この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Indonesian Journal of Biotechnology (Universitas Gadjah Mada)

ライセンス: CC BY-SA 確認元: OpenAlex

豊富なのに活かされていない海ぶどう

インドネシア東部、カイ諸島にあるトゥアル市の沿岸には、海ぶどう(学名カウレルパ属の海藻)が豊富に生えています。粒が緑色の魚卵の房のように見えることから「グリーンキャビア」とも呼ばれます。著者らによれば、この地域の海ぶどうは一年を通して安定して育ち、病害虫にも強いという利点があります。一方で、地元では主に生のまま野菜として食べられているだけで、収穫後すぐにしおれて傷みやすく、多くが無駄になってしまうことが課題でした。

研究チームは、海ぶどうが浸け置きや漂白、乾燥といった手間のかかる下処理をしなくても、緑色を保ったままジャムに加工できる性質に着目しました。この取り組みは、地域の女性が営む小規模事業者と水産普及員(漁業者に技術や情報を伝える行政の担当者)に、廃棄物を出さない「ゼロ・ウェイスト」の海ぶどうジャム加工技術を伝え、沿岸住民の経済的な自立を後押しすることを目的とした地域貢献活動です。

参加型の研修をどのように進めたか

研究チームはトゥアル市の海洋水産局と協力し、沿岸の家計や地域活動に積極的に関わっている人を選んで、計24人に参加してもらいました。内訳は、地元の小規模事業者を代表する女性18人と、水産普及員6人です。

研修は準備、実践、評価の3段階で進められました。まず事前テストで参加者のもともとの知識を確認し、続いて海ぶどうの可能性とジャムへの加工についての講義を行いました。その後の実習では、参加者自身が選別、洗浄、計量、加熱調理、瓶詰めまでの工程を体験しました。材料には海ぶどうのほか、パパイヤ、砂糖、塩、保存料、そしてマルク地方の特産であるシナモンとクローブが使われ、材料を無駄なく使い切る工程がとられました。

研修後には事前テストと同じ10問の質問票で事後テストを行い、知識や考え方の変化を比べました。質問は技術的な知識、加工手順の理解、そして起業への関心を問う内容で、結果は平均値などを用いて整理されました。最後に意見交換の場も設けられています。

知識と考え方の大きな変化

論文によると、参加者のテストの平均得点は研修前の32.3%から研修後には97.6%へと上がり、著者らはこれを291.5%の上昇と報告しています。

特に変化が大きかったのは、加工前に海ぶどうを乾燥させたり一晩浸けたりする必要があるかを問う質問で、どちらも研修前の0%から研修後には95%になりました。著者らは、海藻の加工に関する思い込みが正されたことを示すものだとしています。また「ジャム作りはとても簡単だ」という考えは9%から100%に、海ぶどうジャムを作ってみたいという関心は82%から100%に高まりました。

意見交換では、多くの参加者が、海ぶどうは身近に豊富にあるのにこれまでサラダとして生で食べるだけだったと話し、手早く簡単に付加価値のある製品にできることを知ったと述べました。実習で作ったジャムは、独特の味わいや色、食感が参加者に好評だったと報告されています。

身近な資源と手軽な技術を結びつける意味

著者らは、海ぶどうを使ったせんべいや粉末飲料といった他の加工品が専用の乾燥・粉砕設備を必要とすることが多いのに対し、今回のジャム加工は技術面でも費用面でも小規模事業者が取り組みやすい方法だと位置づけています。また、水産普及員が加わったことで、研修後も行政による継続的な支援や周辺地域への技術の広まりにつながる体制ができたとしています。

この研修は、地元に豊富にありながら十分に使われていなかった資源と、特別な設備のいらない加工技術を結びつけることで、沿岸に暮らす人々、とりわけ女性が担う家庭の新しい収入源の可能性を示した事例だといえます。

著者:Alfonsina Marthina Tapotubun(Department of Fisheries Product Technology, Faculty of Fisheries and Marine Science, Universitas Pattimura)、Theodora Elsje Adelheid Agustien Matrutty(Department of Fisheries Product Technology, Faculty of Fisheries and Marine Science, Universitas Pattimura)、Eirene Grace Fransina(Department of Chemistry, Faculty of Mathematics and Natural Science, Patimura University)、Johan Riry(Department of Agriculture, Faculty of Agriculture, Universitas Pattimura)、Elizabeth Juleny Tapotubun(Department of Fisheries Product Technology, Politeknik Perikanan Negeri Tual)、Jholie Grace Imanuella Riry(Department of Agriculture, Faculty of Agriculture, Universitas Pattimura)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alfonsina Marthina Tapotubun, Theodora Elsje Adelheid Agustien Matrutty, Eirene Grace Fransina, Johan Riry, Elizabeth Juleny Tapotubun, Jholie Grace Imanuella Riry Empowerment of Tual Coastal Communities Through Sea Grape Caulerpa spp. Jam Processing. Indonesian Journal of Biotechnology (Universitas Gadjah Mada) 2026-09-30. DOI: 10.22146/jpkm.106813. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。