6月の中旬に差しかかるこの時期、青果売り場で細く白い肌をした束が並ぶようになる。新ごぼうだ。晩秋から冬にかけて出回る秋ごぼうと同じ根菜でありながら、春から初夏にかけて若いうちに掘り上げられたごぼう 根 生は、皮が薄く香りが穏やかで、やわらかい。まさに今が旬の走りから盛りへと移る時季にあたる。
新ごぼうならではの、軽くてやわらかな個性
秋ごぼうが大地にどっしり根を張ったような滋味を持つとすれば、新ごぼうはもう少し軽やか。皮ごとさっとこそげるだけで下処理が済み、アクも比較的おとなしい。束から一本取り出してぽきりと折ると、みずみずしい断面と土の香りがふわりと立つ。あの香りごと料理に生かせるのが、今の時季の特権だ。
なお、成分表に「新ごぼう」の個別の収録がないため、ここでは一般的な「ごぼう 根 生」の数値で見ていく。
食物繊維5.7g——根菜がこれだけ持つ理由
100gあたりのエネルギーは58kcalと低め。主要な成分として目を引くのが、食物繊維の総量5.7gという数字だ。日本人の食事摂取基準が示す女性(30〜49歳)の1日の目標量18gに対して、100gで32%に相当する。きんぴらにする場合、1人分の目安は約40g(成分表の目安量より)なので、一皿でおよそ2.3g。食物繊維は多くの人が不足しがちな栄養素だから、こうした一品が毎日の食卓に並ぶことには、積み重ねとしての意味がある。
ごぼうの食物繊維がおもしろいのは、その内訳にある。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方をまとめて含んでいる点が特徴で、水溶性は100gあたり2.3g。水溶性食物繊維は水に溶けてとろみをつくり、糖質の吸収をゆるやかにしたり、コレステロールの吸収を抑えて排出を促したりする働きがあると報告されている。こんぶやわかめ、こんにゃくなど「ぬるぬる・ねばねば」した食品に多いイメージがある水溶性食物繊維を、ごぼうのようなかたい根菜でも摂れるのは、少し意外な発見ではないだろうか。加えてごぼうにはオリゴ糖も多く含まれることが知られており、腸内環境への働きかけが期待される素材として注目されている。
今だから試したい、新ごぼうの食べ方
定番のきんぴらや豚汁ももちろんおいしいが、新ごぼうの時季には、もう少し素材を前に出す食べ方が映える。ピーラーで薄くリボン状にむいて、さっと塩もみしてから鰹節と和えるだけの「ごぼうサラダ」は、若いごぼうのやわらかさがあってこそ成り立つ一品だ。塩とごま油でシンプルに炒め、仕上げに白ごまをちらすだけでも、香りが立ってひと皿になる。
また、出汁と薄口醤油でさっと炊いたごぼうを、炊き込みご飯に加えると、ほんのり土の香りが茶碗に広がる。新ごぼうが出回るこの時季に一度は炊いておきたい、季節の一椀だ。
旬を味方にする、小さな積み重ね
ごぼうは季節による栄養成分の大きな変動はないとされるが、今の新ごぼうにはやわらかさと香りという、数値に表れない旬の価値がある。100gで食物繊維5.7g、低エネルギー。あれこれ考えなくても、旬のものを旬のうちに、いつもの食卓に一品加える——それが一番シンプルで続く食べ方だと、新ごぼうを束で手に取るたびに思う。
数値の出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」/摂取基準の割合は女性30〜49歳を基準に算出
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。