この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:JMM (Jurnal Masyarakat Mandiri)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

活動の目的と背景

インドネシア・スラバヤ市の沿岸部ケンジェラン地区には、水産物を加工する小規模な家内工業があります。そのひとつが、燻製マグロを原料に「アボン」と呼ばれる味付けの魚フレークを作る、家族経営の「ASIAP」です。アボンは魚の身をほぐして調味し、炒って揚げることで乾いた田麩(でんぶ)状に仕上げる保存性のある食品です。

研究チームが工房を観察し、事業者に聞き取りをしたところ、主な課題は二つでした。一つは揚げた後の油切りです。布や簡単なこし器を使った手作業のため体力が必要で、仕上がりも一定せず、袋の内側に油がにじんで見えることがありました。もう一つは包装です。袋を十分に密封できる仕組みがなく、空気や外部環境から製品を守る力が十分ではありませんでした。袋のデザインも、商品情報やブランドの印象を伝えるには不十分でした。

この活動は、大学の教員と学生が地域の事業者を支援する社会貢献活動として行われました。目的は、事業者が現場に合った技術を使いこなせるようにし、製造工程の効率と包装を改善し、将来の生産規模拡大を支えることでした。

導入した技術と進め方

活動は2026年4〜8月に4回の現地訪問で行われました。現状の把握、研修と講習、技術の導入、伴走支援と評価、継続に向けた計画づくりの5段階で進められています。

中心となった技術は三つです。一つ目は「オイルスピナー」で、揚げたアボンを容器に入れて高速で回転させ、遠心力で油を飛ばす装置です。二つ目は「真空シーラー」で、内袋の空気を抜いて封をします。三つ目は「ヒートシーラー」で、熱で袋の口を閉じる装置です。真空パックした内袋をブランド名入りの自立型の外袋に入れ、ヒートシーラーで封をする二重包装の仕組みが作られました。

このほか、より大きな炒り鍋と揚げ鍋が提供され、袋のデザインも新しくなりました。新しいデザインは、インドネシアの家内工業向け食品製造許可「PIRT」の取得準備に役立つよう、食品表示に必要な情報を意識して作られています。

研修には、事業者と製造を手伝う近隣住民の計10人が参加しました。4時間にわたり講義、実演、実習が行われ、機器の使い方と手入れ、衛生と食品安全、包装の基本を学びました。評価には、作業の観察、聞き取り、機器操作の実技確認、研修前後のテストが使われました。

報告された主な結果

著者らによると、事業者は三つの機器を製造と包装の一連の工程で実際に使えるようになりました。研修前後のテストでは、平均点で見た知識が40%向上したと報告されています。

製造時間については、聞き取りの結果、炒り工程がおよそ3時間から1.5時間に短くなりました。著者らはこれを約50%の時間効率化としています。ただしこの数字は、活動中の観察と事業者からの情報に基づく実務上の成果です。繰り返し実験で確かめた結果ではないと、論文は明記しています。

オイルスピナーを使うと、約800グラムのアボンが約600〜700グラムに減りました。油などの液体成分が抜けたことを示すと説明されていますが、実験室での分析は行っていないため、油分の量としては解釈しないとされています。事業者は、手作業が減ったことや、製品と袋の内側がきれいになったことを実感として語っています。

生産規模については、1回あたり約3キロのマグロという従来の処理量を、10〜15キロへ広げることを支える大型の鍋が整いました。ただし論文では、これは「拡大を支える準備ができた」段階として位置づけられています。実際の生産規模での検証はまだ必要とされています。PIRTの許可も、この時点では取得済みとはされていません。

この報告が示すこと

この報告は、炒る、油を切る、包装するという工程を一つの流れとして捉え、それぞれに手の届く技術を組み合わせて導入した事例です。研究チームは、機器を渡すだけでなく、研修と実習を通じて事業者自身が使いこなせるようにした点を重視しています。その結果、作業の効率と包装の質が改善し、事業を続けていくための土台ができたとまとめています。同時に、生産量の拡大、品質や日持ちの測定、許可取得については、まだ途中段階であることも示しています。

著者:Luh Juni Asrini(Prodi Teknik Industri, Universitas Katolik Widya Mandala Surabaya)、Yuliati Yuliati(Prodi Teknik Elektro, Universitas Katolik Widya Mandala Surabaya)、Dian Trihastuti(Prodi Teknik Industri, Universitas Katolik Widya Mandala Surabaya)、Jesen Oktavian Siswanto(Prodi Teknik Industri, Universitas Katolik Widya Mandala Surabaya)、Samuel Aquinas(Prodi Teknik Industri, Universitas Katolik Widya Mandala Surabaya)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luh Juni Asrini, Yuliati Yuliati, Dian Trihastuti, Jesen Oktavian Siswanto, Samuel Aquinas PENERAPAN TEKNOLOGI SPINNER, VACUUM SEALER, HEAT SEALER, DAN DESAIN KEMASAN BERBASIS PIRT UNTUK PENGUATAN USAHA ABON IKAN ASAP ASIAP. JMM (Jurnal Masyarakat Mandiri) 2026-10-06. DOI: 10.31764/jmm.v10i5.42301. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。