「青魚を食べているから大丈夫」——そう思っていたとしたら、少し視点を変えてみてほしい。さんま・さば・いわし・あじ・にしん、どれも「青魚」と呼ばれるが、EPAやDHAを含むn-3系多価不飽和脂肪酸の含有量は、魚種によってはっきりと差がある。調理法の前に、まず「どの魚を選ぶか」が大きく影響するのだ。

n-3系多価不飽和脂肪酸とは、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を代表とする脂肪酸で、体内ではほとんど合成できないため、食品から摂ることが基本となる。日本人の食事摂取基準では、女性30〜49歳のn-3系多価不飽和脂肪酸の1日目安量を1.7gとしている。

n-3系が多い3魚種、数字で見る差

今回の5魚種のうち、データ上でn-3系が「特に多い栄養素」として挙がるのは3種。もっとも多いさんま(皮つき・生)は100gあたり5.59g、1日目安量の329%に相当する。脂質全体も100gあたり25.6gと多く、エネルギーは287kcalになる。

まいわし(生干し)は100gあたり3.12g(目安量の184%)。さんま(5.59g)はまいわし生干し(3.12g)の約1.8倍にあたる。ただし、まいわし生干しは生のまいわしを乾燥させた加工品で、脱水によって100g当たりのn-3含有量が生の状態より濃縮されている。他の4魚種はすべて「生」のデータであるため、数値を直接比べる際には加工条件の違いを念頭に置きたい。あわせて気になるのが食塩相当量で、100gあたり1.8gは女性30〜49歳の1日目標量(上限)6.5gの28%に相当する。生干しならではの塩気がある分、食べる量には少し意識を向けたい。

にしん(生)は100gあたり2.13g(目安量の125%)。さんまはにしんの約2.6倍にあたる(さんま5.59g・にしん2.13g)。3種のなかでは最も少ない数値だが、それでも1日目安量を上回る量を含んでいる。

別の強みを持つ2種——ごまさばとまあじ

ごまさば(生)のn-3系は100gあたり1.21g(目安量の71%)。「特に多い栄養素」の上位には入らないが、「さば=n-3豊富」のイメージ通り、1食で目安量の7割近くを摂れる量だ。ごまさばで特に目立つのはたんぱく質の多さで、100gあたり23gは今回の5魚種のなかで最も多い。脂質は5.1g、エネルギーは131kcalと、さんま(287kcal)の半分以下に収まる。たんぱく質を効率よく摂りたいとき、エネルギーを抑えたいときの選択肢になる。

まあじ(皮つき・生)のn-3系は100gあたり1.05g(目安量の62%)。5魚種のなかでは最も少ないが、1食で目安量の6割強を含む。脂質4.5g・エネルギー112kcalは5魚種のなかで最も低く、淡白な食べごたえになる。

目的に合わせた選び方

  • n-3系(EPA・DHA)を重視するなら——さんま・まいわし(生干し)・にしん。このなかでさんまはn-3系5.59gともっとも多いが、脂質・エネルギーも高め。まいわし(生干し)は乾燥加工品のため数値が生より濃縮されており、塩分も念頭に置きたい。
  • たんぱく質重視でエネルギーを抑えたいなら——ごまさばとまあじ。どちらにもn-3系は含まれており(ごまさば1.21g・まあじ1.05g)、脂質は低く、ごまさばはたんぱく質23g(5種中最多)、まあじはエネルギー112kcal(5種中最低)。

「青魚だから全部同じ」ではなく、今日は何を補いたいかを一歩考えてから選ぶ——その視点のずらしが、食卓をより実用的なものにする。n-3系を意識するならさんまやまいわし(生干し)を、たんぱく質を軸にしたいならごまさばやまあじを。鮮魚コーナーに並ぶ魚を眺めながら、頭の片隅に数字のイメージを持っておくだけで、選び方は変わる。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。