六月も下旬に差しかかると、店先の新じゃがいもは最盛期をやや過ぎ、名残りの気配をまとい始める。それでも今週の八百屋やスーパーにまだ並んでいる皮つきのじゃがいもは、秋冬のじゃがいもとは別物の顔をしている。皮が薄くて指の腹でこすれば面白いようにむけ、土の香りが立ち、切り口の白さが眩しい。この「薄い皮」こそが、今の新じゃがをわざわざ選ぶ一番の理由だ。

通常のじゃがいもは貯蔵中に皮が厚く固まっていく。けれど掘りたての新じゃがは皮がまだ薄く、ゴシゴシと洗うだけで料理に使える。だから皮ごと蒸したり、丸ごとゆでたりする食べ方が、この時期だけ自然に成立する。栄養の話をするなら、ここに意味がある。

皮つき生100gあたり、食物繊維9.8g(加熱後は変動)

日本食品標準成分表(八訂)の実測値によると、皮つきのじゃがいもを生で計った場合、可食部100gあたりの食物繊維総量は9.8gにのぼる。中1個の可食部(皮つき・生)を約150gとすると、生の成分値をもとにした計算では約14.7gという数字が出る(成分表に新じゃがいもとしての個別収録はないため、一般的なじゃがいもの皮つきの値で見ている)。ただしこの数値は生・未加熱の状態での計算値であり、蒸す・ゆでるなどの加熱調理後は重量・含量ともに変化するため、調理後の実際の摂取量をこの数字から直接読み取ることはできない点に注意が必要だ。

皮なしのじゃがいもと比べてこの数値が高く見えるのは、皮の周辺に食物繊維が集中しているためだ。皮をむいてしまうと、その食物繊維も一緒に取り除くことになる。秋冬の厚い皮なら事情が違ったかもしれないが、今の新じゃがなら洗うだけで皮ごと調理できる——これが旬にしか使えない選択肢だ。

食物繊維は消化されずに腸まで届き、腸内環境を整えるとされる成分だ。日本人の食事摂取基準(2025年版)では、食物繊維の目標量は性別・年齢によって異なり、成人女性(18〜74歳)では18g/日、成人男性では年齢によって20〜22g/日が目標とされている。現代の食生活で不足しがちな栄養素のひとつに挙げられており、生の計算値をそのまま摂取量に置き換えることはできないものの、皮ごとのじゃがいもを一食に取り入れることは、この目標量を意識した食選びの一つになりうる。
※特定の食品の効果を示すものではありません。

ひとつだけ、外してはいけない場所がある

皮ごと食べると聞いて、少し気になる人もいるだろう。じゃがいもの芽や、光に当たって緑色になった部分には、ソラニン・チャコニンと呼ばれる成分が多く含まれるとされており、これらは加熱しても分解されない。新じゃがだからといって例外ではないので、芽と緑色の部分だけはしっかり取り除いてから使うことが大切だ。未熟な小型のいもを大量に食べることも避けたほうがよい。その二点を守ることが、皮ごと食べるための基本となる。また、じゃがいもにはカリウムが多く含まれており(皮ごとでは特にその量が増える)、腎機能に心配のある場合はかかりつけの医師または管理栄養士に相談されたい。

シンプルな調理が、今の新じゃがには似合う

旬の素材を生かす調理は、引き算で考えると早い。蒸し器で20分ほど蒸した新じゃがに塩と少量のバターをのせるだけで、ほくほくした甘みと皮の風味が重なって、それだけで食卓が成立する。ゆでるなら水からじっくり火を入れると皮が割れにくく、皮の食感もきれいに残る。丸ごとのまま皮を生かす調理法は、余計に手を加えないほうが新じゃがらしさが際立つ。

素朴な食べ方のほかに、皮ごと縦に割ってオーブンで焼くローストも相性がいい。切り口はカリッと、内側はしっとりした対比が楽しく、オリーブオイルとローズマリーを合わせれば夏の食卓にも映える一皿になる。

名残りとはいえ、今週まだ手が伸びていないなら、今が最後の機会になるかもしれない。皮が薄く、洗うだけで使える新じゃがの季節は、もう少しで終わりを迎える。1個、丸ごと蒸してみるだけでいい。皮ごと口に入れた瞬間、なぜ「今年も新じゃがの季節が来た」と人が言いたくなるのか、きっとわかる。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準/食物繊維の成分値(9.8g/100g)は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」に基づきます。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。