6月に入ると、北海道・礼文島や利尻島の沖合では生うに(エゾバフンウニ)の漁が動き始め、走りの季節を迎える。礼文・利尻のバフンウニは身の色が濃いオレンジで、甘みの奥に磯らしいコクがある。まだ流通量の少ない6月上旬のうには、産地近くの鮮魚店や通販に並ぶだけで、その年最初の旬の訪れを告げる存在だ。

「贅沢品」の代名詞として語られることの多いうにだが、栄養の面でも一つ、意外な顔を持っている。それが葉酸だ。なお、日本食品標準成分表(八訂)にはエゾバフンウニの個別データが収録されていないため、以下では一般的な「うに 生うに」の実測値を参照している。

100gあたり360µg──葉酸の密度が高い食材

葉酸は、ビタミンB群の一つ。細胞が分裂・増殖するときにDNAを複製する過程に欠かせない水溶性のビタミンで、日本人の食事摂取基準でも成人の推奨量が設定されている。細胞の新陳代謝や成長を支える基盤として位置づけられており、普段の食事でどれだけ摂れているかを意識する機会は少ないかもしれない。だからこそ、うにという食材の中にこの葉酸が多く含まれているという事実は、少し意外に思えるはずだ。

うに(生うに)の葉酸含有量は100gあたり360µg。これは女性(30〜49歳)の1日の推奨量240µg/日に対して150%にあたる値だ。100gあたりの密度としては高いが、うにを一度に100g食べる機会は多くない食材でもある。丼のトッピングや刺身盛りとして食べるなら約30〜50gが一般的な目安量で、その範囲で概算すると葉酸は約108〜180µg──推奨量の45〜75%程度になる。少量でも葉酸を効率よく摂れる食材として、100gあたりの密度の高さが際立っている。

走りのうには、そのままがいちばん

走りのうには、余計な手を加えない食べ方がよく似合う。炊きたての白いご飯の上にそっと盛ったうに丼は、磯の甘みとコクをそのまま楽しめる食べ方の一つ。醤油を数滴垂らすだけで十分で、わさびを少量添えてもよい。シンプルに食べるほど、走りならではの繊細な味が際立つ。

礼文・利尻産のエゾバフンウニは、産地直送の鮮魚店やふるさと納税の返礼品として取り寄せられるものが増えており、現地に足を運ばなくても旬の味を手元に届ける方法がある。冷奴や出し巻き卵に少量のせるだけでも、日常の食卓に季節感と彩りが加わる。少量でも色と香りの存在感は十分だ。うには鮮度が命なので、届いたその日か翌日には食べきるのが基本。走りの醍醐味は、産地から食卓への短い時間の中にある。

旬が深まる先に

礼文・利尻のバフンウニの漁は、6月の走りから始まり、夏が深まるにつれて本格化する。今の上旬はまだ数が少なく、価格もやや高め、だからこそ一口一口が際立つ。贅沢な一皿の中に葉酸360µgという密度の高さがある──そのことを小さな発見として持ち帰りながら、走りのうにを楽しんでほしい。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。