著者の所属・活動拠点の国は、ブルネイです。
掲載誌:Journal of Halal Science and Management Research
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ハラールとは、イスラム法で許されている食品や行為を指します。食品産業では、原材料だけでなく、調理、保管、取り扱い、配送の各段階で、許されていないものが混入しないよう管理することが求められます。こうした管理の仕組みは「ハラール保証」と呼ばれ、食品安全、衛生、記録による追跡のしやすさとも深く関わっています。
ハラール認証を受けた組織では、外部の当局による審査とは別に、組織自身が日常的に規定どおりに運用されているかを点検する「内部ハラール監査」が行われます。著者らは、認証を取得した後もハラールを守り続けられるかは、この内部の点検にかかっていると述べています。
ブルネイ・ダルサラームでは、2005年のハラール証明書・ハラール表示令によって、食品事業者に認証要件の順守が求められています。一方で、大量の食事を時間内に作り、多くの仕入れ先や従業員が関わるセントラルキッチンは運営が複雑です。研究チームは、こうした施設で内部ハラール監査が実際にどう行われているかを調べた実証研究がブルネイではまだ限られていると指摘しています。
そこで本研究は、ブルネイの政府系企業で、航空機内食、病院食、イベントのケータリングなどを手がけるRoyal Brunei Culinary(RBC)のセントラルキッチンを対象に、内部ハラール監査の進め方、担い手、現場で直面する課題、改善策を明らかにすることを目的としました。RBCは1975年に国営航空会社向けの機内食工場として設立された企業です。
どのように調べたか
研究チームは、数値で測定するのではなく、現場の実践や関係者の経験を詳しく理解するための質的な事例研究を採用しました。対象は、RBCで品質保証・品質管理(QAQC)を担う部門の職員5人です。いずれも内部ハラール監査の計画、実施、監視、評価に直接関わる立場で、経験年数は2か月から10年まで幅がありました。
調査は、あらかじめ用意した質問を軸にしつつ、相手の話に応じて掘り下げる半構造化インタビューの形式で、セントラルキッチンで対面により行われました。1人あたり約30〜45分です。質問は、監査手順の実施状況、監査で直面する課題、改善に向けた提案という3つのテーマに沿って構成されました。録音を文字に起こしたうえで、繰り返し現れる話題やパターンを整理する「テーマ分析」という方法で分析しています。
主な結果:日常業務に組み込まれた監査と現場の課題
著者らによると、RBCの内部ハラール監査は独立した作業ではなく、厨房の日々の業務に組み込まれていました。関係当局が確認した承認済み原材料リストやメニューのチェックリストを基準に、原材料と仕入れ先の書類を確認します。そのうえで、保管時に生の材料と調理済み食品を分けているか、調理の流れや衛生状態は適切か、職員が防護具を着用しているかなども点検していました。
RBCは、食品の危害を工程ごとに管理する国際的な手法HACCP(危害分析・重要管理点)の認証も取得しています。そのため、加熱、冷却、急速冷凍、盛り付けといった工程での温度管理など、特に重要な管理点の監視もハラール監査と結びついて行われていました。研究チームは、ハラールの順守が食品安全や業務管理全体と一体になっていると述べています。
監査の頻度について、回答者からは、禁止された製品が使われていないかの毎日の確認や、清掃状況や食品の品質と合わせて行われる月例のQAQC監査が挙げられました。ある回答者は、予定された監査に加えて抜き打ち監査も行われると説明しています。外部のハラール当局による監査は、主に認証の取得や更新、新製品の承認を目的としており、日常の内部監視とは役割が異なると回答者たちは区別していました。
監査の担い手は、ハラール監督者やQAQC職員が中心です。シェフや厨房職員も原材料や調理工程の情報を提供しており、関係者全員で責任を分担する形になっていました。一方で、職員への教育は先輩から後輩への非公式な知識の受け渡しに大きく頼っていることも報告されています。
課題として回答者が挙げたのは、繁忙期や大規模イベントの際に時間が足りず、職員が監査に協力しにくくなることでした。ほかにも、表示の不備や食品にふたをし忘れるといった軽微な誤り、新しく持ち込まれた品目がハラール監督者に速やかに報告されないこと、ハラール委員会・QAQC・現場職員の間の連絡不足が挙げられています。さらに、保守体制の不足などにより同じ指摘が繰り返されること、冷蔵・冷凍設備が必要な温度を保てないこと、仕入れ先からのハラール証明書類の取得が遅れることも課題として示されました。
研究が示すこと
こうした課題があっても、回答者たちは内部ハラール監査がハラールの一貫性や食品の品質、衛生の維持に欠かせないと考えていました。著者らは、経営陣の支援、日常的な監視、是正措置が順守の維持に役立っていると評価しています。改善策としては、体系的なハラール研修、部門間の連絡の強化、書類管理の改善、是正措置の確実な追跡、外部のハラール当局との連携強化が示されました。
この研究は、品質管理部門の職員5人への聞き取りにもとづく単一企業の事例研究です。それでも、大量調理の現場ではハラールの管理が衛生管理や食品安全の仕組みと一体で運用されていること、そして監査の実効性が忙しさや人と人との連絡体制に左右されることを、具体的に描き出しています。
原著論文の著者・所属:Siti Wardah Muhammad Wajeeh(Faculty of Halal Science and Sustainable Tourism, Universiti Islam Sultan Sharif Ali, Bandar Seri Begawan, Simpang 347, Jalan Pasar Gadong, Bandar Seri Begawan BE1310, Brunei Darussalam)、Raihana Mohd Raffi(Faculty of Halal Science and Sustainable Tourism, Universiti Islam Sultan Sharif Ali, Bandar Seri Begawan, Simpang 347, Jalan Pasar Gadong, Bandar Seri Begawan BE1310, Brunei Darussalam)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Siti Wardah Muhammad Wajeeh, Raihana Mohd Raffi Halal Auditing Practice and Challenges in Food Service Industry: A Case Study of Royal Brunei Culinary (RBC). Journal of Halal Science and Management Research 2026-09-30. DOI: 10.24191/jhsmr.v2i2.12122. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。