6月16日は「和菓子の日」。平安時代の仁明天皇が嘉祥元年(848年)のこの日、16個の菓子や餅を神前に供えて疫病退散を祈り、民にも菓子を賜ったという故事に由来する。以来、江戸時代には「嘉祥菓子」と呼ばれる菓子を配る風習が武家社会に広まり、明治に入って一度は途絶えたものの、昭和54年に全国和菓子協会が6月16日を「和菓子の日」として復活させた。晴れの日に菓子を贈り、無病息災を願う——その精神は千年以上をかけて現代の茶席や贈り物の文化へと受け継がれてきた。

脂質という視点で見ると、和菓子の輪郭が変わる

「甘いものは太る」という言葉は、洋菓子と和菓子を同じかごに入れがちです。しかし数値を並べると、その印象は大きく揺らぎます。

ただし注意したいのは、和菓子は脂質こそ低いものの、主成分は糖質・砂糖であり、エネルギーの大半は炭水化物から来ているという点です。血糖値や糖質の管理が必要な方は、食べる量に注意が必要です。

和菓子の日の定番として真っ先に思い浮かぶのがくずまんじゅう(こしあん入り)。夏の涼を閉じ込めたような透き通った皮に、なめらかなあんが包まれたこの菓子は、脂質がわずか0.2gしかありません。エネルギーは100gあたり216kcalですが、その大半は炭水化物からきており、脂質の寄与はほとんどありません。食物繊維は100gあたり2.2gです。

同じく夏の贈り物として喜ばれる水ようかん(1個75g)は、1個あたりのエネルギーが約126kcalです。脂質は100gあたり0.2gで、1個に換算すると0.15g程度にとどまります。食物繊維は100gあたり2.2gです。口に溶ける冷たい甘さの正体は、ほぼ炭水化物だけで成り立っています。

濃密な甘さが特徴の練りようかんは100gあたり289kcalと少し高めです。それでも脂質は0.2gと変わりません。食物繊維は3.1gと水ようかんの2.2gを上回っており、凝縮された分だけ繊維の密度も高くなります。ただし炭水化物は100gあたり約70gと非常に多く、糖質が多いため、血糖値が気になる方や糖尿病の方は一度に食べる量に注意が必要です。

お花見や夏祭りの屋台でおなじみのくし団子(あん・つぶしあん入り)は、脂質は0.5g程度です。和菓子のなかでは比較的高いものの、それでも洋菓子と比べると際立って低い水準です。

くずもち(関東風・小麦でんぷん製品)にいたっては、脂質0.1g、食物繊維もゼロ。ほぼ純粋なでんぷんと水でできた、素朴な菓子の極致といえます。エネルギーは100gあたり94kcalと、今回取り上げた菓子のなかで最も低い水準です。

卵と小麦をたっぷり使うどら焼き(つぶしあん入り)は、脂質3.2gと他の和菓子に比べると一段高い水準です。それでも洋菓子のショートケーキなどと比較すれば低い部類に入ります。生地に卵を使う分、たんぱく質も100gあたり6.6g(推奨量50gに対し13%相当)と、和菓子のなかでは最も多い水準です。食物繊維は100gあたり1.9gとなっています。

あんの正体——豆の繊維とビタミンEが詰まっている

和菓子の甘さを支える縁の下の力持ちが、あずきを炊いて砂糖で練り上げた「あん」です。こし練りあん(並あん)を見ると、脂質は100gあたり0.3gで一連の菓子と同水準です。ところが食物繊維は3.9gと、今回取り上げた菓子(くずまんじゅう・水ようかん・練りようかん・どら焼きなど)のなかで最も高い値です。大さじ1杯(約20g)でも0.78g程度の食物繊維を含む計算になります。

さらにδ-トコフェロールが100gあたり2.2mg含まれる点も注目したいところです。δ-トコフェロールはビタミンEの一種で、体内の脂質の過酸化を阻止し、細胞膜の機能維持に関わるとされます。大さじ1杯では約0.44mg(20g換算の目安量)にとどまるため、一度の量としては控えめですが、日々の食事のなかであんを口にするたびに、わずかずつ積み重なっていきます。なお、あんの食物繊維やビタミンEはあくまで補助的な栄養素であり、野菜・豆類・全粒穀物など他の食品からもバランスよく摂ることが大切です。

晴れの日の菓子選び

「食事バランスガイド」では、菓子や嗜好飲料の目安を1日200kcalとしています。この基準で考えると、水ようかん1個(約75g・約126kcal)やくずまんじゅうひとつ(目安約60g・約130kcal)なら、晴れの日の一服として概ね目安の範囲に収まります。ただし、この目安は成人一般の参考値であり、糖尿病や血糖値管理が必要な方、腎疾患・肥満・妊娠糖尿病など医療機関で食事指導を受けている方は、かかりつけ医・管理栄養士の指示に従ってください。

6月16日に合わせて、涼やかな夏越し気分にはくずまんじゅうや水ようかんを、濃いめのお茶とともにゆっくりと。贈り物には個包装の練りようかんや風呂敷包みのどら焼きを選ぶのもいいでしょう。大粒で煮ても皮が破れない大納言小豆を使ったつぶあんの菓子なら、豆の形が残った食感とともに食物繊維もそのままいただけます。

数値が裏づける、先人の選択

晴れの日に和菓子を贈る風習は、平安の疫病祈願から千年をかけて現代に届きました。その和菓子を脂質という数値の面から見直すと、多くが脂質をほとんど持たず、あんには食物繊維やビタミンEも含まれていることが分かります。甘いものとひとくくりにせず、成分の輪郭を知ったうえで、晴れの日の一服として楽しみたいものです。

※栄養素の数値は日本食品標準成分表(八訂)に基づきます。摂取量の目安は日本人の食事摂取基準を参考にしています。くし団子(あん・つぶしあん入り)の数値は成分表に個別収録がないため参考値です。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準文部科学省 食品成分データベース

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。