この研究は、ガーナの研究機関の研究論文です。
掲載誌:American Journal of Food Science and Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
肥満は世界的な公衆衛生上の課題で、サハラ以南のアフリカでも都市部を中心に増えています。著者らは、市場で商売をする女性を特に肥満のリスクが高い集団と位置づけています。長時間座って販売を続けること、運動の機会が限られること、食事の時間が不規則になりやすいこと、仕事のストレスが大きいことなどが理由です。それでも、ガーナの市場で働く女性について、肥満に関わる要因をまとめて調べたデータは限られていました。
そこで研究チームは、ガーナ北部アッパーイースト州のカッセナ・ナンカナ市にあるナブロンゴ中央市場で働く女性を対象に調査を行いました。年齢・学歴・婚姻状況・住居などの社会的な属性、食事の傾向、運動、食事を抜く習慣、仕事のストレスが、肥満とどう関係しているかを調べることが目的です。
何をどのように調べたか
調査は、ある一時点の状態を調べる横断研究として行われました。対象は、市場に区画された店や売り場を持つ18歳以上の女性264人です。身長と体重から、体格の目安となるBMI(体重kgを身長mの2乗で割った値)を計算し、世界保健機関(WHO)の基準に沿って30以上を肥満としました。あわせて腹囲を測り、88cm以上を腹部肥満としました。
食事は、前日24時間に食べたものの聞き取りと、過去1か月の食品の摂取頻度を尋ねる質問票で調べました。摂取頻度のデータには主成分分析という統計手法を用い、一緒に食べられやすい食品の組み合わせを「食事パターン」として抽出しています。運動の有無、食事を抜く習慣、仕事のストレスなどは質問票で尋ね、それぞれの要因と肥満との関連を統計的に検討しました。
主な結果
論文によると、対象者のうち肥満と判定されたのは54.2%、腹部肥満は73.5%でした。
最も強い関連を示したのは年齢です。平均BMIは18〜28歳で26.3、29〜39歳で30.2、40〜50歳で34.5、51〜65歳で36.0と、年齢層が上がるほど高くなり、腹囲も同じ傾向でした。年齢とBMIの相関係数は0.676、年齢と腹囲は0.635と報告されています。学歴も肥満と有意に関連しており、正規の教育を受けていない女性で肥満が多く、高等教育を受けた女性では少ない傾向が示されました。婚姻状況と住居の種類も肥満と関連していました。肥満の女性の多くは既婚者でした。一方、民族や月収には肥満との有意な関連は見られませんでした。
生活習慣では、三つの要因が高いBMIや大きな腹囲と関連していました。食事を抜く人の平均BMIは32.0で、抜かない人は30.2でした。抜く食事が朝・昼・夕のどれであるかによる差は見られませんでした。定期的に運動しない人は、運動する人より平均BMIが高く(32.5対30.6)、平均腹囲は約6cm大きい結果でした(100.5cm対94.3cm)。仕事のストレスがある人も、ない人より平均BMIが高くなっていました(31.7対29.7)。
食事パターンは三つ抽出されました。果物・野菜・たんぱく質・でんぷん質の食品を中心とするもの、野菜とでんぷん質の食品を中心とするもの、マンゴーと煮込み料理を中心とするものです。このうち前の二つは、BMIとの間に弱い正の相関を示しました。果物や野菜を含むパターンでの正の相関は予想外の結果で、著者らは理由の候補を挙げています。肥満の人は健康的な食品も含めて食べる量全体が多い可能性、健康的な食品の摂取を多めに申告している可能性、体重を気にして最近になって食事を変えた可能性です。
この研究が示すこと
著者らは、市場で働く女性の肥満は単一の原因ではなく、複数の要因が重なって生じていると結論づけています。年齢のように変えられない要因に加え、教育、運動、食事の規則性、仕事のストレスといった、働きかけによって変えうる要因も関わっていることが示されました。
ただし、この研究は一時点の調査であるため、これらの要因が肥満を引き起こしたという因果関係までは示していません。食事の聞き取りには記憶違いや申告の偏りが入りやすく、調査地も一つの市に限られています。こうした制約はあるものの、これまで十分に調べられてこなかった市場の女性たちについて、肥満と関わる生活や仕事の特徴を具体的に示した点に、この研究の意味があります。
著者:Joseph Laari Dakwari(Community Health Nurses’ Training College, Navrongo, Ghana)、Elizabeth Dujin(Community Health Nurses’ Training College, Navrongo, Ghana)、Laura Lardi Issaka(Sunyani Techical University, P.O. Box 260, Ghana)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Joseph Laari Dakwari, Elizabeth Dujin, Laura Lardi Issaka. Determinants of Obesity among Market Women in the Kassena Nankana Municipality: A Cross-Sectional Analysis. American Journal of Food Science and Technology 2026-09-15. DOI: 10.54536/ajfst.v5i2.7027. 原著ライセンス:CC BY.