種実やナッツを「良質な脂の食品」として日々の食卓に取り入れている人は多い。脂の大半が不飽和脂肪酸で、飽和脂肪酸中心の動物性脂とは構造が違うのは確かだ。ただ「不飽和だから安心」で止まると、見落とすものがある。代表的な6品の脂肪酸の内訳を成分表で並べると、5品がn-6系のリノール酸に大きく偏り、n-3系の数字を持つのは1品だけ——という構造がはっきり見えてくる。脂の「質」は不飽和かどうかだけでなく、n-6とn-3のバランスでも語られる。その目で見ると、同じ「ナッツ」でも中身はずいぶん違う。
脂肪酸の三つの顔を整理する
種実の脂肪酸は、大きく三つに分けられる。一価不飽和脂肪酸(代表はオレイン酸)、n-6系多価不飽和脂肪酸(代表はリノール酸)、n-3系多価不飽和脂肪酸(代表はα-リノレン酸)だ。リノール酸もα-リノレン酸も体内では合成できない必須脂肪酸だが、リノール酸はサラダ油・大豆油・ごま油など日常の植物油からすでに十分に供給されているとされる。一方で、α-リノレン酸を多く含む食品は限られる。だから「どの食品がどちらをどれだけ持つか」が、選び分けのカギになる。
以下の数値は、すべて成分表の可食部100gあたりだ。なお比較する品目は、アーモンドが「乾」、カシューナッツが「フライ・味付け」、ごま・かや・らっかせい・くるみが「いり」と、加工・調理の形態がそろっていない。脂肪酸の大まかな傾向をつかむ材料として読んでほしい。
一価不飽和が主役:アーモンドとカシューナッツ
アーモンド(乾)の脂質は100gあたり51.8g。そのうち一価不飽和脂肪酸が33.61gと大半を占め、n-6系は12.11gにとどまる。一価不飽和の割合が突出して高いのが持ち味だ。10粒(約15g)なら脂質は約7.8g、うち一価不飽和は約5gという計算になる。
カシューナッツ(フライ・味付け)も一価不飽和脂肪酸が27.74gと主役で、n-6系は8.0gと6品の中でも最も少ない部類に入る。10粒(約15g)で脂質は約7.1g。ナッツ類はアレルギーの対象となることがあるため、該当する場合は注意したい。
リノール酸(n-6系)が主役:ごま・かや・らっかせい
炒りごまは脂質54.2gのうち、n-6系が22.44gで、その中心がリノール酸だ。n-3系の記録はない。リノール酸が主体という点では、植物油に近い顔つきの食品といえる。
炒りかや(榧)は脂質64.9gのうちn-6系が27.99gと、6品の中でも多い水準にある。こちらもn-3系の記録はない。
炒り落花生(小粒種)はn-6系が推定値で(16.72)g(括弧は公式の推定値)。やはりリノール酸が主体で、n-3系の記録はない。
n-3系を持つ唯一の品:くるみ
6品を並べたとき、n-3系多価不飽和脂肪酸の数字を持つのは炒りくるみだけだ。n-3系は8.96gと記録され、その中心がα-リノレン酸。n-6系も41.32gと多いが、n-3系を備えること自体が、ほかの5品にはない特徴になっている。脂質は100gあたり68.8gと6品で最も多く、1個(約8g)なら脂質は約5.5g、α-リノレン酸は約0.7gの計算だ。脂質が多い分だけ酸化しやすいので、密閉容器に乾燥剤を入れ、直射日光を避けて保存するとよい。
数字で選ぶ、日々の取り入れ方
この6品の構造は、次のように整理できる。
- 一価不飽和を主体に取りたいとき:アーモンド・カシューナッツ。サラダのトッピングやおやつに、10粒を目安に取り入れやすい。
- n-6系リノール酸はもう十分という場合:ごま・かや・らっかせいはn-6系が主役。風味づけや味付けに使う食品なので、量を加減しながら。
- n-3系α-リノレン酸まで意識するなら:くるみ。ただしエネルギーは100gあたり713kcalと高め。1個(約8g)をヨーグルトや和え物に加えるくらいが現実的だ。
どれも「一度に100gは食べない」量で楽しむもの。成分表の数字は、あくまで100gあたりの参考値として読みたい。
「不飽和だから安心」の先へ
種実の脂が「体にうれしい脂」と語られる背景には、たしかに理由がある。それでも6品のデータを数字で見ると、5品がn-6系に偏り、n-3系のα-リノレン酸を持つのはくるみだけ——という構造が浮かび上がる。「何を食べるか」だけでなく「どの脂を取りたくて食べるか」。その問いを携えて成分表をのぞくと、いつもの一つかみが少し違って見えてくるはずだ。なお本記事は脂肪酸組成の数値を読むもので、特定の食品の効果を示すものではありません。詳しい摂取の目安は日本人の食事摂取基準も参考にしてほしい。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。