100gあたり115kcalと308kcal。どちらも天然のくろまぐろ、違うのは部位だけだ。脂質は1.4gと27.5g——約20倍の開きがある。「まぐろを食べるなら赤身」という感覚は数字で裏づけられるが、品種や天然・養殖の違いによっても、赤身の中身は大きく変わってくる。
赤身と脂身、エネルギーと脂質の差
くろまぐろ(天然)赤身は100gあたり115kcal、たんぱく質26.4g(日本人の食事摂取基準における女性30〜49歳の1日推奨量50gの53%)、脂質1.4g。よくイメージされるまぐろの赤身の姿に最も近い数字だ。
同じくろまぐろのくろまぐろ(天然)脂身は308kcal、たんぱく質20.1g(推奨量の40%)、脂質27.5g。エネルギーは赤身の約2.7倍(115kcal対308kcal)、脂質は約20倍(1.4g対27.5g)となる。
ただし、脂身の脂質がただ多いというわけでもない。そのなかに含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸(魚に多く含まれる種類の不飽和脂肪酸)は5.81g(女性30〜49歳の1日目安量1.7gの342%)、ビタミンDは18µg(目安量9µgの200%)と、脂身の特徴的な成分として記録されている。たんぱく質は赤身の26.4g(推奨量の53%)に対し脂身は20.1g(推奨量の40%)で、こちらにも部位による差がある。
「赤身」も一種類ではない——天然と養殖の差
くろまぐろ(養殖)赤身の脂質は100gあたり7.6g。天然赤身の1.4gと比べると約5倍(1.4g対7.6g)で、エネルギーも153kcalと天然赤身(115kcal)より3割ほど高い。たんぱく質は24.8g(推奨量の50%)と天然赤身に近い水準だが、脂質の量はかなり異なる。
養殖ものは飼育環境や給餌内容が天然とは異なるため、魚体の脂質量に違いが生じる。「赤身を選んだ」という事実だけでなく、天然か養殖かを合わせて確認すると、数字に即した選択がしやすくなる。
品種で比べるとどう変わるか
めばち(メバチマグロ)赤身は100gあたり115kcal、たんぱく質25.4g(推奨量の51%)、脂質2.3g。天然くろまぐろ赤身と同じエネルギーで、脂質はわずかに多い。きはだ(キハダマグロ)は102kcal、脂質1.0g、たんぱく質24.3g(推奨量の49%)と、今回の5品のなかでエネルギー・脂質ともに低い値が並ぶ。
品種間で差が顕著になるのがナイアシンだ。ナイアシンは食べたものをエネルギーに変える代謝に関わるビタミンB群の一つで、日本人の食事摂取基準では女性30〜49歳の1日推奨量が12mgとされている。今回の5品では、きはだが18mg(推奨量の150%)、めばちと養殖くろまぐろ赤身がともに15mg(125%)、天然くろまぐろ赤身が14mg(117%)、天然くろまぐろ脂身が9.8mg(82%)となっている。赤身品種が推奨量を上回るなか、脂身だけが推奨量を下回るという対比も、部位の違いが生む数字の一つだ。
数字を手がかりに選ぶ
今回の5品はいずれも100gあたりたんぱく質が20g超で、たんぱく質の多い食材群に入る。刺身1人前は一般に数十g程度が目安となるため、一食で100gをそのまま食べることは少ないが、食卓に乗せやすいたんぱく質源の一つといえる。
脂質を抑えたい食事では天然くろまぐろ赤身やきはだが選びやすい。脂身はn-3系の脂肪酸やビタミンDの値が高く、脂質の多さを踏まえたうえで取り入れる食材だ。めばちもきはだも、たんぱく質の量はくろまぐろ天然赤身に近い水準にある。品種・部位・天然か養殖かという三つの軸を意識すると、同じ「まぐろ」というラベルの裏にある数字の違いが、より具体的に見えてくる。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。