豚肉を買うとき、何を基準にしていますか。価格、見た目、レシピの指定。でも、部位を変えるだけで脂質の量は大きく変わります。
部位で変わる、脂の量
日本食品標準成分表(八訂)で5つの部位を並べると、脂質の差は一目瞭然です。
- ぶた・ヒレ(赤肉・生):脂質1.7g/100g、エネルギー105kcal
- ぶた・もも(赤肉・生):脂質5.3g/100g、エネルギー133kcal
- ぶた・かた(赤肉・生):脂質3.8g/100g、エネルギー114kcal
- ぶた・かたロース(脂身つき・生):脂質19.2g/100g、エネルギー237kcal
- ぶた・ばら(脂身つき・生):脂質35.4g/100g、エネルギー366kcal
最も少ないヒレ(1.7g)と最も多いばら(35.4g)では、約21倍の開きがあります。エネルギーも105kcalと366kcalで、3倍以上の差です。
「赤肉」と「脂身つき」、表示の違いを読む
ここで目を向けたいのが、データの条件です。ヒレ・もも・かたは「赤肉」つまり脂身を取り除いた状態の数値。一方、かたロースとばらは「脂身つき」のまま測った値です。スーパーの売り場で手に取る肉は、多くの場合脂身がついています。ヒレやもも・かたを選んでも、白い脂身の部分をどこまでトリミングするかで実際の摂取量は変わります。選ぶ部位と、調理前の下処理が両輪です。
たんぱく質はヒレが最多
脂が少ないからといってたんぱく質が減るわけではありません。100gあたりのたんぱく質を見ると、ヒレが22.7g、もも21.9g、かた20.9gと、赤肉の部位はいずれも20g超。脂質が最も多いばらは14.4gにとどまります。脂を抑えながらたんぱく質を確保したいなら、ヒレやももが効率的な選択です。
ヒレのとんカツ・ソテー用1枚(約80g)で換算すると、たんぱく質は約18g、脂質は約1~2gという目安になります。ばらの薄切り1枚(約20g)では脂質は約7gと、1枚あたりでもその差は大きく出ます。
ヒレに突出するビタミンB1
今回の部位の中で見逃せないのが、ヒレのビタミンB1です。100gあたり1.22mg、これは日本人の食事摂取基準における女性30〜49歳の推奨量(0.9mg/日)の136%に相当します。この推奨量に対する割合であり、耐容上限量の基準ではありませんが、通常の食事量で過剰を心配する必要はありません。ももも100gあたり1.01mg(推奨量比112%)と高く、かたは0.75mg(同83%)、かたロース0.63mg(同70%)、ばら0.51mg(同57%)と、脂が少ない部位ほどビタミンB1が多い傾向があります。
ビタミンB1は糖質などの代謝・エネルギー産生を助ける補酵素です。にんにくや玉ねぎに含まれる香り成分アリシンと一緒にとると吸収が高まるとされているため、豚肉のソテーにガーリックや玉ねぎを組み合わせるのは、味だけでなく理にかなった組み合わせといえます。ただし水溶性のビタミンなので、水に長くさらす調理は避けるとよいとされています。
ばらを選ぶときのポイント
ばらの脂質35.4gのうち、飽和脂肪酸は14.6gとデータに示されています。飽和脂肪酸は体内でも合成されますが、食事からの摂りすぎは高LDLコレステロール血症など循環器疾患の危険因子の一つと報告されています。豚バラは薄切り1枚が約20gと少量ですが、炒め物や鍋で枚数が増えると脂質の積み上がりは早い。使う量の意識が大切です。
選び方の実践
脂を減らしたい日の主役はヒレかもも。かたは脂質3.8gと中間的な値で、価格が手頃なことも多く、日常使いに向いています。かたロースやばらは、脂のコクを活かす煮込みや炒め物に少量使いで風味を出す使い方が現実的です。
部位の名前に「赤肉」とあれば脂身を除いた状態の数値、「脂身つき」とあれば脂身込みの数値であることを頭に置いておくと、売り場での選択がぐっと具体的になります。同じ「豚肉」という言葉の裏側にある数字の差を知ると、いつもの肉売り場の見え方が少し変わるはずです。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・文部科学省 食品成分データベース・消費者庁