妊娠中の食事は、お母さんと赤ちゃんの両方にとって大切なテーマです。近年、妊娠期や妊娠前の栄養素のとり方と「妊娠糖尿病」と呼ばれる状態との関わりを調べた大規模な研究が発表され、注目を集めています。今回はその内容を、わかりやすくひも解いてみましょう。

研究でわかってきたこと

この研究は、世界各地で行われた前向き観察研究(対象者を一定期間追いかけて記録する研究方法)25件、のべ約11万5千人の妊婦さんのデータをまとめて分析したものです(出典:ビーエムシー・メディシン(2026-04-11))。注目したのは、たんぱく質・脂質・炭水化物、そしてアルコールといった「マクロ栄養素」の摂取と、妊娠糖尿病の発生との関連でした。

分析の結果、動物性のたんぱく質を多くとっていたグループでは、少ないグループに比べて妊娠糖尿病の発生が相対的に多い傾向が示唆されたと報告されています(より多い群と少ない群の比較で相対リスク1.62、95%信頼区間1.20〜2.18)。同様に動物性の脂質についてもリスクが高まる傾向が示され、その確からしさは中程度と評価されました。なお研究では、たんぱく質や脂質を「動物性か植物性か」といった由来・種類ごとにも分けて検討されています。

ここで大切なのは、これは観察研究の集計であり、特定の食品が何かを「引き起こす」と断定するものではないという点です。あくまで食事のパターンと健康状態の傾向を示すものとして受け止めるのがよいでしょう。栄養素は「どれをどれだけ」というバランスの中で考えることが、研究の示すヒントといえそうです。

マクロ栄養素ってそもそも何?

研究のキーワードであるマクロ栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物といった、エネルギーや体づくりの中心となる栄養素)について、基本を整理しておきましょう。たんぱく質は・魚・大豆などに、脂質は油脂やの脂身などに、炭水化物はごはんパンいも類などに多く含まれます。

ここで一つ知っておきたいのが、炭水化物が「糖質」と「食物繊維」に分けられるという関係です。糖質は体内で消化・吸収されてエネルギー源になる一方、食物繊維はヒトの消化酵素では分解されにくく、エネルギーになりにくい成分です。炭水化物と糖質はしばしば同じ意味で使われがちですが、糖質に食物繊維を加えたものが炭水化物、と整理しておくと混乱しません。

また食物繊維には、水に溶ける「水溶性」と溶けにくい「不溶性」があり、それぞれ性質が異なります。食品ごとにどちらが多いかは変わるため、一括りにせず、いろいろな食材を組み合わせることが、自然と多様な栄養素をとることにつながります。食品ごとの成分値は食品群一覧のページで実際に見比べられます。

日々の食事に取り入れるヒント

研究の知見をふまえると、特定の食品を「避ける」「増やす」と極端に考えるより、全体のバランスを整える発想が役立ちそうです。具体的な工夫を挙げてみます。

  • たんぱく源を一品に偏らせず、・魚・大豆製品などを日替わりや一食ごとに組み合わせる。
  • 脂質は量だけでなく種類にも目を向け、調理法を「揚げる」一辺倒にせず、蒸す・煮るなども取り入れる。
  • 主食には精白度の低い穀物を加えるなど、食物繊維のとれる食材を意識する。
  • 野菜きのこ海藻を毎食どこかに添えて、食卓の彩りと品数を増やす。

妊娠中の食事は、エネルギーや各栄養素の必要量が時期によって変わります。摂取量の目安は、最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)で確認できます。気になる点があれば、かかりつけの医師や管理栄養士に相談しながら進めると安心です。

まとめ

今回の研究は、妊娠期の栄養素のとり方が健康状態と関わる可能性を、大規模なデータから示したものです。特定の食品の善し悪しに一喜一憂するのではなく、多様な食材をバランスよく組み合わせることが、毎日の食卓を豊かにする近道といえるでしょう。

※参考文献:Maternal macronutrient intake and gestational diabetes: systematic review of prospective observational studies and dose-response meta-analyses(ビーエムシー・メディシン(2026-04-11))