6月も半ばを過ぎると、沖縄や九州の市場にはみずみずしい茎葉が並ぶ季節となる。ようさい——「空芯菜(くうしんさい)」の名でも親しまれるこの青菜は、中国原産の夏野菜で、これから旬を迎える。シャキシャキとした歯ごたえ、中心が空洞になった茎の軽やかさ、そして炒め物から和え物まで何にでもなじむ懐の深さが、暑い台所でも重宝される理由である。
一皿でビタミンKをしっかり補える
可食部100gあたりビタミンKは250µg。ビタミンKの1日の目安量は、成人男女ともに150µg(日本人の食事摂取基準)であるから、100gで目安量の約1.7倍に相当する計算となる。実際の炒め物1皿分の一人前はおよそ100gであり、一皿で1日の目安量をまかなえる量だ。仮に1束を150gと仮定した場合(品種や販売形態により大きく異なる)、375µgとなり目安量の約2.5倍に相当する。
ビタミンKは、出血したときに血液を固める凝固因子の生成に関わり、止血に働く脂溶性ビタミンとされる。同時に、骨の形成にも関わることが知られており、欠乏すると出血しやすくなったり骨が弱くなったりするとされる。ビタミンKは通常の食事で不足しにくい栄養素であり、ようさいは日常の食卓でビタミンKを自然に摂れる食材の一つとして位置づけられる。意識的に大量に食べる必要はなく、旬の時期に食事のバリエーションとして取り入れる感覚で十分だ。
なお、ビタミンKには現在のところ耐容上限量(過剰摂取の基準値)が設けられておらず、通常の食事量での過剰摂取は報告されていない。ただし一点、注意が必要な方がいる——血液を固まりにくくする薬「ワーファリン(抗凝固薬)」を服用中の場合は、ビタミンKが薬の効果に直接影響し、摂取量の急激な増減が出血や血栓のリスクにつながることがある。現在の摂取量を急に増やしたり減らしたりせず、食べ方を変える前に必ず主治医や薬剤師に確認してほしい。
カロテン類も豊富な、緑の夏野菜
ようさいには100gあたりα-カロテンが78µg含まれる。α-カロテンは体内でビタミンAに変わるプロビタミンAの一種だが、β-カロテンに比べてビタミンAへの変換効率は低いとされる点は知っておきたい。一方、β-カロテンは100gあたり4300µgと豊富で、緑黄色野菜らしい色合いを支える主役格の成分だ。この2種のカロテンがようさいの栄養的な個性を形づくっている。エネルギーは100gあたり17kcalと軽やかで、食物繊維も3.1g含まれる。暑さで食欲が落ちる季節に、体に必要なものをさらりと補える青菜だ。
今の旬を、シンプルに味わう
ようさいの旬の食べ方は、何といってもにんにく炒めが王道だ。強火でさっと炒めると茎のシャキシャキ感が活き、葉はほどよくしんなりする。塩とごま油だけで仕上げれば、素材の青々とした風味が前に出る。
和え物にするなら、さっとゆでても歯ごたえはしっかり残るので、ごまだれや辛みそで和えると箸が進む。沖縄では豚肉と合わせる炒め物が定番で、脂のコクがようさいの青みを引き立てる。
見た目は涼しげで軽い青菜だが、ビタミンKやカロテン類を静かに蓄えている。暑い日のさっと一品に、にんにく炒め一皿で旬の味と栄養をまとめて補える——それが、ようさいをこの季節に選ぶ理由だ。
数値の出典:日本食品標準成分表(八訂)/日本人の食事摂取基準
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。