ダイエットや肥満治療にまつわる話題の中で、「衝動的に食べてしまう性格」や「夜中に食べたくなってしまう習慣」が、体重を減らす妨げになるのではないかと感じたことがある人は少なくないかもしれません。こうした心理的な特性や生活習慣は、実際に肥満治療の成果とどのように関係しているのでしょうか。今回紹介するのは、肥満外来を受診した患者を対象に、「衝動性」と「夜食症候群」という2つの要素が、治療による体重や体格の変化にどのような影響を及ぼすのかを調べた研究です。
研究でわかったこと
研究でわかったこと
この研究では、トルコの保健科学大学アンタルヤ研修・研究病院の肥満センターを初めて受診し、条件を満たした患者50名が対象となりました。参加者は3〜6か月間追跡され、治療開始時には対面での聞き取り調査が行われました。衝動性を測る「バラット衝動性尺度(BIS-11)」と、夜間の食習慣を評価する「夜食質問票(NEQ)」に加え、社会人口統計学的な情報を得るための追加の質問も実施されています。
対象者の内訳は女性45名(90%)、男性5名(10%)で、平均年齢は53.6歳でした。治療の結果、体重・体格指数(BMI)・ウエスト周囲径は、いずれも統計的に有意に減少したと報告されています。血液検査の値については、総コレステロール、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、中性脂肪が減少する傾向、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が増加する傾向がみられましたが、これらの変化はいずれも統計的に有意なものではなかったとされています。
心理面の分析では、衝動性の下位項目である「注意的衝動性」のスコアと、夜食質問票のスコアとの間に、統計的に有意な中程度の正の相関が認められました。つまり、注意が散漫になりやすい傾向が強い人ほど、夜食の傾向も強い、という関連が見られたということです。一方で、夜食習慣や衝動性(およびその下位項目)そのものが、体重減少・BMIの変化・ウエスト周囲径の変化といった治療成果に有意な影響を与えるという関連は見られなかったと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
著者らは、夜食や衝動性が治療による体格の変化に影響を及ぼさなかった背景として、治療中に心理士によるサポートが伴っており、患者の気づきや行動が改善された可能性を挙げています。そのうえで、肥満の管理には個別化された治療計画が必要であり、衝動的な傾向や多様な食習慣を持つ人に対しては、そうした特性を考慮したうえで、多職種による包括的なアプローチを取り入れた治療計画を立てることが重要だと述べられています。
なお、この研究は50名という比較的小規模な集団を対象としたものであり、女性が9割を占めるなど対象者の偏りもみられます。今回紹介した内容は一つの研究で得られた知見であり、結論が確定したものではない点に留意してください。衝動性や夜食習慣と肥満治療の関係については、今後さらに研究が積み重ねられていくことが期待されます。
まとめ
今回紹介した研究では、肥満外来を受診した患者において、注意的衝動性と夜食傾向との間に中程度の関連が見られた一方、衝動性や夜食習慣そのものは、体重・BMI・ウエスト周囲径といった治療成果には有意な影響を与えなかったと報告されています。著者らは、心理士のサポートを含む個別化・多職種的な治療の重要性を示唆しています。ダイエットにおける「性格」や「生活習慣」の影響について考えるうえで、示唆に富む研究といえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:肥満患者における衝動性と夜食症候群が治療転帰に及ぼす影響(プシキアトリア・ダヌビナ・2026年08月)