子どもの骨が最も密度を高めていく時期は、思春期前後の数年間に集中している。この「骨の貯金期」に毎日の食卓でカルシウムをどれだけ意識して届けられるか——それが将来の骨の丈夫さを左右するとされる。成分表のデータを眺めると、なじみ深い食品の中に驚くほど個性豊かな「カルシウム源」が並んでいることに気づく。牛乳だけでなく、いりごま・しらす干し・ひじき・豆腐など、それぞれに異なる特徴を持つ食品を組み合わせることで、食卓の選択肢は大きく広がる。
いり白ごまは小さな粒に1,200mgが凝縮
いりごまの可食部100gあたりのカルシウムは1,200mgで、日本人の食事摂取基準における女性30〜49歳の推奨量650mg/日の185%にあたる値だ。ただし、これは100gあたりの数字。いりごまは一度に100gも食べる食品ではなく、大さじ1杯(約6g)でカルシウムに換算すると約72mg程度となる。「少量ずつしか使わないのでは意味がないのでは」と感じるかもしれないが、毎食少量をコンスタントに振りかける習慣は、じわじわと積み上がる貢献源になる。塩分ゼロで食品本来のコクがある点も、子どもの食卓向きだ。
しらす干しはカルシウムとビタミンDが一緒に届く
しらす干し(半乾燥品)は、かたくちいわしや真いわしの稚魚を塩水でゆでて干したものだ。可食部100gあたりのカルシウムは520mgで、同推奨量の80%に相当する。日常の使い方である大さじ1〜2杯(約10〜15g)では、単純換算で約52〜78mgを摂れる計算になる。
骨の話でしらす干しが注目される理由は、カルシウムだけではない。ビタミンDが100gあたり61µg(目安量9µg/日の678%)と非常に豊富な点が大きい。ビタミンDはカルシウムが腸で吸収されるのを助ける働きがあるとされており、カルシウムとビタミンDを併せ持つ食品として実用的だ。なお、ビタミンDは脂溶性のため油脂と一緒にとると吸収率が高まるとされており、炒め物やドレッシングを使った料理に合わせると一層効率的に使えると考えられる。
ただし、しらす干し100gあたりの食塩相当量は6.6gと多い。大さじ1〜2杯(10〜15g)でも0.66〜0.99g程度の塩分になるため、子どもが食べる際は量を意識しながら活用したい。リンも100gあたり860mgと豊富だが、リンを過剰にとるとカルシウムの吸収が妨げられるとされる点も念頭に置いておくとよい。
ひじきは1人分でもカルシウムがしっかり入る
ほしひじき(ステンレス釜・乾)は乾燥状態100gあたりカルシウム1,000mgと高い値を示すが、乾物なので1人分は約10gが目安だ。100gあたりの数値であることを踏まえれば、1人分(約10g)からの単純換算で約100mg程度のカルシウムを摂れる計算になる。副菜一品でこれだけ届けられるのは、小食な子どもにとってもハードルが低い。
一方で注意が必要なのはヨウ素だ。乾燥ひじきは100gあたり45,000µgと非常に多く、これは日本人の食事摂取基準における耐容上限量(3,000µg/日)の約15倍にあたる。推奨量(140µg/日)に対する割合を示すと32,143%という値になるが、これは推奨量に対する比率であってUL基準ではない。1人分(約10g)に換算すると約4,500µgとなり、これ自体は耐容上限量を超える水準のため、子どもへの提供は少量にとどめ頻繁に多量を食べさせないよう心がけたい。ひじきの豊かな食物繊維(乾燥100gあたり51.8g)は子どもの腸にもうれしい成分だが、量の加減が肝心な食材だ。
木綿豆腐と牛乳は「吸収率」で選ぶ
カルシウムの話で外せないのが普通牛乳だ。牛乳のカルシウム吸収率は約40%とされ、コップ1杯(約210g)を子どもが飲む場面は多い。牛乳のカルシウム吸収率が高いとされる主な要因として、カゼインホスホペプチド(CPP)や乳糖などが広く知られている。生乳100%で無脂乳固形分8.0%以上・乳脂肪分3.0%以上という品質が「普通牛乳」の基準だ。
一方、木綿豆腐(凝固剤:硫酸カルシウム)は豆乳を固めて圧搾し水分を抜いて作るため、比較的たんぱく質を摂りやすい食品だ。木綿豆腐のカルシウム吸収率は約30〜40%とされており、牛乳と同水準の吸収効率が期待できると考えられている。消化吸収しやすいたんぱく源ともされており、成長期の子どもが毎日食べやすい。なお、小魚のカルシウム吸収率は約20%とされており、食品ごとの吸収率に差がある点は頭に入れておきたい情報だ。
組み合わせが「届け方」を決める
カルシウムを多く含む食品を選ぶことと同じくらい大切なのが、組み合わせ方だ。ビタミンDと一緒にとるとカルシウムは吸収されやすくなるとされており、しらす干しのようにカルシウムとビタミンDを併せ持つ食品や、ビタミンDを含む食品をカルシウム豊富な食品と合わせる工夫が効果的だと考えられている。
毎日の食卓に置き換えると、たとえばご飯にいりごまをひとふり、汁物にひじきの副菜を少量添え、食後に牛乳一杯。こうした積み重ねが、特定の食品に頼りすぎない安定したカルシウム摂取につながる。しらす干しは塩分に気をつけながら卵かけご飯や冷奴に乗せると子どもにも食べやすい。木綿豆腐は麻婆豆腐や炒め物に入れると、たんぱく質ともども毎日の献立に自然に組み込める。
「これだけ食べれば大丈夫」という一品はなく、多様な食品を少しずつ組み合わせることが骨を育てる食卓の基本になる。今日の夕食から、小さな一工夫を試してみてほしい。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・文部科学省 食品成分データベース・消費者庁・食品安全委員会