著者の所属・活動拠点の国は、チュニジアです。

掲載誌:Journal of risk and financial management

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

研究チームは、サハラ以南アフリカで、銀行の預金や融資などの金融サービスへのアクセスと食料保障が、どのように関係しているかを調べました。特に注目したのは、電力や調理用のクリーンな燃料・技術を利用できる状況によって、その関係が変わるかどうかです。

背景には、金融サービスがエネルギー関連の支出や設備への投資を支える可能性がある一方、従来の研究では、金融・エネルギー・食料保障のつながりが十分に検討されていないという問題意識がありました。

何を、どのように調べたか

対象は、2010~2024年のサハラ以南アフリカ30か国の国別・年別データです。研究チームは、ATMや銀行支店の数、預金者・借り手の数をまとめ、金融サービスへのアクセスを表す「金融包摂」の指標を作りました。また、電力と調理用のクリーンな燃料・技術へのアクセスを、都市部・農村部も含めてまとめ、エネルギーの状況を表す指標を作りました。論文では後者を「エネルギー貧困指標」と呼んでいますが、値が高いほどエネルギーへのアクセスが良く、貧困が少ない方向を示します。

食料保障を表す複合指標を予測対象とし、所得水準、物価、統治の状況、都市化、デジタル化も分析に含めました。複数の指標を要約する統計手法や、単純な比例関係に限らないパターンを捉える機械学習を用い、予測に重要な変数を調べました。さらに、金融包摂と食料保障の間にエネルギーの状況を介した関連があるか、エネルギー指標の水準によって金融包摂との関連が変わるかを分析しました。

主な報告結果

報告されたモデルの中で予測性能が最も高かったのは、複数の予測用の木構造を組み合わせるXGBoostでした。食料保障指標の変動の約62.49%を説明したと報告されています。予測への各変数の寄与を調べる分析では、金融包摂とエネルギーの状況が重要な変数に挙がりました。ただし、金融包摂の寄与は一様ではなく、観測によって正にも負にもなっていました。

エネルギーの状況を介した金融包摂と食料保障の間接的な関連は、正で統計的に有意でした。一方、エネルギーの状況を考慮した直接の関連と、間接的な関連も含めた全体の関連は、統計的に有意ではありませんでした。

関連の変わり目を探す分析では、エネルギー指標の4.044が境界として報告されました。指標が4.044以下では金融包摂と食料保障に正の関連があり、4.044を超える範囲では負の関連がありました。この数値は研究で作成した複合指標上の値であり、電力普及率などの百分率ではありません。また、指標が高い側は、エネルギー貧困が深刻な側ではなく、エネルギーへのアクセスが良い側です。

この報告が示すこと

著者らは、金融サービスと食料保障の関係を理解するには、電力や調理用エネルギーを利用できる状況も併せて考える必要があると結論づけています。ただし、この研究は国別の観察データから関連や予測パターンを調べたもので、原因と結果の逆転や、分析に含まれない要因の影響を解消したものではありません。金融サービスの拡充が食料保障を改善する、あるいは悪化させるという因果関係を示した結果ではない点が重要です。

原著論文の著者・所属:Foued Badr Gabsi(Laboratory of Economics and Development, Faculty of Economics and Management of Sfax (FSEGS), University of Sfax, Sfax 3018, Tunisia)、Mohamed Ali Mahmoudi(Laboratory of Economics and Development, Faculty of Economics and Management of Sfax (FSEGS), University of Sfax, Sfax 3018, Tunisia)、Bochra Mannai(Laboratory of Economics and Development, Faculty of Economics and Management of Sfax (FSEGS), University of Sfax, Sfax 3018, Tunisia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Foued Badr Gabsi, Mohamed Ali Mahmoudi, Bochra Mannai. Financial Inclusion, Energy Poverty and Food Security in Sub-Saharan Africa: Insights from Machine Learning Techniques. Journal of risk and financial management 2026-11-02. DOI: 10.3390/jrfm19110874. 原著ライセンス:CC BY.