冷蔵庫から出したばかりのびわを口に入れると、ひんやりした果汁とともに、ふわりと広がる甘さ。これは気のせいでも、夏の暑さに感覚が鋭くなったせいでもない。びわに含まれる果糖には、温度が低いほど甘みが強くなるという性質がある。果糖を比較的多く含むびわは、冷やすと果糖由来の甘みが引き立ちやすい。6月中旬、旬の盛りを迎えたびわを冷蔵庫に入れておく——それだけで、食卓のデザートが一段おいしくなる。
今が盛り、短い旬を味わう
びわの旬は5月下旬から6月いっぱいと短い。「茂木」「田中」といった品種名があるように、産地や品種によって風味に個性がある。スーパーに並ぶ姿は小ぶりで地味に見えるが、こんなに短い期間しか出回らない果物は多くない。6月に見かけたら、迷わず手に取りたい旬の果実だ。
1個の重さは約70g。剥いてそのまま食べられる手ごろな大きさで、食後の一口デザートとして自然と収まりがいい。
甘さの中心にある果糖
びわの甘さの中心にあるのが果糖だ。可食部100gあたり、果糖が3.3g、ぶどう糖が2.7g含まれる(いずれも計算値)。果糖は果実に多く含まれる単糖の一つで、冒頭で触れたとおり温度が低いほど甘みを強く感じやすい性質がある。冷やしたびわの甘さがいっそう引き立つのは、この果糖の比率の高さによるところが大きい。
びわ1個(約70g)の場合、廃棄率30%をもとに可食部はおよそ49g、そこに含まれる果糖は約1.6g(計算値)。旬の時期に楽しむ一口の甘さとして、肩の力を抜いて味わいたい。
黄色い果肉が持つもの
びわのオレンジがかった黄色い果肉には、β-クリプトキサンチンが100gあたり600µg含まれる。聞き慣れない名前だが、かんきつ類や柿、とうもろこし、かぼちゃなどにも含まれる黄色・オレンジ色の色素成分で、体内でビタミンAに変わる(プロビタミンA)という性質を持つ。ビタミンAは皮膚や粘膜の維持に関わる栄養素だ。
ちなみにビタミンAには日本人の食事摂取基準で耐容上限量が設定されている。ただしβ-クリプトキサンチンのようなプロビタミンAカロテノイドは、体内での変換効率が限られるため、通常の食事量での過剰摂取の心配は少ないとされる。びわ1個で得られる量は、旬の彩りとして素直に楽しんでよい範囲だ。
冷やして食べる、6月のひと口
シンプルに冷やしてそのままが、びわの甘さを最も引き出す食べ方だ。皮をむいてヨーグルトに並べれば、さっぱりした夏の朝食になる。コンポートにして白ワインや紅茶と合わせるのも、この時期ならではの楽しみ方だ。
薬膳・東洋医学の世界では、びわは「涼」の性質を持ち、肺をうるおす果実として位置づけられてきた。梅雨のじめじめした空気の中、冷やしたびわを一口食べるとき、その表現がなんとなく腑に落ちる気がする。6月の短い旬の間だけ許された、ひんやりとした甘さを、今年も冷蔵庫ごしに受け取りたいものだ。
栄養成分値は日本食品標準成分表(八訂)に基づく。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。