同じ「和牛」でも、もも赤身とリブロース赤身では、100gあたりのたんぱく質が21.3gと14.0gと7g以上の差がある。一方でエネルギーは176kcalと395kcalとほぼ2倍以上の開きになる。部位の選び方ひとつで、食卓に乗る脂とたんぱく質の量はがらりと変わる。ステーキを選ぶとき、すき焼き用の肉を選ぶとき、その違いを数字で知っておくと、目的に合った食べ方がしやすくなる。
赤身と脂身は、別の食品と思うくらい中身が違う
まず押さえておきたいのは、「赤身」と「脂身」は同じ部位でも成分がほぼ別物だということだ。たとえば和牛かた脂身は、100gあたりのエネルギーが692kcalで脂質が78g。同じかたロースの和牛かたロース赤肉(たんぱく質16.5g、脂質26.1g、293kcal)と比べると、脂身は脂質が約3倍(78gと26.1g)あり、たんぱく質はわずか4gにとどまる。脂身つきの肉を食べるときは、サシや周囲の白い部分がエネルギーを一気に押し上げていることを念頭に置くといい。
和牛もも脂身も同様で、脂質75.4g・664kcalに対してたんぱく質は4.4gにすぎない。肉は水分が主成分で、100gの肉がそのままたんぱく質100gになるわけではない。この前提に立つと、脂身の多い部位ではたんぱく質の「密度」が著しく低いことがよく分かる。
部位別・赤身の実力差を読む
赤身だけで比較しても、部位ごとの差は大きい。
- もも赤身(和牛もも赤肉):たんぱく質21.3g、脂質10.7g、176kcal。今回取り上げた赤身部位のなかで最もたんぱく質が多く、脂質が最も少ない。薄切り1枚(約50g)でたんぱく質は約10.7g摂れる計算になる。亜鉛も100gあたり4.5mg含まれる。
- ヒレ赤身(和牛ヒレ赤肉):たんぱく質19.1g、脂質15g、207kcal。ステーキの定番として人気の部位で、もも赤身よりやや脂質は多いが赤身として十分に引き締まった数値。目安として厚切り1枚(約150g)ではたんぱく質が約28.7gになる。
- かたロース赤身(和牛かたロース赤肉):たんぱく質16.5g、脂質26.1g、293kcal。ロース系でも赤身部分に絞ればたんぱく質はある程度確保できるが、もも赤身と比べると脂質はおよそ2.4倍(26.1gと10.7g)になる。薄切り1枚(かたロース赤身約60gを食べた場合の目安)のエネルギーは約176kcal。
- リブロース赤身(和牛リブロース赤肉):たんぱく質14.0g、脂質40.0g、395kcal。赤身部分だけを取り出しても脂質は40gに達し、エネルギーも突出して高い。薄切り1枚(約50g)で197kcalになる。和牛のなかでも特に霜降りになりやすい部位で、赤身とはいえ脂の多さが数値に表れている。
亜鉛という「おまけ」の差にも注目
赤身部位の数値で目を引くのが亜鉛だ。かたロース赤身は100gあたり5.6mgで、日本人の食事摂取基準の女性(30〜49歳)の推奨量8mg/日の70%に相当する。もも赤身は4.5mg(同56%)。亜鉛は多くの酵素の成分で、味覚の維持やたんぱく質・核酸の代謝に関わるミネラルだ。なお、これらの割合は推奨量に対する数値であり、耐容上限量の基準ではない。亜鉛には耐容上限量が設定されているため、通常の食事として赤身肉を食べる範囲では過剰摂取を心配する必要はないが、サプリメントなどと重ねる場合は注意が必要だ。牛肉のような動物性食品に含まれる亜鉛は、植物性食品と比べて体内への吸収が比較的良好とされている。
脂身の「質」も一言だけ添えると
かたロース脂身(100gあたり一価不飽和脂肪酸43.38g)とリブロース赤身に豊富な一価不飽和脂肪酸は、食品からの摂取に加えて体内でも飽和脂肪酸から合成できる脂肪酸だ。一方、脂身に多い飽和脂肪酸については、体内でも合成できるが摂りすぎると高LDLコレステロール血症など循環器疾患の危険因子になると報告されている。霜降り部位をおいしく食べることと、食べる量・頻度のバランスを意識する材料として、数値を参照してほしい。
目的で部位を選ぶ、という発想
赤身の部位を選べば、たんぱく質を効率よく摂りながらエネルギーを抑えられることが数値の上でも確認できる。たんぱく質を効率よく摂りたいときはもも赤身やヒレ赤身、風味やコクを楽しみたいときはかたロース赤身やリブロース赤身、という使い分けが数字の上でも筋が通っている。スーパーで「赤身」と書かれた部位に目が止まったとき、今日ここで確認した数値の差を思い出してほしい。部位の選択が、意外なほど食事の中身を変える。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・文部科学省 食品成分データベース・消費者庁