6月下旬、北海道では今まさに新じゃがいもが収穫の時期を迎えている。長崎や熊本産の春じゃがいもがひと足先に店頭を賑わせ、続いて北海道産が夏から秋にかけて主役に躍り出る——じゃがいもにとって、今は産地のバトンが渡る、にぎやかな季節だ。
炒め物に、煮物に、スープに。じゃがいもは夏の食卓で一年中いちばん火にかけられる野菜かもしれない。そしてここに、加熱調理でこそ光る、じゃがいもならではの面白い特性がある。
加熱に強いビタミンC——でんぷんが守る
「野菜のビタミンCは熱に弱い」とよく言われる。実際、多くの野菜は加熱でビタミンCを大きく失う。ところがじゃがいも(皮なし)は、その常識から少しはずれた存在だ。可食部100gあたりのビタミンC(生)は28mg。だが面白いのは、量そのものよりも壊れにくさのほうにある。いも類のビタミンCはでんぷんに包まれて守られているため、葉物野菜ほどには加熱で失われにくいとされているのだ。
28mgはあくまで生の値で、火を通せばいくらかは減る。それでも、ほかの野菜に比べれば加熱後に残りやすい——炒めても煮てもスープにしても、火を通した夏の料理からビタミンCを取り込みやすいというのは、暑い季節の家庭にとって地味に心強い話だ。ゆでる・蒸す・炒めるといった日常の調理の中で、あまり気をもまずに付き合える食材である。
夏の食べ方——素直においしく、少しだけ気をつけること
中1個(約150g、皮などの廃棄分を除いた可食部で約135g)あたり、エネルギーは約80kcal、炭水化物は約23g。ビタミンCはおよそ38mgになる計算だ。食物繊維も100gあたり8.9gと、意外にしっかり含む。夏の定番、ジャーマンポテトやガレット、冷製のヴィシソワーズ、それに塩もみしてから炒めるシンプルな一皿まで——旬の新じゃがは皮ごと使えるのもうれしいところ。皮付きのまま素揚げして塩と少しの酢で仕上げると、みずみずしさが際立つ。
ひとつだけ、知っておきたい安全の話がある。じゃがいもが光に当たって緑色になった部分や、芽の付け根には、ソラニン・チャコニンというアルカロイドが多く含まれる。これらは加熱しても分解されにくく、ゆでても大きくは減らないとされるため、青くなった部分と芽は皮を厚めにむいてしっかり取り除くことが勧められている。未熟な小型のいもを大量に食べるのも避けたい。夏は光が強く緑化が進みやすいので、保存場所に少し気を配っておくだけで、安心して使い続けられる。
りんごと一緒に、夏を越させる保存の知恵
じゃがいもの保存で覚えておきたいのが、りんごとの組み合わせだ。りんごから出るエチレンガスがじゃがいもの発芽を抑えるとされており、同じ場所に置くと芽が出にくくなる。冷暗所で新聞紙に包んで常温保存が基本で、目安は涼しい時期で1か月ほど。気温が上がる夏場は日持ちが短くなるので、早めに使い切りたい。使いきれないときは、薄切りや下ゆで・マッシュにしてから冷凍しておくと、扱いやすい形でしばらく保存できる。
火を通してもビタミンCが生き残りやすい——その一点を頭の片隅に置くだけで、いつものじゃがいも料理が少し違って見えてくる。産地のバトンが北海道へ渡るこれからの季節、煮ても焼いても無駄になりにくいビタミンCを、心置きなく味わいたい。
栄養素の摂取量の基準は日本人の食事摂取基準を参照。本文の数値は日本食品標準成分表(八訂)の実測値に基づきます。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。