この研究は、メキシコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Recycling

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

売れない果実を資源として生かすために

ブラックベリーは食物繊維やビタミン、ポリフェノールなどの植物由来成分を含む果実として評価されています。一方で傷みやすく、収穫から保管、小売までの過程で生産量のおよそ30%が失われると見積もられています。見た目や大きさ、硬さなどの品質基準を満たさず、市場でほとんど受け入れられない果実は「規格外ブラックベリー」と呼ばれ、活用されなければ食品廃棄物になります。

メキシコの研究チームは、こうした規格外ブラックベリーから有用な成分を取り出して活用する方法として、超音波処理に着目しました。強い超音波を液体中に当てると、微小な気泡ができてはつぶれる「キャビテーション」という現象が起き、植物の細胞壁や細胞膜が壊れて中の成分が溶け出しやすくなるとされています。研究の目的は、高出力の超音波処理が規格外ブラックベリーの基本的な性質と、ポリフェノールなどの機能性が期待される成分(生理活性成分)にどのような影響を与えるかを評価することでした。

水だけを使い、処理時間を変えて比較

著者らは、環境負荷の小さい溶媒として水を選び、果実に対して重さで2倍量の水を加えて、周波数20キロヘルツ、振幅100%の超音波を当てました。処理時間は0分(未処理)、10分、30分、60分とし、果実は乾燥させずに丸ごと使っています。

そのうえで、糖度の目安となる可溶性固形分、pH、酸度、食物繊維(水に溶ける水溶性と溶けない不溶性)、総ポリフェノール量、ブラックベリーの濃い色のもとになる色素アントシアニン、ビタミンC、そして試験管内での抗酸化活性を測定しました。抗酸化活性は、性質の異なる3種類の測定法(DPPH法、ABTS法、FRAP法)で評価しています。

増える成分と減る成分

可溶性固形分は60分の処理で有意に増え、未処理の11.50ブリックスから12.57ブリックスになりました。一方、pHと酸度には有意な変化がなく、論文はこれを果実の風味を大きく変えないことと関連づけています。

食物繊維では、総量には有意な変化が見られませんでしたが、内訳が変わりました。不溶性食物繊維は60分で減少し、水溶性食物繊維は30分から有意に増え、60分では乾燥重量100グラムあたり8.60グラムから11.79グラムになりました。著者らは、超音波によって細胞壁の構造が壊され、溶けにくい繊維の一部がより溶けやすい形に変わった可能性を考察しています。

総ポリフェノール量は30分で最も多くなり、未処理の生重量100グラムあたり170.70ミリグラム(没食子酸換算)から235.54ミリグラムに増えましたが、60分では221.67ミリグラムへとやや減少しました。これに対してアントシアニンは処理時間が長くなるほど減り、60分では未処理の49.44ミリグラムから39.15ミリグラムへ、約21%低下しました。ビタミンCは10分で一時的に減ったものの、30分と60分では未処理と同程度の値でした。

抗酸化活性は、測定法によって傾向が異なりました。DPPH法では10分で最も高くなり、その後は低下しました。一方、ABTS法とFRAP法では処理時間が長くなるにつれて値が上がり、60分で最も高い値を示しました。論文は、測定法ごとの違いの背景として、試料に含まれるポリフェノールの種類や構造の多様さを挙げています。

処理時間の選び方が成分の行方を左右する

この研究は、規格外ブラックベリーに水だけを使って高出力の超音波を当てることで、水溶性食物繊維やポリフェノール、一部の抗酸化活性の値を高められる一方、アントシアニンのように処理が長くなるほど減る成分もあることを示しました。どの成分を重視するかによって、適した処理時間が変わることがうかがえます。

著者らは、こうした結果が、廃棄されがちな果実を価値ある素材として活用し、食品ロスを減らす環境に配慮した加工の可能性を示していると結論づけています。

著者:Cynthia Teresa Lara-García(Biochemistry Engineering Department, National Technological of Mexico in Celaya, Antonio García Cubas Pte. No. 600, Colonia Alfredo V. Bonfil, Celaya C.P. 38010, Guanajuato, Mexico)、Sandra Neli Jimenez-Garcia(Department of Nutrition, Division of Health Sciences and Engineering, Campus Celaya-Salvatierra, University of Guanajuato, Avenida Ingeniero Javier Barros Sierra, No. 201, Ejido Santa María del Refugio, Celaya C.P. 38110, Guanajuato, Mexico)、Dulce María Soria-Lara(Department of Nursing and Obstetrics, Division of Health Sciences and Engineering, Campus Celaya-Salvatierra, University of Guanajuato, Mutualismo #303, Celaya C.P. 38060, Guanajuato, Mexico)、José Enrique Botello-Álvarez(Biochemistry Engineering Department, National Technological of Mexico in Celaya, Antonio García Cubas Pte. No. 600, Colonia Alfredo V. Bonfil, Celaya C.P. 38010, Guanajuato, Mexico)、Rita Miranda‐López(Biochemistry Engineering Department, National Technological of Mexico in Celaya, Antonio García Cubas Pte. No. 600, Colonia Alfredo V. Bonfil, Celaya C.P. 38010, Guanajuato, Mexico)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cynthia Teresa Lara-García, Sandra Neli Jimenez-Garcia, Dulce María Soria-Lara, et al. Evaluation of the Effect of Ultrasonic Vibration on the Physicochemical and Bioactive Properties in Non-Marketable Blackberry (Rubus sp.). Recycling 2026-09-26. DOI: 10.3390/recycling11100171. 原著ライセンス:CC BY.