著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Food Science and Processing
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
切らずに桃の熟し具合を知るために
桃は収穫後に日持ちしにくく、熟すにつれて果肉が急速に軟らかくなります。熟度の判断に使われる糖度や硬さなどの多くは、果実を切ったり押しつぶしたりしなければ測れません。そのため、果実を傷つけずに一つずつ品質を見分ける方法が求められてきました。
この論文は、イラン産のタブリーズィー品種の桃を対象にしています。この桃は、果肉が種から離れやすい「離核」タイプです。研究の目的は、果実に超音波を通したときの「速さ(伝わる速度)」と「弱まり方(減衰)」が、熟度や内部品質を示す非破壊の指標として使えるかを検討することです。あわせて、超音波の値と品質指標の関係を表す探索的な換算式を作ることも目指しました。
60個の桃で超音波と品質を照らし合わせる
研究では、商業果樹園から収穫した桃の中から60個を選びました。これらを「熟した果実」と「未熟な果実」に分け、さらにそれぞれを大きい果実と小さい果実に分けました。これにより、15個ずつの4グループができました。
各果実は20℃にそろえたうえで、「透過法」で測定されました。これは、片側から超音波を送り、反対側で受け取る方法です。超音波が果実を通り抜ける時間から速度を求めました。また、送った信号に比べて受け取った信号がどれだけ弱まったかから、見かけの減衰を求めています。
超音波の測定後には果実を実際に壊して、硬さ、乾物率、pH、酸度、糖含量、可溶性固形分を調べました。乾物率は、水分を除いた後に残る成分の割合です。可溶性固形分は果汁に溶けている糖などの量で、いわゆる糖度の目安です。最後に、グループごとに超音波の値と乾物率・可溶性固形分の関係を二次式で近似しました。
熟すと超音波は遅くなり、弱まりやすくなった
グループの平均値を比べると、熟した果実では未熟な果実より超音波の速度が低くなりました。速度は大きい果実で毎秒約192メートルから約168メートルへ、小さい果実で約197メートルから約180メートルへ下がっています。一方、見かけの減衰は高くなりました。1ミリあたりの値で、大きい果実では1.84から1.89デシベルへ、小さい果実では1.59から1.66デシベルへと上がっています。
同時に、熟した果実は軟らかくなっていました。皮付き果実の硬さは、大きい果実で16.47ニュートンから8.78ニュートンへ、小さい果実で16.01ニュートンから6.22ニュートンへと下がっています。可溶性固形分と乾物率は、熟した果実の方が高い値を示しました。著者は、熟す過程で細胞壁が分解されて果肉の構造が変わることが、超音波の伝わり方に影響すると考察しています。なお、これらはグループ平均の違いとして報告されたもので、統計的な有意差は示されていません。
超音波の値と品質指標の関係は、グループ別の二次式でよく近似できました。式の当てはまりの良さは、決定係数という値で示されています。これは、式が手元のデータのばらつきをどれだけ説明できるかを表す値です。決定係数は、減衰と乾物率で0.88〜0.98、速度と乾物率で0.91〜0.98でした。減衰と可溶性固形分では0.84〜0.98、速度と可溶性固形分では0.88〜0.98でした。全体の傾向としては、乾物率が高いほど減衰は大きく、速度は小さくなる関係が見られました。
ただし、4つのグループで式の形や係数はかなり異なっていました。論文は、熟度や大きさの異なる果実すべてに一つの共通式を当てはめるのは難しい可能性があると指摘しています。また、この結果は乾物率が速度を直接変えているという因果関係を示したものではありません。論文は、関連として解釈すべきだとしています。
研究が示すこと
この研究は、超音波の速度と減衰が、桃を傷つけずに熟度や内部品質を見積もる手がかりになりうることを示しました。一方で、論文自身が強調するように、ここで示された高い決定係数は同じ試料の中での当てはまりの良さです。別の果実で予測精度を確かめたものではありません。
著者は、実際の選別などで使うには、より大きなデータと独立した検証が必要だと述べています。この研究は、超音波による桃の品質評価の可能性を探る、初期段階の手がかりを示した成果と位置づけられます。
原著論文の著者・所属:Rasool Khodabakhshian(Department of Biosystems Engineering , Ferdowsi University of Mashhad , Mashhad 9177948974 , Iran;)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rasool Khodabakhshian. Non-Destructive Assessment of Quality Attributes in Iranian Freestone Tabrizi Peaches Using Ultrasonic Velocity and Attenuation. Food Science and Processing 2026-09-24. DOI: 10.53941/fsp.2026.100015. 原著ライセンス:CC BY.