この研究は、ドイツの研究機関の研究論文です。
掲載誌:BMC Public Health
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
人・動物・環境の健康を、食の仕組みから考える
研究チームは、食料の生産から消費までの仕組みにおいて、「ワンヘルス」の取り組みを数理・統計モデルがどう支えているかを調べました。ワンヘルスとは、人、動物、環境の健康をつながりのあるものとして捉え、分野や組織を越えて取り組む考え方です。食と農業はその接点ですが、どのようなモデルが使われ、行政の活動とどう結びついているかは十分に整理されていませんでした。
著者らは、国際的なワンヘルス共同行動計画、G20の政府機関が公開する取り組み、関連する研究論文を組み合わせて分析しました。まず政策資料から食と農業に関わる活動を整理し、それを手がかりに、2021年1月から2026年5月までのモデル研究を幅広く調べました。さらに、得られた結果をもとに、モデルを行政の連携や意思決定に位置づける枠組みを提案しました。
感染症対策を中心に、多様なデータを組み合わせる
政策資料の分析では、国際行動計画のすべての行動分野に食料システムと関わる活動があり、とくに人と動物の間で広がる感染症、食品安全、環境の健康との関わりが多く見られました。一方、G20の実際の取り組みは感染症対策に重点があり、多くの国で、薬が効きにくくなる薬剤耐性や、人と動物に共通する感染症が主要な課題となっていました。データ基盤やモデルの活用支援は、行政の中心的な責務としてはあまり明確に位置づけられていないと著者らは報告しています。
文献検索で得た658件から、食料システムに関連するワンヘルスのモデル研究129件が選ばれました。病気の発生や広がりを扱う疫学モデルが82件、環境を扱うモデルが50件あり、感染症の課題では薬剤耐性が45件と最も多く見られました。一つの研究が複数の分野や対象を扱う場合もあります。
多くの研究は、環境、農業、患者数など、性質の異なるデータを組み合わせていました。著者らは、複数の要因を一つの統計モデルで扱う方法や、複数のモデルをつなぐ方法などに共通して、分野をまたぐ情報を取り込む特徴があると整理しました。また、同じ研究で扱われた対象どうしのつながりを分析すると、食品は家畜や環境などを結ぶ中心的な位置にありました。これは食品の健康への影響の大きさではなく、研究対象間の結びつきを示す結果です。
モデルを、組織間の連携と判断につなげる
これらの結果から、著者らは、必要に応じてデータや分析方法を組み合わせられる行政の枠組みを提案しました。研究者や現場の関係者がデータを共有して分析し、その結果を対策の評価や政策判断につなげる構造です。モデルを単独の予測道具としてではなく、異なる組織をつなぎ、ある対策が別の領域に及ぼす影響も考えるための支えとして位置づけています。
この枠組みは、政策資料と既存研究から導いた提案であり、導入による効果を検証したものではありません。また、分析はG20と公表論文を中心とし、主に感染症を対象としています。研究が伝えるのは、食と農業のワンヘルスには多様な分析手法がすでにあり、それを生かすには、分野を越えてデータと知見を結びつける仕組みが重要だということです。
著者:Thomas Art Burke(Department for Agricultural Economics and Rural Development, Georg-August-Universität Göttingen, Platz der Göttinger Sieben 5, 37073, Göttingen, Germany. [email protected])、Antje Risius(Department for Agricultural Economics and Rural Development, Georg-August-Universität Göttingen, Platz der Göttinger Sieben 5, 37073, Göttingen, Germany)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Thomas Art Burke, Antje Risius. Interdisciplinary modelling approaches for One Health in agri-food systems: a scoping review and conceptual analysis. BMC Public Health 2026-10-03. DOI: 10.1186/s12889-026-29666-2. 原著ライセンス:CC BY.