私たちのお腹の中には、無数の腸内細菌が暮らしています。近年の研究では、この腸内細菌の集まり(腸内マイクロバイオーム)が、腸の中だけでなく全身のさまざまな臓器と"会話"している可能性が注目されています。今回は、食事と腸内環境の関わりに迫った国際的なレビュー研究をもとに、その奥深い世界をのぞいてみましょう。

研究でわかってきたこと

この研究では、腸内細菌が体の中心的な"臓器"のように働き、ホルモンや免疫、代謝、神経などの経路を通じて、脳・肝臓・肺・心臓・口腔・皮膚など、他の臓器とお互いに影響し合っているという考え方(「腸-臓器軸」)が紹介されています。

こうした臓器間の"やりとり"は、短鎖脂肪酸(食物繊維が腸内細菌に分解されてできる物質)や、さまざまな微生物由来の代謝産物、神経伝達物質、サイトカイン、ホルモンといった仲介役を介して行われると報告されています。そのため、腸内細菌のバランスの乱れは腸の問題にとどまらず、全身のさまざまな状態と関連しうることが示唆されています。

さらに研究では、こうした相互作用が環境や生活習慣、とりわけ"食事"の影響を強く受けることが指摘されています。プロバイオティクスやプレバイオティクス、食物繊維、オメガ3系脂肪酸、ビタミンなどがバランスの維持に関わる一方、加工肉や赤身肉、高脂肪・高糖質・高GI食品、過剰な塩分の摂取はバランスを乱す要因になりうると述べられています。

腸内環境を支える食事要素

今回の研究で鍵となるのは、腸内細菌のエサとなる食物繊維や、発酵食品などの食事要素です。食物繊維は野菜・きのこ・海藻・豆類・全粒穀物などに多く含まれ、腸内細菌に分解されることで短鎖脂肪酸のもとになると報告されています。また、ヨーグルト納豆味噌、漬物などの発酵食品も、研究で腸内環境との関わりが注目される食事要素として挙げられています。

個別の食品に含まれる栄養成分の具体的な数値を知りたい場合は、本サイトの食品群一覧から、関心のある食品の詳細ページをご覧ください。

日々の食事に取り入れるヒント

研究で報告されている知見をふまえると、毎日の食事で意識したいポイントは次のようなものです。

  • 野菜・きのこ・海藻・豆類・全粒穀物など、食物繊維を含む食品を一日のなかでこまめに取り入れる
  • ヨーグルト納豆味噌、漬物などの発酵食品を食卓に加えてみる
  • 加工肉や高脂肪・高糖質の食品、塩分の多い食品にかたよらないよう、全体のバランスを見直す
  • 青魚などに含まれるオメガ3系脂肪酸を含む食品も、献立の一部として意識する

栄養素の目安量を知りたいときは、最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)を参考にするとよいでしょう。特定の食品の成分が気になる場合は、本サイトの食品群一覧から実測値を確認できます。

まとめ

腸内細菌と全身の臓器が"会話"し合うという視点は、私たちの食生活を見つめ直すきっかけになります。特定の食品に頼るのではなく、多様な食材をバランスよく組み合わせることが、日々の食生活を見直すヒントになりそうです。

参考文献:Microbiome crosstalk and nutrition: the interplay between gut microbiota-organ axis and dietary factors(食品研究国際誌、オンライン先行公開)