びわの皮をむくと、果肉の色にはっとすることがある。初夏の青空の下なのに、実の中だけが鮮やかな橙色をしている。これはいったい何の色なのだろう。
千葉びわは「田中」「茂木」といった品種が有名で、ちょうど今、6月上旬から中旬にかけて最盛期を迎えている。産地の千葉では、この時期だけ木箱入りのびわが農産物直売所やスーパーの棚に並ぶ。店に出回るのはひと月にも満たないことが多く、見かけたら迷わず手を伸ばしたい。
橙色の正体はカロテノイド
成分表に千葉びわとしての個別収録がないため、一般的なびわ 生の実測値で見ていこう。
可食部100gあたりで特に目を引くのが、β-クリプトキサンチン600µgという値だ。β-クリプトキサンチン(ベータ・クリプトキサンチン)は、カロテノイドと呼ばれる天然色素グループに属する成分。カロテノイドとは、果物や野菜に広く含まれ、食品に黄色や橙色などをつけるはたらきをもつ色素の総称だ。びわ果肉のあの鮮やかな橙色は、このβ-クリプトキサンチンをはじめとするカロテノイドに由来している。
β-クリプトキサンチンは「プロビタミンA」のひとつとしても知られている。プロビタミンAとは、体内でビタミンAに変換されうる前駆体(もとになる物質)のこと。ただし変換効率は個人差や食事内容によって異なり、β-クリプトキサンチン単独の摂取目安は日本人の食事摂取基準には設けられていない。
びわは種が大きく可食部が少ない果物なので、中くらいの実を3〜4個食べたとしても可食部の合計は約100g程度が目安。600µgという数値は、そのくらいの量で得られる概算だ。
41kcal、甘さのなかに宿る軽さ
エネルギーは可食部100gあたり41kcal。充分な甘みがあるわりに、見た目よりずっと軽い。炭水化物は10.6gで、食物繊維が1.6g含まれる。食物繊維1.6gは、食事摂取基準における女性(30〜49歳)の1日の目標量18gの約9%にあたる(可食部100gあたりの値)。びわだけで大きく補える量ではないが、旬の果物として日々の食卓に取り入れることで、食物繊維を少し底上げする一皿になる。
旬のびわ、いくつかの楽しみ方
なんといっても、冷やしてそのまま食べるのがいちばんだ。冷蔵庫で30分ほど冷やしてから、指でつるりと皮をむく。甘みの中にほんのりした酸味と、初夏らしい香りが広がる。食べ終わったあとの橙色の皮を眺めながら、あの色がカロテノイドだったのかと思うと、ちょっと得した気分になれる。
ヨーグルトや白いクリームチーズと合わせると、橙色がそのまま彩りになる。砂糖と少量のレモン汁で手早く煮たコンポートやジャムにすると、旬の短いびわの風味を少し引き延ばして楽しめる。
今だけの橙色を、ゆっくりと
β-クリプトキサンチンというカロテノイドを宿したびわの橙色は、栄養学的にも個性のある色だ。派手に語られることの少ない果物だが、6月上旬という短い旬の中に、鮮やかな色と独自の成分が詰まっている。今年も千葉びわを見かけたら、その橙色の正体を少し思い浮かべながら、ゆっくり味わってみてほしい。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。