7月上旬の魚売り場を眺めると、透き通った身にツヤをたたえたするめいか 生が並び始めている。旬の最盛期は8〜10月ごろで、産地としては青森県、北海道、長崎県などが知られる。つまり今はまだ「走り」の時期にあたるが、その澄んだ目と透明感のある身を見れば、夏の入り口にふさわしい一杯だとわかる。
栄養成分表を開くと、真っ先に目を引く数字がある。可食部100gあたりコレステロール250mg。「多い」と身構えたくなる数字だが、慌てて敬遠する前に知っておきたい事実がある。食品から摂取するコレステロールの量と、血液中のコレステロール値との間には強い関係がないとされているのだ。むしろ血中コレステロール値を上げやすいのは、エネルギーや飽和脂肪酸をとり過ぎたときで、そうすると肝臓での合成が増えるとされる。するめいかは100gあたり76kcal、脂質はわずか0.8gと、もともと低エネルギー・低脂質の食材だ。数字の大きさだけを見て遠ざけるのは、少しもったいない話かもしれない。
「多い」の中身を見てみる
そもそもコレステロールとは何者か。細胞膜をつくる材料であり、性ホルモンや副腎皮質ホルモン、胆汁酸などの材料にもなる脂質で、体内でも合成されている。いわば体の部品づくりに欠かせない存在であり、するめいかの数値の大きさは「危険信号」ではなく「体づくりの材料が濃縮されている」と捉えたほうが実態に近い。
もう一つ、するめいかで際立つのがセレンだ。100gあたり41µgで、女性30〜49歳の推奨量25µg/日の164%にあたる。ただしこれは推奨量に対する割合であり、耐容上限量を基準にした数字ではない。セレンには耐容上限量が設定されているが、一食分(するめいか1ぱい=200gが目安)を食べる程度であれば通常は心配のいらない量だ。セレンは抗酸化に関わる酵素の成分であり、地味だが体の中で働き続ける栄養素である。詳しい年齢・性別ごとの数値は日本人の食事摂取基準で確認できる。たんぱく質も17.9gと、女性30〜49歳の推奨量50g/日の36%を占め、低カロリーながら中身の詰まった一杯だとわかる。
選び方と、夏らしい食べ方
店先で選ぶなら、身にツヤがあり色が透き通ったもの、くすんでいないものを。目が澄んで飛び出しているものも良い状態のサインとされる。するめいか1ぱいはおよそ200gが目安で、刺身や鮨で味わえば、いか特有の甘みがそのまま楽しめる。さっと湯通しして酢味噌で和えたり、焼きいかにして塩でシンプルに食べたりと、素材の味を生かす調理がよく似合う。なお、いかは食物アレルギーを起こしやすいとされる特定原材料に準ずる食品でもあるため、初めて食べる子どもなどには少量から試すと安心だ。
まとめ
するめいかのコレステロール250mgという数字は、警戒のサインではなく、低エネルギー・低脂質という土台の上に立つ「材料の豊富さ」の表れだった。数字の大きさだけで避けるのではなく、旬の走りを迎えたこの一杯を、まずは味わってみてほしい。最盛期の8〜10月には、旬の盛りを迎えたするめいかにまた出会えるはずだ。その時季の一杯を味わえる日が、今から楽しみになる。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・e-ヘルスネット「HDLコレステロール」(厚生労働省)・e-ヘルスネット「LDLコレステロール」(厚生労働省)・e-ヘルスネット「コレステロール」(厚生労働省)
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。