併症が増えることはありませんでした。

研究チームは、手術直後の時期に栄養を届けることでさらに別の利点が生まれる可能性があり、それは今後の研究で確かめられるべきだとしています。日常の診療手順を見直すという小さな変更が、患者の栄養状態に測定できる違いをもたらしうることを、この報告は具体的な数字とともに示しています。

著者:Florence Cook、Amelie Niemann、Gareth Ambler、Axel Sahovaler、Phillip Ward

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Florence Cook, Amelie Niemann, Gareth Ambler, et al. Early enteral feeding following flap surgery for head and neck defects: a quality improvement project using the Plan-Do-Study-Act cycle. Supportive Care in Cancer 2026-09-23. DOI: 10.1007/s00520-026-11231-7. 原著ライセンス:CC BY.