6月も半ばを過ぎると、台所に並ぶしょうがが少しずつ若々しくなってくる。高知県が全国出荷量のトップを走り、この時期は新しょうがが市場に出回り始める季節だ。1かけをすりおろして薬味に、千切りにして添え物に——そんな使い方が当たり前になるほど、しょうがは「主役より少し後ろ」にいる食材だった。

ところが、しょうがの成分表(皮なし・生)を開くと、目を引く数字が並んでいる。マンガンが100gあたり5.01mgという、野菜類の中でもとりわけ高い値だ。

薬味の陰に隠れた、骨を支えるミネラル

マンガンは、体内に12〜20mgほど存在する微量ミネラルで、内臓など各組織にまんべんなく分布している。骨の形成に深く関わるのは、マンガンが骨基質の合成に必要な酵素——糖鎖の転移を担うグリコシルトランスフェラーゼ系や、活性酸素を分解するマンガンSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)——の構成成分として機能するためだ。エネルギー代謝に必要な酵素の補因子としても働き、骨をつくる仕組みと体がエネルギーを使う仕組み、この両方に関わる微量ミネラルといえる。穀類・野菜・豆類など植物性食品に含まれ、土壌中のマンガンを植物が吸収するため、産地の土壌環境が含有量に影響するとされる。

しょうがの5.01mgという値は、ふだん口にする野菜の中でも含有密度が高い。ただし1かけ約10gで使うのが現実なので、1回に摂れる量は約0.5mgになる。毎日の薬味として続けることで、少しずつ積み重なっていく——そういう性質のミネラルだ。日本人の食事摂取基準でもマンガンには耐容上限量が設定されているが、食事から過剰になることはほとんどないとされており、通常の食べ方で心配する必要はない。

香りは皮のすぐ下にある

成分の話をもう一つ。しょうがにはリンゴ酸とクエン酸がそれぞれ0.1gずつ含まれている。リンゴ酸はまろやかな酸味に、クエン酸はさわやかな酸味に寄与するとされる有機酸で、どちらもエネルギー代謝の経路に関わる成分だ。クエン酸は鉄やカルシウムを含む食材と組み合わせてよく使われており、カルシウムを多く含む豆腐などと同じ皿に載ることも多い。

ここで一つ、使い方のヒントを。「皮のすぐ下の香りが強い」という性質があるため、皮をむかずそのまま使うのが香りを最大に引き出すコツだ。生しょうがの主な辛み成分はジンゲロールで、加熱や乾燥によってショウガオールへと変化する。生で使えば爽やかな辛みに、加熱すれば深みのある香りに変わるのはこのためだ。

今の季節に合わせた使い方と、上手な保存

6月のしょうがは走りの新しょうがで、皮が薄くみずみずしく、辛みが穏やかで生のまま食べやすい。薄切りにして甘酢に漬ければ、夏の食卓に似合う箸休めになる。冷ややっこに千切りをたっぷり乗せるだけで、豆腐のカルシウムとしょうがのクエン酸が同じ皿に揃う。冷たいそうめんの薬味に加えれば、夏らしい清涼感が増す。

まとめて買ったときはペーパーに包んでポリ袋に入れ、冷蔵なら約2週間、冷凍なら約1カ月保つ。薄切りにして2日ほど天日干しにしたり、砂糖漬けにして保存する方法もある。少しずつ使うものだからこそ、保存の手間をかければ無駄なく使い切れる。

1かけを、もう少し丁寧に

薬味の端に添えていた1かけのしょうがに、骨の形成やエネルギー代謝に関わるマンガンが、野菜の中でも特に含有密度が高い形で含まれている。量は少なくても毎日の食卓に欠かせない存在——それがしょうがの栄養的な顔でもある。走りの新しょうがが並ぶこの季節に、皮ごとすりおろしてみると、香りと一緒に少しだけ違う見方ができるかもしれない。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準(マンガンの耐容上限量)・食品安全委員会(参考)

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。