著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。
掲載誌:Journal of Islamic Social Economics and Development
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
イスラム教では、食べてよいものを「ハラール」と呼びます。ただし本研究の著者らによれば、ハラールは宗教上許されているかどうかだけの問題ではありません。「ハラーラン・タイイバン」という考え方では、清潔さ、安全性、品質といった「良いもの」であることも重視されます。
著者らは、ムスリム消費者のあいだでハラールへの関心が高まる一方、誤解や表面的な理解も残っていると指摘します。マレーシアでは、看板にジャウィ文字(アラビア文字によるマレー語表記)を使ったり、店員がヒジャブやムスリムの帽子を身に着けたりして、ムスリム客を引きつけようとする飲食店があります。こうした宗教的な見た目から、ハラールの要件を満たしていない店をハラールだと思い込んでしまうおそれがあります。認証されていない偽のハラールロゴが出回っていることも、消費者を混乱させる要因として挙げられています。
そこで研究チームは、マレーシア・サラワク州ラワスに住むムスリムを対象に、三つの点を調べました。食べ物を選ぶときに何を重視しているか、ハラール意識はどの程度か、そしてハラール意識が持続可能で責任ある消費を促すきっかけになりうるか、です。
調査の方法
研究チームは、ある一時点の状況を切り取る横断的な量的調査を行いました。対象は、ラワスに住み、日々の食べ物を自分で選んでいるムスリム消費者177人です。研究目的に合う人を意図的に選ぶ方法で集めました。
質問票はWhatsAppなどを通じたオンライン配布と対面配布で回収しました。各項目について「まったくそう思わない」から「とてもそう思う」までの5段階で回答してもらい、結果を割合で集計しました。回答者は女性が約3分の2を占め、半数以上が月収3000リンギット未満でした。
主な結果
食べ物を選ぶ際の要因では、ハラール認証と清潔さが特に重視されていました。マレーシアの公的機関JAKIMによるハラール認証ロゴを店に入る前に確認すると答えた人は75.7%でした。また71.2%が、店舗の清潔さや状態を強く重視すると答えました。サービスの速さや感じのよさ(64.4%)、味(53.7%)、手頃な価格(46.3%)も判断に影響していましたが、著者らはこれらを補助的な要因と位置づけています。友人の勧めについては44.6%が「どちらでもない」と答えました。また57.6%が、ハラール認証のない話題の店には行かないと答えました。著者らはこの結果から、回答者が流行よりも確かな情報を優先する傾向を読み取っています。
ハラール意識は全体として高い水準でした。ハラールの概念を理解していると答えた人は84.7%でした。ハラールは食肉処理の方法だけでなく清潔さや品質も含むと認識している人は88.7%でした。ハラーラン・タイイバンを理解しているとした人は72.9%、そうした食べ物をとることが重要だとした人は84.7%でした。食事前にハラール認証を確認するという人も74.6%いました。
一方で、知識と実際の理解のあいだにずれも見つかりました。ハラール認証のないムスリム経営の店を信頼するかという質問では、29.9%が判断に迷っていました。著者らは、認証よりも提供者の属性に頼る人がいることを示すと解釈しています。また、非ムスリムが経営するハラール認証店での食事については28.8%が強く否定しました。「豚肉不使用」「アルコール不使用」の表示をハラールの証拠とはみなさない人は54.8%、店員の宗教的な服装をハラールの目印とはみなさない人は41.8%でした。それでも一部の回答者には迷いが残っていました。
研究が示すこと
著者らは、ラワスのムスリムのハラール意識は高いものの、知識があるだけで日々の正しい実践が保証されるわけではないと結論づけています。特に、認証制度やその確認方法についての理解が不十分だと、行動が一貫しなくなり、疑わしい食べ物を口にするおそれが高まると指摘します。
これらの結果をもとに、研究チームは「持続可能なムスリム消費者」の特徴を整理しました。ハラールとハラーラン・タイイバンについて十分な知識を持つこと。公的な認証など信頼できる手段でハラールかどうかを確かめること。清潔さ、安全性、品質を重んじること。そして、流行や周囲の圧力、思い込みに流されないことです。ハラールを狭い宗教上の決まりではなく生活全体の指針として捉えれば、ハラール意識は責任ある持続可能な消費を後押しする力になりうる。これが、この研究の伝えるメッセージです。
著者:Muhammad Arif Syukri(Academy of Contemporary Islamic Studies (ACIS), UiTM Shah Alam, 40450 Shah Alam, Selangor, Malaysia)、Fathiah(Academy of Contemporary Islamic Studies (ACIS), UiTM Perak Branch, Seri Iskandar Campus, 32610 Seri Iskandar, Perak, Malaysia)、Fauziah(Academy of Contemporary Islamic Studies (ACIS), UiTM Perak Branch, Seri Iskandar Campus, 32610 Seri Iskandar, Perak, Malaysia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muhammad Arif Syukri, Fathiah, Fauziah. Halal awareness and sustainable consumption among Muslims in Lawas, Sarawak.. Journal of Islamic Social Economics and Development 2026-09-21. DOI: . 原著ライセンス:CC BY.