著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシア東部・中部マルク県の公立小学校SD Negeri 294で、子どもたちが栄養についてどう理解し、デジタルの情報にどう接しているかを調べた研究です。研究チームは、地域の食文化を取り入れた双方向型の電子教材(e-モジュール)「BETA DOKCIL」の開発を計画しており、この論文はその最初の段階にあたる「ニーズ分析」、つまり教材を作る前に利用者の状況や求めているものを把握する調査の報告です。
著者らは、研究地域が島しょ部の沿岸地域で、栄養価の低い加工食品が広く食べられていること、また健康教育の内容に地域の知恵や文化が十分に生かされず、子どもにとってなじみの薄いものになりがちなことを課題として挙げています。学校では、子ども自身が仲間に健康習慣を伝える「ドクター・クチル(小さなお医者さん)」と呼ばれる保健係の活動がありますが、教材が標語やポスター、印刷物中心で、魚やサゴ(サゴヤシのでんぷん)、イモ類など地元の豊かな食材とも結びついていない点が指摘されています。
研究では、栄養に関する情報を手に入れ、見分け、正しく使う力を「栄養リテラシー」と呼び、とくにデジタルメディアを通じたその力を「デジタル栄養リテラシー」として扱っています。
調査の方法
調査は2026年9月に行われ、4〜6年生の児童69人と、学校保健活動の担当教員、学級担任が対象となりました。研究チームはアンケート、聞き取り、観察を組み合わせ、アンケートは回答の割合を集計し、聞き取りの内容は整理・要約して結論を導く質的な方法で分析しています。
アンケートでは、デジタル機器を使える環境、好む学習教材、栄養の理解と地元の食材を学習に取り入れることへの受け止め方、ソーシャルメディア上の食の情報への接し方、そして保健係への関心と新しい教材への賛否が尋ねられました。
主な結果
デジタル機器については、82.6%の児童が自分専用の機器を持ち、13.04%は保護者の機器を使っていると回答しました。毎日のように使う児童は60.8%でした。一方、聞き取りと観察からは、学校には機器の持ち込みが認められておらず、家庭での使用も保護者の見守りのもとで行われていることが分かりました。学校にはインターネットにつながった電子黒板があり、画像や音声、動画、クイズを使えるといいます。好きな学び方としては、動きや音、クイズのある映像教材を選んだ児童が57.9%で最も多く、紙の教科書が39.1%、先生の説明を聞くことは2.8%でした。著者らはこの傾向を、具体的なものや目に見える形を通して理解する時期とされるピアジェの「具体的操作期」の特徴と一致すると論じています。
栄養の理解については、「少し分かる」が56.5%で最も多く、「よく分かる」は28.9%、「まったく分からない」は14.4%でした。それでも、サゴや魚、モリンガ(ワサビノキの葉)といったマルクの食材を例に栄養を学ぶことには、72.4%が「とても好き」と答えています。また65.2%の児童が、地元の主食を使った弁当をよく家から持ってきていると回答しました。
デジタル上の情報との付き合い方では、TikTokやYouTube、WhatsAppなどで話題の食べ物・飲み物の情報をよく目にする児童が75.3%にのぼり、そうした情報を「すぐに信じる」と答えた児童は55.07%でした。信じないと答えたのは8.69%にとどまり、研究チームはこれを、デジタル栄養リテラシーが低い状態を示すものと捉えています。
さらに、保健係「小さなお医者さん」になりたいと答えた児童は69.2%で、計画中の電子教材の開発に賛成した児童は44.9%でした。
結果が示すこと
著者らは、デジタル機器が身近で映像やクイズのある教材が好まれていること、栄養の理解はまだ十分でないこと、地元の食材を使った学習が受け入れられていること、ネット上の食の情報をそのまま信じやすいことを踏まえ、地域の文化を生かした双方向型電子教材の開発が必要だと結論づけています。教材の仕様としては、地域の文化を教育に取り入れる考え方(エスノペダゴジー)、双方向で使える機能、そしてネットで見かける食べ物やおやつを批判的に選ぶための手引きを組み込むことが提案されています。
また、保健係になりたいという児童が半数を超えたことは、学校保健活動を立て直す足がかりになると著者らは述べています。この研究は教材の効果を確かめたものではなく、子どもたちの現状と要望を明らかにした出発点の調査です。郷土の食とデジタル学習を結びつけるという方向性が、現場の子どもたちの実態に根ざしていることを示した点に、この報告の意味があります。
原著論文の著者・所属:Riswanti, Nova(Universitas Pattimura)、Abiy Riestanti(Universitas Pattimura)、Lita Umiputriani Gai(Universitas Pattimura)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Riswanti, Nova, Abiy Riestanti, Lita Umiputriani Gai. ANALISIS KEBUTUHAN E-MODUL INTERAKTIF BERBASIS BUDAYA LOKAL UNTUK MENINGKATAN LITERASI GIZI DIGITAL SISWA SD. Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar 2026-09-24. DOI: 10.23969/jp.v11i03.68455. 原著ライセンス:CC BY.