著者の所属・活動拠点の国は、ブラジル、スペインです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい:マンゴー加工の副産物を食品素材に
マンゴーは世界で広く収穫される熱帯果実です。果肉を加工する過程では、皮や種子が大量に副産物として出ます。論文によれば、皮と種子は果実全体の重さの35〜60%を占めることがあり、果肉より高い濃度で生理活性成分を含む場合もあるとされています。
研究チームは、こうした副産物と果肉を粉にしてカップケーキに使ったときの成分の違いを調べました。比べたのは、マンゴーのどの部位を使うかと、果肉をどの方法で乾燥させるかです。注目したのは、成分がどれだけ含まれるかに加えて、消化を経た後にどれだけ吸収されうる状態で溶け出すかでした。この割合は「バイオアクセシビリティ」と呼ばれます。
5種類のマンゴー粉とカップケーキの試験
材料には、ブラジルで購入した完熟のトミー・アトキンス種のマンゴーを使いました。果肉からは3種類の粉を作りました。1つ目は凍結乾燥、2つ目は80℃の送風オーブンで10時間乾かす従来法、3つ目はフォームマット乾燥です。フォームマット乾燥では、アルブミンを起泡剤として加えて果肉を泡立て、薄く広げて80℃で4時間乾燥させます。皮と種子の中身(仁)は60℃で24時間乾燥し、粉砕して粉にしました。
次に、カップケーキの小麦粉の35%をそれぞれのマンゴー粉に置き換えました。この割合は、10〜50%で試した予備的な官能評価で受け入れられやすかった水準として選ばれています。研究チームは、粉とカップケーキの色、ポリフェノールの仲間であるフェノール化合物、カロテノイドやトコフェロール(ビタミンEの仲間)などのイソプレノイドを分析しました。
さらに、国際的に標準化された試験管内消化モデル「INFOGEST」で、口・胃・小腸での消化を模擬しました。そのうえで、消化前のカップケーキに含まれていた量のうち、どれだけが消化後の液に移ったかを計算しています。脂に溶けやすいイソプレノイドについては、消化の過程でできる微小な粒子(ミセル)を含む画分への移行を測りました。
部位によって異なる成分、乾燥法によって変わる溶け出しやすさ
粉そのものの成分は、部位によって大きく違っていました。種子の粉は、没食子酸に由来する「ガロイル誘導体」が特に多く含まれていました。フェノール化合物の合計は乾燥重量100gあたり約1万mgで、ほかの粉を大きく上回りました。皮の粉はケルセチンなどのフラボノールが多く、マンゴーに特徴的な成分マンギフェリンの含量も、5種類の中で最も高い値でした。果肉の粉はフェノール化合物の合計が100gあたり約106〜128mgと少なく、フェノール酸類が中心でした。
一方、カロテノイドは主に果肉の粉に含まれていました。合計は100gあたり1.78mg(凍結乾燥)から2.86mg(従来法)で、皮や種子の粉より多い値です。種子の粉はイソプレノイドの合計が最も少なく、0.48mgでした。色の測定では、従来法の粉が最も暗く、鮮やかさは最も強い結果でした。凍結乾燥の粉は最も明るく、種子の粉は最も色の鮮やかさが低くなりました。著者らは、こうした色の違いがイソプレノイドの組成の違いと対応していたと述べています。
消化試験では、溶け出しやすさが成分の種類によって異なりました。著者らは、フェノール酸類とマンギフェリンのバイオアクセシビリティが最も高かったと報告しています。一方、フラボノールや、ガロイル基が多く結合したタンニン類は低い値にとどまりました。カロテノイドとトコフェロールは、果肉の乾燥方法の影響を強く受けていました。脂に溶けやすいこれらの成分では、フォームマット乾燥の粉を使った場合に最も高い値が得られました。
研究が示すこと
この研究は、マンゴー由来の粉の栄養面での働きを考えるには、含まれる成分量だけでは足りないことを示しています。著者らは、使う部位、乾燥方法、焼き菓子という食品の形の組み合わせによって、消化後に溶け出す成分が変わるとまとめています。これらの結果は試験管内での消化を模擬した実験によるものです。研究チームは、皮や種子を含むマンゴー由来の粉が、焼き菓子に使える持続可能な機能性素材の候補になりうると考えています。
原著論文の著者・所属:Francine Albernaz Lobo(Faculdade de Nutrição, Universidade Federal do Estado do Rio de Janeiro, Rio de Janeiro 22290-240, Brazil)、Carla M. Stinco(Food Color & Quality Laboratory, Facultad de Farmacia, Universidad de Sevilla, 41012 Sevilla, Spain)、Ana M. Benítez-González(Food Color & Quality Laboratory, Facultad de Farmacia, Universidad de Sevilla, 41012 Sevilla, Spain)、Dolores Hernanz(Department of Analytical Chemistry, Facultad de Farmacia, Universidad de Sevilla, 41012 Sevilla, Spain)、María José Jara-Palacios(Department of Analytical Chemistry, Facultad de Farmacia, Universidad de Sevilla, 41012 Sevilla, Spain)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Francine Albernaz Lobo, Carla M. Stinco, Ana M. Benítez-González, et al. Upcycling of Mango Pulp and By-Products into Functional Flours: Effects on Bioactive Composition and Bioaccessibility in Cupcakes. Foods 2026-10-02. DOI: 10.3390/foods15193527. 原著ライセンス:CC BY.