「ご飯のあとに緑茶一杯」——ほっとする習慣に思えるが、その一杯が食事から摂った鉄の吸収を静かに妨げているかもしれない。鉄・ビタミンC・タンニン。この3者の関係を知るだけで、毎日の食卓の組み立て方が少し変わる。
食品中の鉄には大きく2種類ある。肉・魚に含まれるヘム鉄と、野菜・豆類に含まれる非ヘム鉄だ。ヘム鉄は吸収率が比較的安定しているが、非ヘム鉄は同時に食べる・飲むものの影響を受けやすい。その「変数」になるのがビタミンCとタンニンである。
ビタミンCは非ヘム鉄の「橋渡し役」
ビタミンCは非ヘム鉄を吸収されやすい形(二価鉄)へ変える働きをもつと栄養学で広く示されており、日本人の食事摂取基準でも鉄との関連が触れられている。
そのビタミンCを多く含む食材として注目したいのが赤ピーマン(果実・生)。100gあたりビタミンC 170mg——女性(30〜49歳)の推奨量100mg/日の170%に相当する。1/2個(約50g)でも約85mgのビタミンCを摂れる計算だ(100gあたりの実測値からの換算で、あくまで目安)。なお、加熱調理ではビタミンCが損失するため、生食やさっと火を通す程度にとどめると摂取量を保ちやすい。サラダに散らすほか、炒め物に使う場合は加熱時間を短めにするのがポイントだ。
鉄を含む3品——同じ皿に乗せてみると
豚もも赤肉(生)は100gあたりたんぱく質21.9g(女性30〜49歳の推奨量50g/日の44%)、鉄0.9mgを含む赤身肉で、ヘム鉄の供給源として広く使われる。脂質5.3gと比較的淡白で、炒め物や蒸し料理に向く。
こまつな(葉・生)は100gあたり鉄2.8mg(非ヘム鉄)を含む緑黄色野菜。エネルギーは13kcalと軽く、植物性の鉄源として家庭料理に定番の存在だ。
糸引き納豆は100gあたりたんぱく質16.5g(推奨量の33%)、鉄3.3mgを含む発酵食品。1パック(約45g程度が目安)でも植物性の鉄を補える。
植物性食材から摂る鉄(小松菜・納豆)は非ヘム鉄。一緒に赤ピーマンを組み合わせると、ビタミンCの橋渡し作用が働く食卓になる。豚もも×赤ピーマンの炒め物、小松菜のお浸しに赤ピーマンを添える、納豆に刻んだ赤ピーマンを混ぜる——どれも手軽に試せる。
タンニンが「待った」をかける——緑茶のタイミング
煎茶(浸出液)に含まれるタンニン(茶ポリフェノールの一種)は、鉄と結合して吸収を妨げる性質が知られている。食中・食直後に飲むと、食事中の鉄とタンニンが消化管で出会いやすくなる。
「緑茶はいけない」ではなく「タイミングを選ぶ」という発想が大切だ。食後しばらく時間をおいてから飲むことで、消化管内での鉄とタンニンの競合を和らげる可能性があると考えられている。
「何を食べるか」より「どう組み合わせるか」
鉄の摂取量を増やそうと食材を選ぶだけでなく、吸収に働く組み合わせを意識するひと手間が、食卓の質を静かに底上げする可能性がある。ビタミンCを含む赤ピーマンを鉄源と同じ皿に、そして緑茶は食後しばらくたってから——その小さな工夫が、今日の食事の鉄の吸収に変化をもたらすかもしれない。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。