6月下旬、梅雨の晴れ間に青果店の棚を見渡すと、土の香りをまとった細身の根菜が目に入る。新ごぼうだ。ごぼうの旬は一般に11〜2月ごろとされ、6月は「名残」にあたる時期。それでも初夏に出回る若採りの新ごぼうは皮が薄く、香りがやわらかで、この時期ならではの軽やかな味わいがある。

「かたくて地味な根菜」——ごぼうにそんな印象を持っているなら、少し待ってほしい。昆布、わかめ、こんにゃく。あのぬるぬる・ねばねばした食品たちと、見た目が正反対のごぼうには、じつは共通点がある。水溶性食物繊維という成分を併せ持つ点だ。かたい根菜のくせに、中身は「ぬるぬるの仲間」。それがごぼうの意外な素顔である。

水に溶けると、静かに姿を変える

食物繊維には大きく二つの顔がある。水に溶けない「不溶性」と、水に溶ける「水溶性」だ。ごぼうは両方を持ち、可食部100gあたりの食物繊維総量は5.7g。そのうち水溶性食物繊維は2.3gある。

不溶性食物繊維が水を含んでふくらみ、かさを増すタイプなのに対して、水溶性食物繊維は、水に溶けると粘りけのあるゲル状になり、形を変えながら消化管を通っていく。同じ「食物繊維」とひとくくりにされがちだが、二つの性質はずいぶん違う。ごぼうはその両方を一本で持ち合わせている、よくばりな根菜なのだ。

なお、成分表には新ごぼう単独の収録がないため、ここでは一般的なごぼうの成分値を参考にしている。若採りの新ごぼうは水分が多めで風味もやわらかいので、数値はあくまで目安として捉えてほしい。

仮に1本(約180g)として単純換算すると、水溶性食物繊維は約4.1g、食物繊維総量は約10.3gになる(100gあたりの値からの計算)。食物繊維の1日の目標量は年齢・性別で異なるが(詳しくは日本人の食事摂取基準を参照)、ごぼう1本でまとまった量を食卓に添えられることがわかる。

香りと歯ごたえ、6月ならではの食べ方

新ごぼうの最大の魅力は、あのすっきりした土の香りと、嚙むほどに広がるほのかな甘さだ。香り成分は皮の近くに多いので、たわしや布巾で軽くこするだけにして、ピーラーで薄く剥きすぎないのがおすすめだ。

6月の食卓には、シンプルな調理が映える。さっと水にさらしてアクを抜き、ごま油で炒めて塩と薄口醤油だけで仕上げる「きんぴら」は、定番でありながら新ごぼうの香りをいちばん素直に引き出してくれる。冷めてもおいしいので、作りおきの一品にもなる。薄切りにしてサラダに加えたり、みそ汁の具にしたりするだけでも、根菜らしい存在感を発揮する。

冷凍保存で、旬の味を長く手元に

梅雨の時期はごぼうが傷みやすい。上手に保存するのが、この季節の賢い付き合い方だ。冷蔵するなら、皮をむかずに濡れた新聞紙に包んで立てて保存すると約2週間もつとされる。水を張った容器に立てる方法もあり、水は2日に1回換えるのがポイントだ。

さらに使い勝手がいいのが冷凍保存。皮ごと洗って斜め切りや小口切りにし、そのまま冷凍袋へ。約1カ月保存できるとされる。使うときは水に1〜2分浸けると切れるが、長く浸しすぎるとうまみが逃げるので手早く。炒め物や汁物には凍ったまま加えてもいい。

旬の盛りは冬だけれど、初夏の若いごぼうには若さゆえの軽やかさがある。「かたい根菜」という先入観を一度脇に置いて、その「ぬるぬるの仲間」という意外な素顔ごと、今だけの新ごぼうを味わってみてほしい。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。