著者の所属・活動拠点の国は、イスラエル、ポルトガルです。

掲載誌:Frontiers in Plant Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

塩分の多い環境でも育つ植物は「塩生植物」と呼ばれます。その一部は、欧州やアジアで「サンファイア」や「シーアスパラガス」の名で生鮮野菜や料理の付け合わせとして売られています。サルコルニア属の植物は多年生で、年に何度も収穫できます。茎葉にはポリフェノールなど、抗酸化作用を持つ成分が多く含まれることが知られています。

野菜は水分が多いため、収穫してから消費されるまでの間に品質が落ちやすいとされています。特に、収穫後に水分が失われると、しおれや軟化が起こります。これまでの研究は、冷蔵の温度や期間が品質に与える影響を主に扱ってきました。収穫から冷蔵庫に入れるまでの「待ち時間」の影響は、十分に調べられていませんでした。また、栽培中に与えた塩分の濃さによって、この待ち時間への反応が変わるのかどうかも分かっていませんでした。

そこで研究チームは、食用の塩生植物について、栽培時の塩分濃度と収穫後の保管遅延の組み合わせが、水分や栄養成分、抗酸化に関わる性質にどう影響するかを調べました。

何をどう調べたか

対象は5つの系統です。サルコルニア・フルティコサの新しい系統であるシクモナ、メガディム、ルハマの3つと、一般に栽培されている系統VMを比べました。さらに、近縁の塩生植物アルトロカウロン・マクロスタキウム(AM)も加えました。

植物は温室で鉢植えにして育てました。灌水には、塩化ナトリウム濃度100ミリモーラーと150ミリモーラーの2種類の塩水を使い、肥料を加えています。収穫は30日ごとに行い、再生した若い茎を採取しました。

収穫した茎は、次の3通りに分けました。1つ目は直後に急速凍結する対照です。残りの2つは、約25℃の温室に1時間または2時間置いてから凍結しました。別の実験では、収穫後2時間置いてから4℃の暗い冷蔵室で21日間保管したものと、すぐに同じ条件で21日間保管したものを比較しました。

測定項目は、水分の減り方、カロテノイド、アントシアニン、総ポリフェノール、総フラボノイド、抗酸化活性の指標です。抗酸化活性は、不安定な分子(ラジカル)を消去する能力として測りました。あわせて、可溶性糖、電気伝導度、酸化ストレスの目安となるマロンジアルデヒド関連の値も調べました。水分が抜ければ成分の濃度は見かけ上高くなります。そのため著者らは、水分減少だけで説明できる値を計算し、実測値と比べる工夫もしています。

主な結果

収量について、著者らは新しい系統が栽培系統VMより栄養成分と収量の面で優れていたと報告しています。シクモナを除く系統では、塩分の高い条件のほうが生の茎の重量が多くなりました。高塩分条件では、ルハマとメガディムがVMより多い収量を示しました。一方、シクモナの収量はVMと同程度でした。

収穫後に置いておくと、茎の水分は減りました。その減り方は、おおむね低い塩分で育てた植物のほうが大きいという結果でした。

サルコルニアの各系統では、1時間または2時間の保管遅延によって、総ポリフェノール、フラボノイド、カロテノイド、アントシアニン、ラジカル消去活性が、収穫直後と比べて有意に高まりました。著者らは、この抗酸化能の上昇が水分減少から予想される増加を上回っていたと報告しています。これに対しAMでは、アントシアニンとカロテノイドを除き、抗酸化に関わる値が低下しました。可溶性糖、電気伝導度、マロンジアルデヒドは、どちらの遅延時間でも、AMとサルコルニアの両方で増加しました。

21日間の冷蔵を組み合わせた実験でも、傾向は同様でした。サルコルニアでは、2時間の遅延を経た試料のほうが、ポリフェノール、フラボノイド、カロテノイド、ラジカル消去活性が高い傾向でした。AMでは、2時間の遅延後に冷蔵すると、すぐに冷蔵した場合よりフラボノイド、ポリフェノール、ラジカル消去活性が低下しました。ただしカロテノイドは増えていました。また、AMの抗酸化成分の量は、遅延の有無にかかわらずサルコルニアの系統より高いままでした。

この研究が示すこと

この研究は、収穫から冷蔵までのわずか1〜2時間の扱いの違いが、塩生植物の成分を変えうることを示しました。しかも、その変化の方向は植物の種類によって逆になりうるという結果です。サルコルニアでは抗酸化に関わる成分が増え、AMでは多くが減りました。著者らは、これらの知見が、塩分のある条件で育てる塩生植物について、収穫や収穫後の管理方法を最適化するための科学的な土台になると述べています。

原著論文の著者・所属:Tesfaye Asmare Sisay(The Albert Katz International School for Desert Studies, The Jacob Blaustein Institutes for Desert Research, Ben-Gurion University of the Negev, Sede Boker Campus)、Jaykumar Patel(Jacob Blaustein Center for Scientific Cooperation, The Jacob Blaustein Institutes for Desert Research, Ben-Gurion University of the Negev, Sede Boker Campus)、Kusum Khatri(Jacob Blaustein Center for Scientific Cooperation, The Jacob Blaustein Institutes for Desert Research, Ben-Gurion University of the Negev, Sede Boker Campus)、Babita Choudhary(Jacob Blaustein Center for Scientific Cooperation, The Jacob Blaustein Institutes for Desert Research, Ben-Gurion University of the Negev, Sede Boker Campus)、Dominic Standing(The Albert Katz Department of Dryland Biotechnologies, French Associates Institute for Agriculture and Biotechnology of Dryland, The Jacob Blaustein Institutes for Desert Research, Ben-Gurion University of the Negev, Sede Boker Campus)、Zai Du Nja(The Albert Katz International School for Desert Studies, The Jacob Blaustein Institutes for Desert Research, Ben-Gurion University of the Negev, Sede Boker Campus)、Itai Kolsky(Morris Kahn Marine Research Station, The Leon H. Charney School of Marine Sciences, University of Haifa)、Muki Shpigel(Morris Kahn Marine Research Station, The Leon H. Charney School of Marine Sciences, University of Haifa)、Luísa Margarida Batista Custódio(Center of Marine Sciences, University of Algarve, Campus de Gambelas)、Ilya Gelfand(The Albert Katz Department of Dryland Biotechnologies, French Associates Institute for Agriculture and Biotechnology of Dryland, The Jacob Blaustein Institutes for Desert Research, Ben-Gurion University of the Negev, Sede Boker Campus)、Moshe Sagi(Katif Research Center; Ministry of Science and Technology; The Albert Katz Department of Dryland Biotechnologies, French Associates Institute for Agriculture and Biotechnology of Dryland, The Jacob Blaustein Institutes for Desert Research, Ben-Gurion University of the Negev, Sede Boker Campus)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tesfaye Asmare Sisay, Jaykumar Patel, Kusum Khatri, et al. One- and two-hour storage delays improve nutritional components in Sarcocornia fruticosa ecotypes, but not in the Arthrocaulon macrostachyum ecotype. Frontiers in Plant Science 2026-10-06. DOI: 10.3389/fpls.2026.1943035. 原著ライセンス:CC BY.