著者の所属・活動拠点の国は、トーゴです。

掲載誌:World Journal of Advanced Research and Reviews

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

ナイルティラピアは世界各地で養殖されている淡水魚で、研究の舞台となったトーゴでも人気の高い魚です。トーゴでは魚の需要に国内生産が追いつかず、多くを輸入に頼っています。著者らによると、この魚は25〜30℃ほどの水温でよく育つとされますが、気候変動で水温が上がった場合に成長がどう変わるかを調べたデータは少ないといいます。

そこで研究チームは、水温を高めに保ったときにナイルティラピアの稚魚の成長や生存がどう変わるかを実験で確かめ、養殖の方法の改善に役立てることを目指しました。

どのように調べたか

実験はトーゴ北部のカラ大学の養殖実験施設で、2024年4月15日から6月15日までの2か月間行われました。使われたのは平均体重3.3グラムのオスだけをそろえた稚魚です。10日間新しい環境に慣らした後、35リットルの水を入れた水槽に20匹ずつ分けました。

水温の条件は、加温しない室温のままの水、32℃、34℃の3通りで、それぞれ3つの水槽を用意しました。室温の水槽の水温は平均で約29.8℃でした。魚には粗タンパク質を33%含む市販の飼料を1日3回与え、毎週体重を測りました。

比べた指標は、体重の増え方、1日あたりの体重増加、生き残った割合(生存率)、飼料要求率です。飼料要求率は、体重を1グラム増やすのに必要な餌の量を表す数値で、低いほど餌が効率よく体重増加につながったことを意味します。

主な結果

実験終了時の平均体重は、室温の区で約15.1グラム、32℃の区で約13.8グラム、34℃の区で約11.5グラムでした。最初の1週間は3つの区の成長に差がありませんでしたが、その後は室温、32℃、34℃の順に成長が良く、最終的な体重には統計的に意味のある差がみられました。1日あたりの体重増加も、それぞれ0.14グラム、0.12グラム、0.10グラムと、水温が高いほど小さくなりました。

生存率は室温と32℃の区ではともに100%でしたが、34℃の区では85%に下がりました。飼料要求率は室温の区で2.01、32℃の区で2.10と近い値だったのに対し、34℃の区では2.75と高く、餌が体重増加に結びつきにくくなっていました。

著者らは、34℃での成長の低下や死亡の背景として、高温によるストレスを挙げています。高温では魚が餌のエネルギーを成長ではなく暑さへの対応に使ってしまう可能性があるとしています。また、停電などで水中の酸素が不足した時期があり、酸素不足や測定時の取り扱いによるストレスも生存や成長に影響したと考察しています。

研究が示すこと

この研究は、ナイルティラピアの稚魚にとって室温または32℃の水が成長、生存、餌の利用効率の面で好ましく、34℃まで上がるとこれらが低下したことを報告しています。著者らは、養殖では水温を最高でも32℃程度に保つことが重要だと結論づけ、気候変動の影響を抑えるための工夫が養殖に求められると述べています。

著者:Amakoé Adjanke(Department of Animal Health and Fishery Production , Higher Institute of Agricultural Professions , University of Kara , Togo)、Ali Kpatcha Kadanga(Department of Animal Health and Fishery Production , Higher Institute of Agricultural Professions , University of Kara , Togo)、Hilaire Nimombé DJALA(Department of Animal Health and Fishery Production , Higher Institute of Agricultural Professions , University of Kara , Togo)、Atti Tchabi(Department of Sustainable Plant Production , Higher Institute of Agricultural Trades , University of Kara , Togo)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amakoé Adjanke, Ali Kpatcha Kadanga, Hilaire Nimombé DJALA, et al. EFFECT OF TEMPERATURE ON GROWTH PARAMETERS OF NILE TILAPIA. World Journal of Advanced Research and Reviews 2026-10-05. DOI: 10.30574/wjarr.2026.32.1.2538. 原著ライセンス:CC BY.