「腸活」や「免疫ケア」という言葉が身近になる中、食物繊維、特に消化されにくい多糖類が免疫の働きを支えるうえで重要だと考えられてきました。しかし多くの人でその摂取量は推奨レベルに届いていないのが実情です。こうした背景から、持続可能な多糖類の供給源として注目されているのが微細藻類です。今回紹介する研究では、食品にも利用されている微細藻類「ユーグレナ(Euglena gracilis)」に含まれるパラミロンというβ-1,3-グルカンの一種に着目し、日常的な食事に取り入れることで人の免疫機能や風邪のような症状にどのような関わりがあるのかを、無作為化比較試験によって検討しています。

研究でわかったこと

この研究は、健康な日本人成人200名を対象に行われた、無作為化・二重盲検・プラセボ対照試験です。参加者はユーグレナ(1日あたり1,000mg)を摂取するグループと、プラセボ(偽薬)を摂取するグループにランダムに割り付けられ、8週間にわたって摂取が続けられました。最終的に解析対象となったのは181名(ユーグレナ群91名、プラセボ群90名)でした。

主要な評価項目とされたのは、免疫細胞の一種である「形質細胞様樹状細胞(pDC)」という細胞の活性化に関わるマーカー(CD86)の変化です。8週間後の解析の結果、このマーカーの数値はプラセボ群よりもユーグレナ群で高く、統計的にも意味のある差(群間差0.7、95%信頼区間0.2〜1.1、P=0.004)が確認されました。

また、あらかじめ設定していた主要な項目以外の探索的な指標としては、血液中の単球(免疫に関わる細胞の一種)の割合がユーグレナ群で高い傾向にあったこと、さらに悪寒、倦怠感、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、頭痛といった風邪のような症状の発生率が、ユーグレナ群でプラセボ群より低かったことが報告されています。なお、この試験では有害事象は報告されず、血液検査や尿検査の値にも臨床的に意味のある変化はみられなかったとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、ユーグレナの摂取と免疫機能の指標や風邪様症状との関連を、無作為化比較試験というしっかりとした手法で検討した点に意義があります。ただし、風邪様症状の発生率の低下などは「探索的な副次的評価項目」として報告されたものであり、研究チームも「日常的なユーグレナの摂取は免疫機能を支え、風邪様症状の発生率低下と関連する可能性がある」と、断定ではなく可能性として結論づけています。一つの研究で得られた結果であり、これによって効果が確定したわけではない点には注意が必要です。

まとめ

今回の無作為化比較試験では、健康な成人がユーグレナを8週間日常的に摂取したグループで、免疫細胞の活性化マーカーの上昇や、風邪のような症状の発生率の低下がみられたことが報告されました。忍容性についても、有害事象の報告はなく、血液・尿検査値に大きな変化もなかったとされています。今後、こうした知見がさらなる研究によってどのように積み重ねられていくのか、注目される分野だといえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ユーグレナ(Euglena gracilis)を日常食に取り入れることで免疫機能が調整され、風邪様症状が軽減する:無作為化比較試験(ニュートリション・ジャーナル・2026年06月)