著者の所属・活動拠点の国は、スロバキアです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
イチゴは水分が多く皮も傷みやすいため、収穫後に長く保存しにくい果物です。そのため、季節を問わず流通させたり加工に使ったりする場合には、冷凍イチゴが広く利用されています。冷凍品は食べる前や加工する前に必ず解凍が必要で、その方法は最終的な品質を左右する重要な工程です。
著者らによると、これまでの研究は産業向けの新しい解凍技術に注目したものが中心で、家庭で一般に行われている解凍方法が色や味、栄養成分にどう影響するかは十分に調べられていませんでした。そこで研究チームは、身近な解凍方法の違いによって、解凍後のイチゴの品質にどのような差が生じるのかを比較・分析しました。
何を調べたか
研究チームは、欧州連合(EU)内で栽培され、原産国の異なる冷凍イチゴを7つの小売チェーンから購入し、マイナス18℃で保管しました。傷みや損傷のあるものを除き、大きさのそろった実を選んで分析に使いました。
比較した解凍方法は5つです。冷蔵庫(4℃で24時間)、室温(約24℃で2時間)、電子レンジ(400ワットで5分)、そしてポリエチレンの袋に入れたまま20℃または40℃の湯水に120分浸す方法です。湯水を使う方法では袋に入れることで、果実が水に直接触れて成分が溶け出すのを防いでいます。7チェーン×5方法×3回の繰り返しで、計105回の分析が行われました。
調べた項目は、糖度や酸性度(pH)、微生物が利用できる水分の目安となる「水分活性」などの基本的な性質に加え、ポリフェノール、フラボノイド、フェノール酸、アントシアニン(イチゴの赤い色のもとになる色素)といった植物由来の成分の量、そして試薬を用いて測る抗酸化活性です。さらに、色を機械で数値化して測定し、訓練を受けた12人の評価者が見た目や色、香り、味、食感などを評価する官能検査も行いました。
主な結果
まず、購入先の小売チェーンによってイチゴ自体の性質に大きな違いがありました。室温で解凍した試料で測定した糖度は、チェーンによって6.70から11.20(ブリックス値)まで幅がありました。糖度が最も低かったチェーンのイチゴには、ところどころ黄色や緑色の部分があり、未熟な様子がみられたと報告されています。一方、糖度が最も高かったチェーンのイチゴは濃い赤色でした。水分活性はどの試料もおよそ0.90で、論文はこれを微生物が増えやすい環境にあたる値としています。
ポリフェノールなどの成分量や抗酸化活性には、小売チェーンの違いと解凍方法の違いの両方による統計的に意味のある差が認められました。ただし、どの解凍方法が最も良いかは成分によって異なり、論文ではアントシアニンについて、一律にどの方法が最適とは言えないとしています。アントシアニンについて論文が挙げているのは、7チェーンのうち5チェーンで最高値が湯水での解凍で得られたことで、その内訳は40℃が3チェーン、20℃が2チェーンでした。抗酸化活性は、どの試料でも高い水準を示しました。
著者らは全体の結論として、室温での解凍は時間のかかる方法ではあるものの、他の方法と比べてイチゴの元の品質を最もよく保ったと報告しています。同時に、解凍方法によって色、官能的な特性、ポリフェノール類、抗酸化活性への影響はそれぞれ異なっていたものの、評価した解凍方法はいずれも実用可能なものだったとしています。
研究が示すこと
この研究は、同じ冷凍イチゴでも購入先によって性質に差があり、さらに解凍方法の選び方で解凍後の成分や品質が変わりうることを示しました。著者らは、この結果が、加工後の用途に応じてイチゴの加工現場で適切な解凍方法を選ぶための手がかりになりうると述べています。
原著論文の著者・所属:Zuzana Megyesy Eftimová(Department of Food Hygiene, Technology and Safety, University of Veterinary Medicine and Pharmacy in Košice, Komenského 73, 041 81 Košice, Slovakia)、Jana Zahumenská(Department of Food Hygiene, Technology and Safety, University of Veterinary Medicine and Pharmacy in Košice, Komenského 73, 041 81 Košice, Slovakia)、Boris Semjon(Department of Food Hygiene, Technology and Safety, University of Veterinary Medicine and Pharmacy in Košice, Komenského 73, 041 81 Košice, Slovakia)、Nikola Hudáková(Department of Morphological Disciplines, University of Veterinary Medicine and Pharmacy in Košice, Komenského 73, 041 81 Košice, Slovakia)、Eva Dudriková(Department of Food Hygiene, Technology and Safety, University of Veterinary Medicine and Pharmacy in Košice, Komenského 73, 041 81 Košice, Slovakia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zuzana Megyesy Eftimová, Jana Zahumenská, Boris Semjon, et al. The Influence of Thawing Method on Bioactive Substances, Color, and Sensory Parameters in Frozen Strawberries from Retail Chains. Foods 2026-09-23. DOI: 10.3390/foods15193386. 原著ライセンス:CC BY.