著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:World s Veterinary Journal

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究のねらい

ヤギ乳はタンパク質や脂質、ミネラルなどを含む栄養豊かな食品です。一方で、搾りたてのものは傷みやすく、独特の風味が苦手な人もいます。そこでインドネシアの研究チームは、加熱処理に加えて天然の素材を組み合わせ、ヤギ乳の加工品の品質を高める方法を検討しました。

素材として使ったのは、ロンタル果実(オウギヤシ、学名ボラッスス・フラベリフェルの実)です。抗酸化作用や抗菌作用をもつ可能性があるフラボノイドやフェノール類などを含むと知られており、ヤギ乳に加えると抗酸化活性が高まるという先行研究もあります。

さらに著者らは、砂糖(ショ糖)のとりすぎが肥満や糖尿病などのリスクと関連づけられていることに注目しました。そこで、砂糖の代わりとして天然甘味料のハチミツとステビアに着目しました。ステビアは、砂糖のおよそ150〜450倍の甘さをもつ低カロリーの甘味料です。研究の目的は、甘味料の種類と量の違いによって、ロンタル果実入りヤギ乳の物理的・化学的な性質と、細菌に対する作用がどう変わるかを調べることでした。

どのように調べたか

ヤギ乳を基本に、ロンタル果実をなめらかにすりつぶしたピューレを10%加え、甘味料の条件が異なる7種類の試料を作りました。比較の基準となる対照は砂糖5%です。ハチミツは2%、4%、6%、ステビアは0.05%、0.1%、0.15%の3段階ずつとし、それぞれ4回繰り返して作りました。どの試料も105℃で5分間加熱し、室温まで冷ましました。

測定した項目は5つです。1つめの抗酸化活性は、不安定な分子(フリーラジカル)を試薬の中でどれだけ消せるかを割合で示す化学的な試験で調べました。2つめの抗菌作用は、大腸菌と黄色ブドウ球菌を培養した寒天培地に試料を置き、周囲に菌の生えない透明な輪ができるかで確かめました。残りは、酸性度を示すpH、液体のとろみを示す粘度、色です。色は明るさ、赤み・緑み、黄み・青みの3つの数値で表しました。なお、この研究では人や動物が製品を口にすることはなく、味や香りの官能評価も行っていません。

主な結果

抗酸化活性は甘味料の種類と量によって有意に異なりました。最も低かったのは砂糖を使った対照の17.11%です。最も高かったのはステビア0.15%の33.80%でした。ハチミツでも量が増えるほど値が上がり、2%で27.33%、6%で31.42%でした。

一方、抗菌作用はどの試料にも見られませんでした。大腸菌と黄色ブドウ球菌のどちらに対しても、菌の生育を妨げた跡である透明な輪は現れませんでした。著者らは理由の候補として、次の点を挙げています。ハチミツが乳で薄まったこと、加熱でハチミツの抗菌成分の働きが弱まった可能性、乳の栄養分が菌の生育を支えた可能性、そしてステビアの濃度が菌を抑えるのに必要な量に届いていなかった可能性です。

pHは5.99〜6.58の範囲でした。ステビアを使った試料は6.44〜6.58で、対照の6.45とほぼ変わりませんでした。この値は、新鮮なヤギ乳の通常の範囲(6.4〜6.7)に収まっています。ハチミツを使った試料では、量が増えるほどpHが下がり、2%で6.24、6%で5.99と酸性寄りになりました。論文は、ハチミツそのものが酸性であることを理由として挙げています。

粘度にも違いが出ました。ハチミツは量が増えるほどとろみが強まり、2%で7.09、4%で7.80、6%で8.27(単位はセンチポアズ)となりました。ステビアを使った試料は6.19〜6.23で、ほとんど変わりませんでした。著者らは、ハチミツに多く含まれる果糖やブドウ糖がとろみを生む一方、ステビアはごく少量しか使わず糖分の寄与も小さいためだと説明しています。

色では、ステビアを使った試料が全体に明るく、なかでもステビア0.05%が最も明るい値でした。ハチミツは量が増えるほど色が暗くなり、赤みと黄みが強まりました。すべての試料でやや緑寄りの色合いが見られ、その傾向はステビアを使った試料で比較的はっきりしていました。論文は、ハチミツの色素や加熱中の褐色化反応(メイラード反応)が色の変化に関わり、ステビアはこうした反応を起こしにくいという可能性を示しています。

この研究が示すこと

この研究は、同じロンタル果実入りヤギ乳でも、甘味料にハチミツとステビアのどちらを選ぶか、どれだけ加えるかによって、抗酸化活性やpH、とろみ、色が異なることを示しました。著者らは、ステビア0.15%が抗酸化活性を高めつつpHなどの性質を良好に保った点から、天然甘味料としての可能性があると結論づけています。一方で、どちらの甘味料にもこの条件では抗菌作用は確認されず、甘味料に期待される働きが製品の中で必ず発揮されるわけではないことも明らかになりました。

原著論文の著者・所属:Hilma Hamimah(Student of the Animal Science and Technology Study Program, Faculty of Animal Science, Hasanuddin University, Makassar, Indonesia)、Fatma Maruddin(Department of Animal Production, Faculty of Animal Science, Hasanuddin University, Makassar, Indonesia)、Ambo Ako(Faculty of Animal Science, Hasanuddin University, Makassar, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hilma Hamimah, Fatma Maruddin, Ambo Ako. Physicochemical and Microbiological Characteristics of Processed Goat Milk with Lontar Fruit Using Different Types and Levels of Sweeteners. World s Veterinary Journal 2026-09-25. DOI: 10.54203/scil.2026.wvj90. 原著ライセンス:CC BY.