掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

Prosopis africana(英語でメスキートと呼ばれるマメ科植物の一種)の種子は、ナイジェリアの多くの地域で手に入りますが、よく知られた作物と比べると利用が進んでいません。この種子は加熱や発酵などの加工を経て、「オクペイェ(Okpeye)」と呼ばれる伝統的な発酵調味料などに使われてきました。

ただし、伝統的な発酵は地域や家庭ごとに異なる条件で行われ、発酵時間、温度、種子の砕き方などが一定ではありません。そのため、発酵の進み方や仕上がりにばらつきが生じます。研究チームは、より安定した生産につなげるには、こうした条件と発酵の結果との関係を数値で示す必要があると考えました。

そこで著者らは、発酵時間、温度、粒子の大きさ(粒径)という三つの調整可能な条件に注目し、発酵中の窒素の変化を示す指標「窒素発生(nitrogen evolution)」との関係を数式モデルで表すことを目指しました。さらに、調べた条件の範囲内で、この指標が最も高くなると予測される条件の組み合わせを探しました。

どのように調べたか

研究チームは、ナイジェリア・エヌグ州ンスッカ地方の市場で購入した成熟種子を用いました。種子を4時間煮た後に外皮を除き、35℃のオーブンで乾燥させ、ミキサーで砕いてふるいにかけ、250〜1200マイクロメートルの5段階の粒径にそろえました。

各粒径の試料50グラムを布に包み、25℃から45℃までの5段階の温度に設定した発酵室で最長120時間発酵させ、24時間ごとに測定しました。窒素量は、食品のたんぱく質や窒素の分析に広く使われるケルダール法で求め、その値を発酵の結果を表す指標としました。

条件の組み合わせを決め、結果を解析するために使われたのが応答曲面法です。これは、複数の条件を同時に変えて実験し、それぞれの影響だけでなく条件どうしの組み合わせによる影響も数式で表す統計的な手法です。一つの条件を変えると別の条件の効き方が変わることがある発酵には、こうした手法が役立つと著者らは説明しています。本研究では、三つの条件を組み合わせた20通りの実験を設計し、二次式のモデルを当てはめました。

主な結果

実験データでは、発酵時間が長いほど、また温度が高いほど窒素発生の値が増え、粒径が大きくなるほど値は全体に下がる傾向が見られました。たとえば45℃で24時間発酵させた場合、値は粒径250マイクロメートルで0.37、1200マイクロメートルで0.26でした。45℃・120時間では、同じ粒径の範囲で0.97から0.76でした。

当てはめたモデルは統計的に有意で、窒素発生のばらつきの99.28%を説明できると報告されています(決定係数R²=0.9928)。新しいデータに対する予測の当てはまりを示す予測R²も0.9456と高い値でした。

発酵時間、温度、粒径はいずれも結果に有意な影響を与えていました。さらに、時間と温度の組み合わせ、時間と粒径の組み合わせにも有意な影響が見られました。つまり、温度を上げる効果や粒子を細かくする効果は、発酵がどの段階にあるかによって変わることが示されました。一方、温度と粒径の組み合わせの影響は有意ではありませんでした。

モデルを使った計算の結果、調べた範囲内で窒素発生が最も高くなると予測された条件は、発酵時間113.6時間、温度44.33℃、粒径313.33マイクロメートルで、このときの予測値は0.915%でした。三つの値はいずれも実験した範囲の内側にあり、試していない条件の外側へ当てはめた予測ではないと著者らは述べています。

研究が示すこと

この研究は、発酵時間、温度、粒径を別々に考えるのではなく、組み合わせて調整することで発酵の結果を制御できることを示しました。経験に頼ることの多かった伝統的な発酵を、測定・比較・再現が可能な条件へ近づけるための、定量的な出発点になると著者らは位置づけています。

一方で著者らは、示された最適条件はモデルによる予測値であり、独立した実験で確かめる必要があると強調しています。また、窒素発生は製品の品質全体を表す指標ではなく、この値が高いことが風味、微生物面の安全性、栄養、保存性のすべてが最良であることを意味するわけではないとも述べています。この研究の最適条件は、あくまで調べた範囲内で窒素発生の予測値を最大にする条件として示されたものです。

著者:Onyeabo Uzoamaka Agatha、Dr. Malachy. O.Ugwuoke、Okika Stephen Sunday、Kingsley I. Chibueze、C.O. Ugwoke、Emeka Augustine Chinachi

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Onyeabo Uzoamaka Agatha, Dr. Malachy. O.Ugwuoke, Okika Stephen Sunday, et al. Response Surface Optimization of Fermentation Conditions for Mesquite Seed (Prosopis Africana) Based on Nitrogen Evolution. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-09-17. DOI: 10.5281/zenodo.22808225. 原著ライセンス:CC BY.