6月に入り、梅雨入りの知らせとともに食卓にのぼる機会が増えるのが、アジです。まるあじにしまあじはちょうど今が旬の盛りを迎える時季。複数の種類が流通するアジは、青魚らしいうまみと手ごろな価格で、毎日の献立に取り入れやすい食材です。今回は腸内環境・発酵食品との相性という角度から、アジの魅力を数値とともに掘り下げてみましょう。

この時期に注目したい栄養素

アジを語るうえで欠かせないのが、たんぱく質n-3系多価不飽和脂肪酸です。まるあじ(生)は可食部100gあたりたんぱく質22.1g。焼き調理にすると水分が抜けて濃縮され、まるあじ(焼き)では28.7gに増えます。アミノ酸組成を見ると、グルタミン酸がまるあじ(生)で3,000mg(100gあたり)と高く、焼いたまるあじ(焼き)では3,900mgまで上がります。このグルタミン酸のうまみが、発酵調味料との相乗効果を生む鍵になります。

脂質面では、まるあじ(生)のn-3系多価不飽和脂肪酸は1.33g(100gあたり)。にしまあじ(生)は1.99g、にしまあじ(焼き)では2.22gと、焼くことでやや濃縮されています。脂ののった個体ほどn-3系脂肪酸も多くなる傾向が、この数字からも見てとれます。

ビタミンD も注目したい成分です。まるあじ(生)は100gあたり19.0µgという実測値で、まるあじ(焼き)でも15.0µgを保ちます。最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)では成人のビタミンD目安量は8.5µg/日とされており、まるあじ(生)1切れ(可食部100g)でその目安量を大きく上回る計算になります。

ただし、アジ自体の食物繊維総量はゼロ(成分表では(0)g)。腸内環境を意識した食卓を整えるには、アジを主役にしつつ、食物繊維・発酵食品を「脇役」として意識的に組み合わせることがポイントです。

おすすめ食品とその数値データ

アジ類の中で比べると、それぞれ個性があります。

  • まるあじ(生):エネルギー133kcal、たんぱく質22.1g、脂質5.6g(100gあたり)。カリウム410mg、リン260mgとミネラルも豊富で、淡白ながらうまみが強いのが特徴です。ビタミンD 19.0µgという数字は、アジ類の中でも際立ちます。
  • まるあじ(焼き):焼くことで水分が約9g減少し、たんぱく質28.7g、カルシウム94mg(生の53mgから約1.8倍)へと濃縮されます。カリウムも540mgに増加。骨ごと食べられる場合はカルシウム摂取のうえでも有利です。
  • にしまあじ(生):脂質9.1g、n-3系多価不飽和脂肪酸1.99gとまるあじより脂ののりが強く、エネルギーも156kcalとやや高め。ナイアシンは4.9mg(まるあじの6.1mgより低め)ですが、セレン47µgというミネラルが確認できます。
  • にしまあじ(焼き):たんぱく質24.7g、n-3系多価不飽和脂肪酸2.22gで、焼き調理で脂肪酸がさらに濃縮されます。マグネシウムも44mgと、生の37mgから増加しています。
  • むろあじ(生):旬は秋〜冬(10〜2月頃)とされますが、干物・開き干しなどの加工品として一年を通じて広く流通しています。ナイアシンが15.0mg(100gあたり)と4種の中でも群を抜いています。ビタミンB2は0.32mg、ビタミンB12は13.0µgと高い値が確認できます。

各食品のさらに詳しい成分値は、それぞれの詳細ページでご確認いただけます。

毎日の食事への取り入れ方

アジは食物繊維をほぼ持たない食材です。腸内環境を意識するなら、「アジ+食物繊維食材+発酵食品」の三点セットを献立の軸にするのがおすすめです。

みそ漬け焼きにするのは手軽でおすすめの方法です。まるあじ(焼き)のグルタミン酸3,900mgのうまみに、発酵食品であるみその複合的な味が重なり、少ない調味料でも満足感のある一皿になります。なお、みそ漬け焼きのように加熱すると乳酸菌や酵母は変化しますが、発酵の過程で生まれたアミノ酸や有機酸はそのまま残り、みそならではの深いコクと風味を支えています。

アジの竜田揚げ+根菜の副菜という組み合わせも優秀です。ごぼうれんこんなどの根菜は不溶性食物繊維を多く含み(出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂))、不溶性食物繊維は腸内でかさを増やす働きをもつ成分として栄養学上注目されています。まるあじ(生)のたんぱく質22.1gに加え、根菜の食物繊維で食事全体の食物繊維量を補う形です。

アジの南蛮漬け+ぬか漬けも腸活の観点から理にかなった組み合わせです。南蛮漬けの酢(酢酸)は食欲が落ちがちな夏の入り口にもさっぱりと食べやすく、にしまあじ(生)の豊かな脂をさっぱりまとめてくれます。添えるぬか漬けは植物性乳酸菌を含む発酵食品であり、食物繊維とともに腸内環境を意識した一皿を構成します。

また、むろあじ(生)は干物や開き干しへの加工品としてよく流通しています。干し加工品は水分が飛ぶ分、うまみ成分や各ミネラルが一層凝縮されます。炊き込みご飯の出汁として使う方法も、うまみを余すことなく活用できる食べ方のひとつです。

まとめ

梅雨の蒸し暑さで食欲が落ちやすい6月だからこそ、うまみが強く調理しやすいアジを積極的に食卓に取り入れてみましょう。食物繊維を含む野菜・根菜や発酵食品と組み合わせることで、アジ単体では補えない腸への働きかけを食事全体で組み立てられます。各品種の成分値の違いを楽しみながら、選び方・食べ方の幅を広げてみてください。

※本記事は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」および同アミノ酸成分表のデータ等をもとに作成しました。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。