豆や豆製品は「たんぱく質が摂れる植物性食品」として広く親しまれている。確かにその通りだ。しかし、同じ大豆を原料としながら、食物繊維の量は食品によって大きく変わるという事実は、意外と見落とされがちである。そのまま食べられる状態どうしで比べてみよう。糸引き納豆の食物繊維は100gあたり9.5g、一方で絹ごし豆腐は100gあたり0.9g——どちらも調理せずそのまま口にできる状態の数値で、約10.6倍の開きがある。「豆製品ならどれも食物繊維がたっぷり」という前提は、成分表の数値が静かに崩してしまう。
製法の差が、繊維の差になる
なぜここまで差が開くのか。その答えは「製法」にある。
豆腐は、大豆から搾った豆乳を固めて作る。このとき、大豆の皮や細胞壁に含まれる食物繊維の多くはおから側に残り、豆乳には移りにくい。絹ごし豆腐は圧搾をせずそのまま固めるためなめらかで水分が多く、食物繊維総量は100gあたり0.9gにとどまる。木綿豆腐は豆乳を固めた後に圧搾して水分を抜くため、たんぱく質は100gあたり7.0gと絹ごし(5.3g)より多くなるが、食物繊維は1.1gと大きくは変わらない。製法の違いはたんぱく質量には影響しても、繊維量の差は製法以前の「豆乳化」の段階で生まれている。
対して蒸し大豆は、大豆をそのまま蒸したものだ。皮ごと丸ごと食べるため、食物繊維総量は100gあたり10.6gとなる。たんぱく質も16.6gと高く、一品でたんぱく質と食物繊維を同時に得やすい食品のひとつといえる。
発酵を経た糸引き納豆(食物繊維9.5g)も大豆をほぼ丸ごと使う点では蒸し大豆に近く、たんぱく質は16.5gある。1パック約40gで換算すると食物繊維は約3.8g、たんぱく質は約6.6gを摂れる計算になる。同じ大豆製品でも、皮ごと使うかどうかが繊維量を左右していることがよくわかる。
挽きわり納豆は大豆の皮を取り除いてから発酵させるため、食物繊維総量は100gあたり5.9gと糸引き納豆より少ない。皮の除去が繊維量に直接影響する好例だ。たんぱく質は16.6gと同水準を保つ。小パック約50gで食物繊維は約3.0g、たんぱく質は約8.3gほどになる。
豆製品の外に目を向ける——グリンピースという選択肢
大豆製品から少し離れると、グリンピースという存在がある。えんどうの種実用品種で、別名をむきえんどうという。ゆでたグリンピースの食物繊維総量は100gあたり8.6gで、うち不溶性食物繊維が7.7gと大部分を占める。たんぱく質も8.3gあり、豆腐と比べて食物繊維量の差は顕著で、「豆由来の食品」として見直す価値がある。
一品で両取りするなら、何をどう使うか
たんぱく質と食物繊維を一品から得たいとき、数値の視点で整理すると選択肢が絞れる。
- 蒸し大豆・糸引き納豆:食物繊維はそれぞれ10.6g・9.5g、たんぱく質はともに16g台と、高い水準で両立する。蒸し大豆はサラダや汁物の具に加えやすく、納豆はそのままご飯にかけるだけで手軽に摂れる。
- 挽きわり納豆:食物繊維は5.9gとやや少ないが、なめらかな食感でたんぱく質は16.6gと高水準。薬味やドレッシングに混ぜるなど使い方の幅がある。
- 木綿豆腐:食物繊維は1.1gと少ないが、圧搾によりたんぱく質は絹ごしより多い7.0g。食物繊維を他の食材(野菜・きのこ等)で補う前提で、たんぱく質源として使うのが合理的だ。
- グリンピース:食物繊維8.6g・たんぱく質8.3gと、野菜的な位置づけながら豆らしい充実した数値を持つ。炒め物や炊き込みご飯への一握りが手軽な取り入れ方だ。
日本人の食事摂取基準では、成人(30〜49歳)の場合、食物繊維の目標量は男性22g以上・女性18g以上、たんぱく質の推奨量は男性65g・女性50gとされている。これを一品だけで全量補うのは難しいが、「豆をどれにするか」という選択ひとつが、一日の合計数値を動かすことは確かだ。
まとめ——「どの豆か」を意識するだけで変わる
豆や豆製品は確かにたんぱく質の供給源だが、食物繊維量は製法によって大きく異なる。絹ごし豆腐の0.9gから蒸し大豆の10.6gまで、選ぶ食品によって摂取できる繊維量は変わってくる。今日の献立に豆が登場するとき、「どの豆か」をほんの少し意識してみる——それだけで食卓から得られる栄養の内訳は着実に変わってくる。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準