日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:World Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
企業を評価する仕組みの変化を調べる
研究チームは、食品・飲料企業の栄養改善への取り組みを評価する指標が、どのように変化し、各国の事情に合わせて調整されてきたかを調べました。目的は、国別の指標がまだない国で、食文化や制度に合った評価の仕組みを考えるための材料を整理することです。
対象は、非政府組織のAccess to Nutrition Initiative(ATNi)が公表する、世界の多国籍企業向けの「Global Index」と、米国・インドの国内市場向けの「Spotlight Index」です。著者らは、企業の栄養戦略、製品、価格や入手しやすさ、広告、従業員への支援、表示、政策関係者との関わりという七つの領域を基本とする報告書を比較しました。
分析に用いたのは、2013~2024年の世界版5版、米国版2版、インド版3版の公開資料です。新たな調査データは集めず、評価項目、総合点に占める各領域の比重、製品の栄養評価に使う基準、点数の計算方法の変化を整理しました。
製品の栄養面を重視しつつ、国ごとに調整
主要な結果は、製品そのものの栄養面を評価する比重が増したことです。世界版では、製品領域が総合評価に占める割合は2013年の25%から2024年の45%へ上昇しました。インド版でも2023年には45%となりました。研究チームは、この変化を、企業の製品群を栄養面から評価する方向への重点の移行と捉えています。
製品の評価には、含まれる栄養素などを基に食品の栄養面の質を判定する「栄養プロファイルモデル」が使われます。著者らによると、2016年のインド版以降、主なモデルとしてHealth Star Ratingが採用され、2024年の世界版では別のモデルによる補足評価も加わりました。
一方、国別版は世界版をそのまま使うのではなく、国内の栄養課題や法制度に合わせて項目を調整していました。米国版では肥満や、十分な食料を安定して確保できない問題を扱い、企業のロビー活動の透明性も詳しく評価していました。インド版では、栄養不足や微量栄養素の不足と、過体重・肥満が併存する課題を踏まえ、栄養素を食品に加える取り組みなどを評価していました。世界版では2024年に政策関係者などとの関わりを評価する領域が削除されており、指標の変化は一律ではありませんでした。
評価の見える化と、地域に合った仕組み
著者らは、これらの指標には、企業の栄養への取り組みを投資家や政策担当者、市民に見える形にする意義があるとしています。ただし、企業の自主的な参加や自己申告の情報に依存するため、開示情報の十分さには課題が残ります。また、指標の点数向上が住民の栄養状態の改善につながるかどうかは、十分に明らかになっていません。
論文が示すのは、製品の栄養評価を重視するだけでなく、その国の食べ方や制度に合った評価の設計が重要だということです。著者らは、国別の仕組みを地域の機関とともに作り、規制による監督や独立した確認で補うことが、企業の責任をより広く捉えるうえで重要だと結論づけています。
著者:Ayako Sezaki(National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition)、Chika Okada(National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition)、Mieko Nakamura(National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition)、Hidemi Takimoto(National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ayako Sezaki, Chika Okada, Mieko Nakamura, et al. Access to Nutrition Initiative Global Index and Spotlight Index comparisons: promoting nation-led frameworks for nutrition accountability. World Nutrition 2026-09-30. DOI: 10.26596/wn.20261734-18. 原著ライセンス:CC BY.